このページの要点
- 補助金を使う場合と使わない場合で、契約の効力の始まり方と支払条件を分け、「補助金を利用する場合の特約」を足す。
- 交付決定の前の発注は対象外とされる補助金が多い。申請には見積書だけを出し、契約は交付決定の後に結ぶ型が基本(契約の効力を停止条件にかける型は、補助金ごとに可否を確認する)。
- 支払の期限は日数で決め、補助金の入金の有無に左右させない。実績報告に要る見積書・契約書・納品書・請求書・支払の記録は、日付・宛名・品目・金額をそろえる。
- 不採択・減額・取消し・返還のときの扱いを決める。申請書類の作成を報酬を得て請け負うことは行政書士法19条1項との関係が問題になり得るため、制作契約に含めない整理を考える。
補助金を使う案件と使わない案件で、契約の流れを分ける
通常の制作契約は、見積り、発注、制作、納品、検収、支払と進みます。補助金を使う案件は、その前後に、補助金の手続が重なります。次の流れは一般的な一例で、補助金によって順序や名称が違います。公募要領で確認した流れを、契約書の日付の順序に当てはめます。
補助金を使う制作案件の流れの一例(補助金によって異なります)
見積書の作成
申請に添える見積書。発注ではないことと、有効期限を書く
交付の申請
補助を受ける側(発注者)が申請する。結果が出るまで制作は始めない
交付の決定
決定の内容(補助の対象になる経費、上限、条件)を確認する
契約・発注
交付決定の後に、契約書または発注書を取り交わす
制作・納品・検収
納品日と検収日が、後の報告書類と食い違わないようにする
請求・支払
請求書を発行し、期日までに振込で支払う
実績報告
見積書・契約書・納品書・請求書・支払の記録をそろえて報告する
額の確定・入金
報告が審査され、補助の額が確定し、補助金が振り込まれる
契約書は、この流れのどこで効力が生じ、どこで支払う義務が生じるかを決める書類です。補助金を使わない案件と共通の本体の契約書に、「補助金を利用する場合の特約」を別紙(または条項)として足す作りにすると、案件ごとに契約書を作り直す手間が減ります。特約には、次の項目を入れます。
- 補助金を利用することと、補助金の名称・申請の予定時期(名称を書けない場合は「国または地方公共団体の補助金」)
- 交付決定の前に発注・着手しないこと(契約の効力を交付決定にかからせるか、契約自体を交付決定後に結ぶか)
- 支払の時期と方法(補助金の入金の有無にかかわらず支払うのか、補助金の入金後に支払うのか)
- 実績報告に必要な書類(見積書、契約書、納品書、請求書、支払の記録)を、受注者が発行・提供すること
- 補助が不採択・減額・取消しとなった場合の契約の扱い
- 制作の業務に、補助金の申請書類の作成を含まないこと(後述)
制作契約の基本的な条項(制作範囲、報酬、検収、著作権、サーバーとドメイン)は、ホームページ制作の契約書のページにまとめています。この項は、その上に載せる補助金の特約を扱います。
交付決定の前に発注すると、対象外になることがある
補助金の手続で最もよく問題になるのが、発注の時期です。多くの補助金は、交付が決まる前に発注・契約・着手した経費を、補助の対象外とします。例外として、事前に着手が認められる手続を設けているものもあります。いずれも、公募要領と交付の条件で確認する事項で、制作会社が自分で判断せず、発注者に確認を求めます。
契約書の作り方には、大きく二つあります。
| 型 | 契約を結ぶ時期 | 書き方 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 交付決定後に契約する | 交付決定の通知を受けた後 | 申請の時点では、見積書だけを出す。見積書には、「発注ではないこと」「契約は交付決定後に結ぶこと」「有効期限」を書く | 交付決定から契約までの間に、見積りの条件(単価、仕様)が変わらないよう、有効期限を長めに取る。条件を変える場合は、見積書を出し直す |
| 先に契約し、効力を交付決定にかからせる | 申請の前(または申請と並行) | 契約の効力を、交付決定を停止条件として生じさせる。停止条件付きの法律行為は、条件が成就した時から効力を生じる(民法127条1項) | 補助金によっては、この形自体が、交付決定前の契約として対象外とされるおそれがある。条件付きであっても契約を結ぶこと自体を認めない補助金もあるため、公募要領の確認が先 |
停止条件付きの契約にする場合の注意点を整理します。条件の成否が未定の間は、各当事者は、条件が成就した場合にその法律行為から生ずべき相手方の利益を害することができません(民法128条)。条件が成就した場合に受注者が得るはずの利益を害する行為は、条件の成否が未定の間はできません。何がこれに当たるかは、個別の事情で判断されます。また、条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意に条件の成就を妨げたときは、相手方は条件が成就したものとみなすことができます(同法130条1項)。
(補助金の利用に関する特約)
1委託者は、本件の費用の全部又は一部に、国又は地方公共団体の補助金(以下「本件補助金」という。)を利用する予定であることを、受注者に告げる。
2受注者が本件補助金の申請のために提出する見積書は、契約の申込みではない。本契約(または発注書)は、本件補助金の交付決定の通知を委託者が受けた後に締結する。
3委託者は、交付決定の内容(補助の対象となる経費、補助の額、条件)を、受注者に書面または電子的な方法で示す。受注者は、交付決定の日より前に、本件の制作に着手しない。
4本件補助金が交付されないとき、又は交付の額が予定を下回るときも、受注者は、本契約に基づく報酬の全額を請求することができる。ただし、本件補助金が交付されないことが明らかになった場合、委託者は、まだ着手していない業務の範囲で、本契約を解除することができる。この場合、受注者は、すでに終了した業務の割合に応じた報酬と実費を請求できる。
第2項は、見積書と契約を切り離す型の例です。第4項は、補助金が入らなくても報酬は発生する、という原則を書いたうえで、着手前に不交付が分かった場合の出口を用意しています。補助金の仕組みによって、書き方は調整が必要です。
補助金の入金は後になる。支払の時期と資金の負担を決める
補助金は、制作が終わり、費用を支払い、報告をした後に、補助の額が確定して入金される仕組みのものが多くあります。つまり、補助を受ける側(発注者)が、いったん制作費の全額を自己資金で支払う立場になります。制作会社にとっては、補助金の入金を待つ間、代金が入らないのか、という問題になります。
請負では、報酬は、特約がなければ、仕事の目的物の引渡しと同時に支払われます(民法633条)。補助金の入金を待つかどうかは特約で決まるので、契約書に、補助金の入金と報酬の支払の関係を書きます。ここで、書き方の違いが、大きな差になります。
書き方の例(一般的な例) 補助金の入金と報酬の支払
支払条件の書き方
「補助金の入金後」と書くと、補助金が交付されない場合や、入金が遅れる場合に、いつ支払うのかが決まりません。入金を支払の条件にする書き方は、支払義務そのものが生じるかどうかが争いになります。期限は日付または納品からの日数で決めます。
着手金・中間金
制作会社が制作費用を先に負担する期間を減らす書き方です。補助の対象になる経費の支払の方法・時期に制限がある補助金もあるので、公募要領で確認したうえで、着手金を設けます。
延滞したとき
発注者が個人事業者・法人など事業者であれば、利率の上限の規制(消費者契約法9条1項2号)は及びません。約定を置かないと、民事法定利率によります。
発注者が一定の規模の事業者(資本金の額や従業員の数が、法律の定める区分を超える事業者。同法2条8項)の場合は、中小受託取引適正化法の適用を受けるときがあります。情報成果物の作成の委託(同法2条3項)に当たる制作で、委託事業者の区分に当たる場合、代金の支払期日は、給付を受領した日から起算して60日の期間内で、かつ、できる限り短い期間内に定めなければなりません(同法3条1項)。定めなかったときは受領した日が、違反して定めたときは受領から60日を経過した日の前日が支払期日とみなされ(同条2項)、支払期日が過ぎても代金を支払わないことは禁止されています(同法5条1項2号)。補助金の入金が遅れていることは、支払遅延の理由になりません。小規模な発注者は、この区分に当たらないことが多いのですが、補助金を使う案件を受けるときは、発注者が区分に当たるかどうかを確認します。
発注者が補助金を満額受け取れない場合に、残りを分割で支払うことを求められる場面もあります。分割にするなら、分割の回数、期日、期限の利益の喪失(1回でも遅れたら残額を一括で払う)を書きます。報酬の支払を遅らせる代わりに、保守の契約や追加の発注を約束させる、といった抱き合わせの条件は、契約書に明記しないと、後で合意の内容が分からなくなります(保守の月額契約は保守・月額制作のページ)。
支払が止まったときの出口は、通常の制作契約と同じ考え方です。催告しても支払がない場合は、制作物の引渡しの留保や、利用許諾の停止を行えるようにしておきます(トラブルとキャンセルのページ)。補助金が絡む案件では、報告書類の発行を、支払が済むまで留保できるかどうかも決めておきます。ただし、補助の手続上、期限内に書類が必要な場合に、留保することで発注者に不利益が出ると、発注者との関係が悪化します。留保できる書類と、できない書類を分けておきます。
実績報告に使われる書類を、契約の段階で整える
補助を受けるには、事業が終わった後に、実績を報告し、経費の支払を証明する書類を出します。報告書類の主役は、制作会社が作る見積書、契約書(発注書)、納品書、請求書、支払を証明する記録です。これらが互いに矛盾すると、審査で経費として認められなかったり、確認のやり取りが長引いたりします。補助金ごとに必要な書類や様式は異なり、公募要領で確認するものですが、書類の間のつじつまは、どの補助金でも問われます。
| 書類 | 書く内容 | ほかの書類とそろえること |
|---|---|---|
| 見積書 | 品目、数量、単価、金額(税込か税別かの別を明記)、有効期限、発行日 | 契約書・請求書の品目と金額の内訳。申請の時点の見積書と、契約の時点の見積書の違いがある場合は、その理由 |
| 契約書・発注書 | 契約日、発注者・受注者の名称、業務の内容、金額、納期 | 契約日が、交付決定の日より後であること(補助金によって例外あり)。見積書の内訳と業務の内容 |
| 納品書・検収書 | 納品日、納品物の名称、検収日 | 納期、契約日の後であること、請求書の日付の前であること |
| 請求書 | 請求日、宛名、件名、品目、金額、振込先 | 契約書の金額、納品書の納品日。補助の対象と対象外の経費を分けて記載 |
| 支払の記録 | 振込の日付、金額、振込人の名義 | 請求書の金額と日付。振込人が、補助を受ける者の名義であること |
制作会社が契約書に入れておくと、報告のときに助かる定めがあります。
- 書類の発行への協力:発注者が、補助金の実績報告のために必要な書類の発行・再発行・日付や記載の確認を求めたときは、受注者が協力する。ただし、事実と異なる日付や内容の書類は発行しない。
- 納品日と検収日の記録:納品の日、検収の日を、メールや検収書で残し、書類の日付と一致させる。
- 経費の区分:制作費、保守費、サーバー費、写真撮影費、研修費のように、補助の対象になるものとならないものを、見積書・請求書で別の行にする。公募要領で対象外とされる経費は、同じ行に混ぜない。
- 書類の保管:補助金の手続では、証拠書類の保管を求められることが多い。受注者も、控えを一定の期間保管する。
| 日付の順序 | 見積書の日付 < 交付決定の日 < 契約日 < 納品日 < 検収日 < 請求日 < 支払日(補助金によって例外がある) |
|---|---|
| 宛名・名称 | 全ての書類で、補助を受ける者の正式名称が一致している |
| 件名・品目 | 見積書・契約書・請求書で、件名と品目の言い回しが同じ |
| 金額 | 見積書、契約書、請求書、支払の金額の関係を説明できる(値引き、変更、税込・税別の別) |
| 支払方法 | 振込の記録が残る方法。現金や相殺、第三者名義の支払を、公募要領が認めているか確認する |
表は、書類をそろえるときの確認項目の例です。必要な書類や様式は、補助金ごとに公募要領で定められています。
補助金の手続は、行政機関から帳簿書類の検査や報告を求められることがあります。国の補助金の場合、各省各庁の長は、必要があれば、補助事業者に報告をさせ、職員に事業場などに立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができるとされています(補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律23条1項)。制作会社も、発注者を通じて、見積りの内訳や、納品の事実の確認を求められる場合があります。普段から、見積書の根拠(作業の工数や単価)と、納品の記録を、きちんと残しておくことが、自分の身を守ります。
また、補助金を不正に受け取る行為には、重い罰則があります。偽りその他不正の手段により補助金等の交付を受けた者は、5年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科するとされています(同法29条1項)。制作費を水増しした見積書を出す、実際より高い請求書を出して差額を発注者に戻す、といったことに制作会社が関わると、契約の上でも信用の上でも重大な問題になります。見積書には、実際の取引の内容と金額だけを書く、という原則を、契約書の「受注者の表明」として書いておくと、実務の上でも断りやすくなります。
不採択・減額・取消しのとき、契約はどうなるか
補助金を使う計画は、うまくいかない場合のことも契約書に書いておく必要があります。場面ごとに整理します。
| 場面 | 契約の状態 | 決めておくこと |
|---|---|---|
| 不採択(交付決定が出ない) | 契約を交付決定の後に結ぶ型なら、まだ契約は成立していない。停止条件付きの型なら、条件が成就せず効力が生じない | 申請用の見積書の作成に費用がかかっていた場合の扱い(無償か、実費のみか)。補助金なしで制作を進めるなら、改めて契約を結ぶ |
| 採択されたが、補助の額が予定より少ない | 契約は有効。報酬は契約どおり | 補助の対象になる経費と、ならない経費を明細で分けておく。減額分は発注者の自己負担とする |
| 仕様や金額を変更したため、一部が補助の対象外になった | 契約の変更(追加見積書、変更契約書)の手続を踏んだか | 変更の前に、補助の対象への影響を発注者が確認すること。変更契約の日付と、補助の手続の変更承認の手続との前後 |
| 交付決定が取り消され、補助金の返還を求められた | 制作契約は有効。補助金の返還は発注者と行政機関との関係 | 返還が受注者の責任に起因する場合(書類の誤り、水増しなど)の責任の範囲。責任の上限(報酬額を上限とする等) |
| 制作が遅れ、補助事業の期間に間に合わない | 受注者の債務不履行(民法415条)が問題になり得る | 納期を、補助事業の期間より余裕を持たせて設定する。発注者の素材提供の遅れが原因なら、受注者の責任を負わない旨 |
交付決定の取消しや返還は、補助金を出す側と受ける側(発注者)の関係です。国の補助金では、補助事業者が交付の決定の内容や条件に違反したときに交付の決定を取り消すことができ(補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律17条1項)、取り消した場合に既に交付された補助金があれば、返還が命じられます(同法18条1項)。補助事業者は、善良な管理者の注意をもって補助事業を行う義務を負い(同法11条1項)、補助事業のために締結する契約に関する事項は交付の条件になり得ます(同法7条1項2号)。自治体の補助金は、その自治体の定める規則や要綱によります。いずれにしても、制作会社は、補助金を出す側との間に契約関係がないため、返還の責任を直接負うわけではありません。
ただし、返還の原因が制作会社の側にあるときは、発注者から損害賠償を求められることがあります。損害賠償の範囲は、契約書で決めておけます。当事者は債務の不履行について損害賠償の額を予定でき(民法420条1項)、違約金は賠償額の予定と推定されます(同条3項)。受注者は、「補助金の採択や交付を保証しない」「補助金の返還について責任を負わない。ただし、受注者が事実と異なる書類を発行したことによる場合は、報酬の額を上限として責任を負う」という趣旨を、契約書に書いておきます。個人が相手の契約では、事業者の責任を全部免除する条項が無効になり得る点(消費者契約法8条1項)も踏まえ、責任の範囲を限定する書き方にとどめます。
制作の契約に含めないこと:申請書類の作成と、採択の約束
補助金を使う案件では、発注者から「補助金の申請もまとめて頼みたい」と言われることがあります。制作契約に、申請書類の作成を含めるときは、その作成が法律上、報酬を得て他人に代わって行えるものかを確認する必要があります。
官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類の作成を、他人の依頼を受け、いかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として行うことは、行政書士又は行政書士法人でない者には認められていません(行政書士法19条1項、1条の3第1項。ただし、他の法律に別段の定めがある場合などは除く)。補助金の申請書類を報酬を得て作成する場合に、この規定に当たるかどうかは、提出先や書類の性質によって判断が分かれ得るため、ここでは当たるとも当たらないとも断定しません。ただ、ホームページ制作の報酬の中に「申請書類の作成の対価」を混ぜると、名目のいかんにかかわらず、この規定との関係が問題になるおそれがあります。
制作会社の契約書では、制作の範囲を次のように整理しておく方法があります。
- 申請書は、補助を受ける者(発注者)が自ら作成し、提出する。受注者は、申請書の作成を行わない。
- 受注者が提供するのは、見積書、制作内容の仕様書、制作物の概要の資料など、制作会社としての資料に限る。
- 申請の結果(採択・不採択、交付の額)について、受注者は保証しない。
広告や営業の表示にも注意が要ります。「補助金を使えば実質0円」「採択率100パーセント」のような表示は、実際より著しく有利であると誤認される表示などに当たると、景品表示法5条で禁止される表示になり得ます。補助金の対象になるかどうか、対象になる経費の範囲、補助の上限と補助率は、補助金ごとに異なり、年度ごとにも変わります。表示するときは、補助金の名称、公募の時期、対象になる条件、自己負担が生じることを具体的に書きます。これは契約書でなく、広告の話ですが、契約書の「表明及び保証」の条項(制作会社が補助金の採択を保証しないこと)と、整合させる必要があります。
(補助金に関する受注者の立場)
1受注者は、本件補助金の申請書類の作成及び提出を行わない。受注者が提供する見積書、仕様書その他の資料は、実際の取引の内容及び金額を記載したものとする。
2受注者は、本件補助金の採択、交付の額又は交付の時期を保証しない。
3本件補助金の交付決定が取り消され、又は補助金の返還を命じられた場合も、受注者に責めに帰すべき事由がない限り、委託者は、本契約の報酬の支払を免れない。
4受注者が事実と異なる内容の書類を発行したことにより、委託者に損害が生じた場合、受注者の責任の限度は、本契約の報酬の額とする。
第1項は、申請書類の作成を契約の外に置く書き方です。第3項と第4項は、責任の範囲を、受注者の責めに帰すべき事由があるかどうかと、報酬の額で区切っています。
ヒヤリングで確認する問いと、契約書に落とす場所
補助金を使う案件は、受注の前の確認で、契約のリスクの大半が見えてきます。次の問いを、見積りを出す前に確認します。
補助金を使う制作案件のヒヤリング
問使う予定の補助金は何か。公募要領を見たか。公募の締切と、交付決定の見込みの時期はいつか。
理由補助金ごとに、発注・契約・着手が認められる時期、対象になる経費、報告の期限が違います。公募要領を確認していないまま話を進めると、対象外の発注になるおそれがあります。
問交付決定は、まだ出ていないか。すでに出ているか。
理由出ていなければ、見積書だけを出して契約は後にする型にします。すでに出ているなら、決定の通知書で、対象経費と条件を確認します。
問制作費の支払は、いったん全額を自己資金で払えるか。払えない場合はどうするか。
理由補助金の入金が後になる仕組みでは、資金の手当てが必要です。払えない場合の分割や着手金の設計を、契約の前に決めます。
問補助の対象になる経費と、ならない経費は何か。保守・サーバー・写真撮影・研修は対象か。
理由見積書と請求書で、行を分ける必要があります。対象外の経費を混ぜると、全体が否認されるおそれがあります。
問申請書類は、誰が作るのか。
理由制作会社が作るのは見積書と仕様書などに限る、という線引きの確認です。
問不採択になったら、制作を進めるか。やめるか。
理由不採択のときの契約の扱い(成立していない、解除、改めて契約)と、見積書の作成費用の扱いを決めます。
問実績報告の期限はいつか。納品の期限は、補助事業の期間に収まるか。
理由納期の設定と、素材提供の期限、検収の期間を、報告の期限から逆算して決めます。
見積書の作り方や、仕様書で制作範囲を確定する方法は、制作の見積書・発注書と仕様書のページと共通です。補助金を使う案件では、見積書が申請書類の一部として審査されるため、仕様の記載と金額の根拠を、いつもより丁寧に書きます。外部のデザイナーやコーダーに制作を再委託する場合は、補助金に関する書類の発行や協力の義務も、外注先との契約に引き継ぎます(外注・再委託とフリーランス法のページ)。
起きがちなこと:書き方で防げる場面
補助金を使う制作案件でよく起きる場面と、契約書での備えを整理します。
| 起きがちなこと | 原因 | 契約書での備え |
|---|---|---|
| 交付決定の前に発注していたことが分かり、補助の対象外になった | 発注の時期の確認が、受注者と発注者のどちらの責任か決まっていない | 特約で、契約は交付決定の後に結ぶことを書き、発注者が決定の内容を示すことを義務にする |
| 補助金の入金が遅れ、制作費が長期間支払われない | 「補助金の入金後に支払う」と書き、入金が支払の条件になっている | 支払の期限を日付や納品からの日数で決め、補助金の入金の有無は期限に影響しないと書く |
| 不採択になり、見積書の作成にかけた手間が無駄になった | 申請用の見積書の対価が決まっていない | 見積書の作成を無償とするか、実費のみ請求するかを決め、不採択のときの扱いを特約に書く |
| 実績報告で、請求書の金額と契約書の金額が合わないと指摘された | 変更の手続が書類に残っていない | 変更は追加見積書・変更契約書で行い、書類の整合の確認シートで確認する |
| 補助の対象外の経費が同じ行に混ざり、全体が否認された | 見積書・請求書で、対象と対象外の経費が分かれていない | 経費の区分を、見積書・請求書で別の行にする |
| 補助金の返還を求められ、発注者から責任を問われた | 返還の原因と、受注者の責任の範囲が決まっていない | 受注者の責めに帰すべき事由の有無と、責任の上限を決める |
| 申請書類まで作ってほしいと言われ、断りにくかった | 制作の範囲に、申請書類の作成が含まれるか書いていない | 申請書は発注者が作成・提出することと、受注者が提供する資料の範囲を契約書に書く |
補助金を使う案件は、通常の制作契約より、発注者との間で確認することが増えます。確認した内容を、メールやチャットでなく、契約書の特約と、見積書の前提条件に残しておけば、補助金の手続が進んで状況が変わったときに、何を約束していたのかを遡って示せます。そのうえで、補助金を使わない案件と共通の骨組み(制作範囲、検収、報酬、権利、保守)は、本体の契約書で定め、補助金の特約を、別紙として足します。
よくあるご質問
補助金を使うホームページ制作で、契約書はいつ結べばよいですか。
多くの補助金は、交付決定の前に発注・契約・着手した経費を補助の対象外としています。そのため、交付決定の後に契約書を結ぶ型が基本です。申請の時点では、発注ではないことと有効期限を書いた見積書を出します。契約の効力を交付決定にかからせる型(民法127条1項の停止条件)もありますが、その形自体を認めない補助金があるため、公募要領で確認してから決めてください。
制作費の支払は、補助金が入金されてからでよいですか。
補助金の入金を支払の条件にする書き方は避けるほうが安全です。補助金が交付されない場合や、入金が遅れる場合に、支払義務が生じるのかどうかが争いになります。支払の期限は、納品の日から何日以内、のように日数で決め、補助金の入金の有無は期限に影響しないと書きます。発注者が一定の規模の法人なら、中小受託取引適正化法の支払期日の規制(同法3条1項)がかかる場合もあります。
実績報告のために、制作会社はどんな書類を出す必要がありますか。
一般に、見積書、契約書(発注書)、納品書または検収書、請求書、支払の記録が使われます。補助金によって必要な書類や様式は異なるので、公募要領で確認します。どの補助金でも、書類の間で、日付の順序、宛名、件名、品目、金額が食い違わないようにそろえることが重要です。補助の対象になる経費とならない経費は、別の行に分けて記載します。
補助金が不採択になったとき、契約はどうなりますか。
契約を交付決定の後に結ぶ型なら、不採択の時点ではまだ契約が成立していません。停止条件付きの契約なら、条件が成就せず、効力が生じません。申請用の見積書の作成費用を請求するかどうかは、事前に決めておく必要があります。補助金なしで制作を進める場合は、改めて契約を結びます。
補助金の申請書類の作成まで、制作契約に含めてよいですか。
制作契約には含めない整理が無難です。官公署に提出する書類その他権利義務・事実証明に関する書類の作成を、他人の依頼を受け、いかなる名目によるかを問わず報酬を得て業として行うことは、行政書士または行政書士法人以外の者には認められていません(行政書士法19条1項。他の法律に別段の定めがある場合などは除く)。補助金の申請書類がこれに当たるかは、提出先や書類の性質によるため断定できませんが、報酬に「申請書類の作成の対価」を混ぜると問題になるおそれがあります。申請書は補助を受ける者が自ら作成して提出し、制作会社が提供するのは、実際の取引の内容に基づく見積書や仕様書などの資料に限る、と契約書に書いておく方法があります。
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