このページの要点
- 提案・設計(準委任または請負)、家具の購入手配(代理・取次・売買)、搬入設置、工事(請負)を、目的条項で区分けし、区分ごとに報酬・責任・解約を書く。
- 家具の不具合は、「一切責任を負わない」でなく、メーカー保証に準じる範囲と、受注者の選定・確認・搬入の誤りによる範囲を分けて書く(民法562条・572条、消費者契約法8条1項1号)。
- 図面やイメージ図は、利用の範囲と、報酬の支払との関係を契約で決める。著作物かどうかは個別に判断され、アイデア自体は保護されない。
- 中古家具は古物営業の許可、依頼者の自宅での契約は訪問販売、壁紙などの工事は建設業の許可、間取りの変更を伴う図面は建築士法の設計に当たり得る。該当性を条文で確認する。
三つの仕事は、契約の性質が違う
コーディネーターが一つの案件で引き受ける仕事は、次のように分けて考えると整理がつきます。ここで書くのは一般的な整理で、実際にどの性質になるかは、約束の中身で判断されます。契約書の題名や、見積書の項目名では決まりません。
一つの案件に混ざる三つの仕事
提案・設計のサービス
準委任、または請負として書かれることが多い
- ヒヤリング、コンセプトの提案、レイアウト案、色柄や素材の選定、イメージ図・図面の作成
- 「案を完成させて渡す」と約束すれば請負(民法632条)、「助言や選定の作業を行う」と約束すれば準委任(同法656条・643条)に近づく
- 報酬は提案の対価として、家具代金とは別の項目にする
家具・照明などの売買、代理購入
売買(民法555条)、または代理・取次
- 自社が仕入れて売るのか、依頼者の代理人として購入先と契約するのか、自分の名前で購入して引き渡すのかで、責任の相手方が変わる
- 納品後の不具合の窓口、保証、返品の可否を決める
- 代金の流れ(依頼者が直接払うか、預かって支払うか)を決める
搬入・設置の作業
売買に付随する作業、または別の請負・準委任
- 搬入経路、手上げ、養生、組立て、設置、旧家具の扱いなどを列挙する
- 標準の範囲と、追加料金になる作業を分ける
- 作業中の破損、第三者の建物への損傷の責任を決める
壁・床・建具などの工事
請負(民法632条)。工事を受けるかどうかは別の問題
- 自社で施工するのか、施工業者を紹介するのか、施工業者と依頼者が直接契約するのかを決める
- 工事の種類と金額によっては、建設業の許可が必要になる場合がある(後述)
- 図面が、設計の業務に当たらないかを確認する
表の区分は、契約書の章立てにそのまま使えます。区分ごとに「誰が」「何を」「いつまでに」「いくらで」「不具合のときは誰に」を書きます。
区分けをしないで困るのは、依頼者が「全部まとめて任せた」つもりで、コーディネーターが「提案だけ引き受けた」つもりのときです。依頼者は、気に入らない仕上がりを提案の失敗と受け取りますが、コーディネーターは、家具そのものはメーカーのものと考えています。契約書で「何について責任を負うのか」を区分ごとに書いておけば、この食い違いは契約の段階で表に出ます。見積書や仕様書の考え方は制作の見積書・発注書と仕様書のページ、修正やキャンセルの考え方はトラブルとキャンセルのページでも扱っています。
目的条項で、提案業務と家具の購入を切り分ける
最初に決めるのは、家具や照明の購入を、コーディネーターがどういう立場で行うかです。立場によって、代金の流れも、不具合のときの相手方も変わります。
| 立場 | 購入先と契約する人 | 依頼者との関係 | 不具合のときの窓口 |
|---|---|---|---|
| 代理人として購入する | 依頼者(コーディネーターは代理人) | 代理人が依頼者のためにすることを示して行った契約は、依頼者に直接効力が生じる(民法99条1項) | 売主は購入先。コーディネーターは手配の誤りがあった場合に責任を負う |
| 自分の名前で買い、引き渡す | コーディネーター | コーディネーターが自己の名で他人のために物品の買入れを業とするときは、商法上の「問屋」にも当たり得る(商法551条)。購入後に依頼者へ移す | 依頼者に対して、購入先の選定と引渡しの責任を負う立場になる |
| 自社の商品として売る | コーディネーター(仕入れて販売) | 依頼者との売買契約(民法555条) | コーディネーターが売主として、契約不適合の責任を負う(民法562条以下) |
代理人として購入する場合、購入先に対して「依頼者のために」と示さないと、代理人自身が契約したものとみなされます(民法100条本文)。見積書や注文書の宛名が、依頼者なのかコーディネーターなのかをそろえておく必要があります。依頼者の代理人と購入先の代理人を兼ねるような形(たとえば、購入先の販売代理店の立場も持つ場合)は、同一の法律行為について双方の代理人となる行為として、代理権のない者の行為とみなされ得るため(同法108条1項本文)、本人であるそれぞれの側があらかじめ許諾していること(同項ただし書)を書面で残します。
(業務の区分)
1本契約に基づく業務は、次の各号のとおり区分し、区分ごとに、報酬、支払時期、責任及び解約の取扱いは、本契約及び見積書の定めによる。(1)提案業務(ヒヤリング、コンセプト提案、レイアウト案、素材選定、図面及びイメージ図の作成)(2)家具等の購入手配業務(受注者が選定した家具、照明、カーテンその他の物品の購入手配及び納品の手配)(3)搬入設置業務(搬入、組立て及び設置)
2前項第2号の購入手配は、受注者が委託者の代理人として購入先と契約する方法により行う。受注者が自己の名で購入する場合は、見積書にその旨を記載し、委託者はこれを承諾する。
3本契約には、壁、床、天井、建具その他の建物の工事は含まれない。工事を行う場合は、別に工事の契約を結ぶ。
第2項で、代理か、自己の名での購入かを選べるようにしています。第3項は、工事が契約に含まれないことを明記して、後から工事の責任を問われる入口をふさぐ書き方の例です。
代金の流れも決めておきます。依頼者が購入先に直接支払うなら、コーディネーターは代金を預かりません。コーディネーターが代金を預かって購入先に支払う場合は、預かった代金の扱いと、購入先に支払えなかったときの責任が問題になります。代理人として購入手配をする場合の費用は、必要な範囲で委託者に請求できます(民法650条1項は、委任事務を処理するために必要と認められる費用の償還を定めています)。費用の範囲と上限を見積書に書いておけば、請求の根拠が明確になります。
家具の保証は、メーカー保証に準じる書き方にし、搬入設置の別料金も決める
家具の不具合の責任について、契約書に「当社は一切責任を負いません」と書かれることがあります。売る側の立場からは書きたくなる条項ですが、この書き方は、効かない場面が多く、かえってトラブルを大きくします。
まず、民法上の売主の責任があります。引き渡された家具が種類・品質・数量について契約の内容に適合しないときは、買主は、修補、代替物の引渡し、不足分の引渡しによる追完を請求でき(民法562条1項)、売主が自分の仕事として売っているなら、有償契約としてこの規定が及びます(同法559条)。この責任を負わない旨の特約をしても、売主が知りながら告げなかった事実については免れません(同法572条)。さらに、依頼者が消費者であれば、事業者の債務不履行による損害賠償責任を全部免除する条項は無効です(消費者契約法8条1項1号)。
そこで、現実的な書き方は「責任を負わない」でなく、「責任の範囲と窓口を決める」ことです。メーカーや販売元の保証がある家具は、その保証の内容に準じる、と書きます。コーディネーター自身が責任を負う部分(選定の誤り、寸法の確認の誤り、搬入時の破損)は、そうでない部分(製品そのものの不良)と分けて書きます。
書き方の例(一般的な例) 家具の不具合の責任
責任の書き方
責任を全部否定する条項は、消費者が相手なら無効になり得ます。誰の責任かを原因で分ければ、依頼者の納得も得やすくなります。
不適合の通知期間
民法は、種類または品質の不適合について、売主が引渡しの時にその不適合を知らず、重大な過失もなかった場合、買主が不適合を知った時から1年以内に通知しないと、追完の請求などができなくなるとしています(566条)。商人間の売買では、受領後遅滞なく検査し、直ちに通知する必要があります(商法526条)。依頼者が事業者かどうかで、通知の期間を分けて書きます。
また、依頼者が事業者(店舗やオフィスを開く人)の場合と、個人(自宅の模様替え)の場合とでは、同じ家具の売買でも適用される規定が変わります。消費者契約法は、消費者と事業者の契約に適用され、事業者間の契約には適用されません。そこで、依頼者が個人か事業者かをヒヤリングの最初に確認し、契約書の責任の条項を、個人向けと事業者向けで書き分けておくと、後で見直す場面が減ります。
搬入・設置の作業は、別料金の中身を具体的に書く
家具のトラブルで意外に多いのが、搬入のときの追加費用です。契約書に「搬入設置費用を含む」とだけあると、階段しかない建物で、窓から吊り上げる必要が出たときに、追加の費用を請求できるのかが争いになります。
| 標準の搬入 | 道路から玄関までの、人力による搬入。エレベーター(荷物用を含む)または1階の玄関からの搬入を含む。 |
|---|---|
| 別料金の作業 | 階段での手上げ(階数ごと)/クレーン・ゴンドラによる吊り上げ/搬入経路の養生(標準を超える場合)/駐車許可の取得が必要な場合の費用/時間指定・夜間の搬入 |
| 事前確認 | 依頼者は、搬入経路(玄関・廊下・階段・エレベーターの寸法)の資料または写真を、見積りの前に提出する。受注者は、確認した寸法で搬入できるかを、発注前に回答する。 |
| 搬入できなかったとき | 依頼者の申告した寸法と実際が異なって搬入できなかった場合の再手配の費用は、依頼者が負担する。受注者の確認の誤りによる場合は、受注者が負担する。 |
| 立会い | 依頼者または代理の者が立ち会う。立会いのない場合の損傷の確認は、搬入後○日以内に写真を添えて通知する。 |
金額は書かず「○」「階数ごと」と枠だけ示しています。税込か税別かは、見積書の欄に明記します。
搬入の途中で家具や建物が傷ついたとき、誰の責任になるかは、いつ家具の「引渡し」があったかで変わります。売買では、売主が買主に目的物を引き渡した時以後に、双方に責任のない事由で目的物が壊れた場合は、買主は追完の請求などができず、代金の支払も拒めません(民法567条1項)。逆に、引渡しの前に壊れたなら、売主の責任の問題として残ります。搬入設置を請け負う契約では、「設置が完了し、依頼者が確認した時に引渡しとする」と書いておくと、危険の移る時点がはっきりします。
確認リスト:搬入設置の見積書に入れておくこと
- 1搬入経路の寸法と階数、エレベーターの有無を確認した日付と方法(写真・図面)
- 2標準の作業と、別料金になる作業の一覧(手上げ、吊り上げ、養生、時間指定)
- 3搬入できなかったときの再手配の費用の負担
- 4旧家具の撤去・処分を含むかどうか(含まない場合は、依頼者が別の事業者に頼むと明記)
- 5設置完了の確認方法(立会い、写真、確認書への署名・押印または電子的な確認)
- 6破損が見つかったときの通知期間と、通知の方法
図面・インテリア案の権利と、電子データの扱い
提案の成果物には、レイアウト図、イメージ図、素材の組み合わせ表、家具のリストなどがあります。依頼者が提案だけを受け取って、家具を別の店で買ったり、他の業者に図面を渡して施工させたりしないかは、コーディネーターにとって切実な問題です。
提案の成果物の権利の考え方(一般論)
| 成果物 | 著作物になり得るか | 依頼者が他の業者に渡してよいか | 契約で決めること |
|---|---|---|---|
| レイアウト図・平面図 | △ 図面は図形の著作物(著作権法10条1項6号)になり得るが、実用的・機械的な図は創作性が否定されることも | △ 契約で決める | 利用の範囲(本件の施工・購入のために限る等) |
| イメージ図・パース | ○ 表現に創作性があれば美術・図形の著作物になり得る | △ 契約で決める | 目的外使用、他案件への流用、第三者提供の可否 |
| 素材・色柄の組み合わせ表、家具のリスト | △ アイデアや事実の羅列にとどまれば著作物にならない | △ 契約で決める | リストを他の店舗に渡して見積りを取ってよいか |
| 独自に設計した造作家具・什器の図面 | ○ 図面の表現は図形の著作物。造作物自体が建築や美術の著作物と評価される場合もある | × 無断の製作は複製に当たり得る | 製作の許諾範囲、再製作の条件 |
著作物になるかどうかは、個別の成果物ごとに判断されます。「アイデア」自体は著作権で保護されず、表現が保護の対象になります。契約では、著作物にならない場合も想定して、利用の範囲を約束で定めます。
建築に関する図面に従って建築物を完成させる行為は、建築の著作物の「複製」に含まれます(著作権法2条1項15号ロ)。造作家具や内装の意匠が建築の著作物(同法10条1項5号)に当たるかは別として、図面を渡す相手と使い道を限らないと、提案の対価を払わない相手に実現されてしまうおそれがあります。その一方で、建築の著作物は、増築、改築、修繕、模様替えによる改変に対して同一性保持権が及ばない扱いがあります(同法20条2項2号)。依頼者が後で自宅や店舗を模様替えすることまで、禁じることは現実的でないので、契約では「改変を禁止する」のでなく「改変後の図面を、コーディネーターの作品として公表しない」と書くほうが実態に合います。
(成果物の権利と利用の範囲)
1提案業務により作成した図面、イメージ図その他の成果物(以下「成果物」という。)に関する著作権は、受注者に帰属する。
2委託者は、成果物を、本件の建物・部屋の内装、家具等の購入及び施工の目的に限り、複製し、第三者(施工業者を含む。)に提示することができる。この範囲を超える利用(他の物件への流用、第三者への提供、公表)には、受注者の書面または電子的な承諾を要する。
3委託者が、報酬の全額を支払うまでは、前項の利用の許諾は効力を生じない。
4受注者は、委託者の同意なく、成果物に含まれる委託者の間取り、所在、生活の様子が分かる情報を、実績として公表しない。
著作権を譲渡する場合は、27条・28条の権利を特掲し、著作者人格権の不行使を定めます(著作権の譲渡契約書のページ)。第3項は、報酬の支払を条件に利用を許諾する書き方です。
著作権を譲渡する契約にするときの注意は、条文例の注記にあるページ(著作権の譲渡契約書のページ)で扱っています。譲渡しない場合は、利用の方法と条件を決めて許諾し(著作権法63条1項・2項)、許諾を受けた者の利用権は、著作権者の承諾がなければ譲渡できない(同条3項)ことを踏まえて、依頼者が建物を売却したり、賃借人に引き継いだりする場面を想定した定めを置きます。
電子データの扱いも決めます。間取り図や、住居の写真、家族構成が分かる情報は、個人の生活に関わる情報です。ファイル共有のリンクを誰でも開ける状態にしない、案件が終わったら一定期間後に消す、協力する施工業者や外注先に渡すときは同じ秘密保持を負わせる、といった運用を契約書に落とします。外部に図面作成を頼む場合の条件の引継ぎは、外注・再委託とフリーランス法のページに書いたとおりです。
古物・訪問販売・建設業・建築士の線引きを確認する
コーディネートの仕事は、家具を売り、依頼者の家を訪ね、壁紙に触れ、図面を描くので、別々の法律の入口に近い場所にあります。ここでは、条文で確認できる範囲だけを整理します。どれも「当てはまる場合がある」ことを知っておくためのもので、当てはまるかどうかは、取引の実態で決まります。
| 場面 | 確認したい条文 | ポイント |
|---|---|---|
| 中古家具・ヴィンテージ家具を仕入れて売る、下取りする | 古物営業法2条1項・2項1号、3条 | 古物とは、一度使用された物品などをいい、これを売買する営業には都道府県公安委員会の許可が必要。新品を仕入れて売るだけなら古物には当たらないのが通常。展示品や中古品を買い入れて売る場合は、古物に当たるかを区別する |
| 依頼者の自宅を訪ねて契約する | 特定商取引法2条1項1号、4条・5条、9条、26条1項1号・6項1号 | 営業所等以外の場所で契約の申込みを受け、または契約を締結して行う販売・役務の提供は、訪問販売。消費者が相手なら、書面の交付とクーリング・オフ(書面を受け取った日から8日)の規定がかかり得る。事業者が営業のために締結する契約は適用除外 |
| 壁紙の張り替え、床材、建具など工事を受ける | 建設業法2条1項・別表第一、3条1項ただし書、同法施行令1条の2 | 内装仕上工事は建設工事の種類の一つ。軽微な工事のみを請け負う場合を除き、建設業の許可が必要。軽微な工事は、請負代金の額が政令の金額に満たない工事など(建築一式工事は別の定め) |
| 間取りの変更を伴う図面を作る | 建築士法2条6項、3条〜3条の3、建築基準法2条5号・14号・15号 | 設計図書とは、建築物の建築工事の実施のために必要な図面。一定の規模・用途の建築物の増築・改築・大規模の修繕・模様替えの設計は、建築士でなければできない場合がある |
中古家具を扱う場合は、古物商の許可が前提になります。許可を受けないで古物を売買する営業はできません(古物営業法3条)。依頼者の持っている家具を引き取って別の依頼者に売る、委託を受けて売る、という形も古物営業に含まれ得ます(同法2条2項1号は、売買・交換のほか、委託を受けて売買・交換する営業を挙げています)。ただし、古物を売却することだけを行う場合や、自分が売った物品をその相手方から買い受けることだけを行う場合は、古物営業から除かれています。
訪問販売は、店で契約する場合と並べて理解します。依頼者の自宅や店舗予定地で契約を結ぶと、営業所等以外の場所での契約にあたります。消費者が相手のとき、事業者は、申込みの内容を記載した書面(特定商取引法4条)や契約内容を明らかにする書面(同法5条)を交付する必要があり、消費者は、書面を受け取った日から8日以内ならクーリング・オフができます(同法9条1項)。ただし、消費者が自宅で契約の申込みや締結をすることを自ら請求した場合は、4条から10条までの規定が適用されません(同法26条6項1号)。請求したといえるかは個別の事情で判断されるので、訪問に至った経緯と、打合せと契約の場面を、記録に残しておきます。
建設業の許可は、軽微な建設工事のみを請け負う場合は不要です(建設業法3条1項ただし書)。軽微な工事の範囲は、政令で、工事一件の請負代金の額が500万円(建築一式工事は1,500万円)に満たない工事、または建築一式工事のうち延べ面積が150平方メートルに満たない木造住宅を建設する工事とされています(建設業法施行令1条の2第1項)。契約を分割しても、正当な理由がなければ合計額で判断され(同条2項)、注文者が材料を提供する場合は、その市場価格が加算されます(同条3項)。工事を含む仕事を、自社の名前で請け負うなら、この線引きの確認が欠かせません。工事を請け負わず、施工業者を紹介するだけで、契約は依頼者と施工業者が直接結ぶ形なら、契約書にそのことを書いて、工事の責任を負わない立場を明確にします。
図面については、設計は「その者の責任において設計図書を作成すること」で、設計図書は「建築物の建築工事の実施のために必要な図面と仕様書」です(建築士法2条6項)。家具の配置図や、色柄を示すイメージ図は、建築工事の実施のために必要な図面とはいえず、通常はこれに当たらないと考えられます。壁を壊す、間取りを変える、主要構造部(壁、柱、床、はり、屋根、階段。建築基準法2条5号)に手を入れる図面を作るなら、規模と用途によっては建築士の関与が必要になる場合があります(建築士法3条〜3条の3)。そのため、契約書には「提案する図面は、意匠・レイアウトの提案であり、建築基準法令に基づく設計図書や、確認申請のための図面ではない」と書いておきます。
提案料・修正・途中解約の決め方
提案の仕事は、手間のかかる割に成果が目に見えにくいため、費用を請求するタイミングで揉めがちです。次の四つを決めておきます。
- ヒヤリングと現地調査を有料にするか:現地での採寸や写真撮影までを無償にするのか、提案前の段階で費用を受け取るのかを、見積りの前に伝えます。
- 提案の回数と修正の回数:初回提案、修正提案、最終案、のように段階を分け、回数を超える修正は別料金とします。「どこまでが修正で、どこからが方向転換か」の区別も書きます(修正回数の考え方はトラブルとキャンセルのページと同じです)。
- 提案を採用しない場合の報酬:提案業務は、案を提出した時点で報酬が発生するのか、家具の購入に進んだ場合に限って提案料を値引きするのかを決めます。
- 途中で解約された場合の精算:進んだ段階までの報酬を請求できる形にします。
途中解約の法的な土台は、契約の性質で変わります。請負なら民法641条・634条2号、準委任なら同法651条・648条3項2号が土台になります(請負の仕組みはトラブルとキャンセルのページで説明しています)。準委任の解除は、相手方に不利な時期にしたときなどは損害賠償の問題になります(同法651条2項)。どちらでも、提案の仕事では、段階ごとの報酬の割合を契約書に書いておくほうが、請求の根拠が明確になります。
書き方の例(一般的な例) 提案料と途中解約
段階別の報酬
協議にしておくと、金額の根拠がないまま交渉になります。段階を分け、割合を示します。
個人の依頼者のキャンセル料
消費者契約では、解除に伴う損害賠償の額や違約金が、同種の契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分が無効です(消費者契約法9条1項1号)。全額請求は避けます。
支払の遅延に備える定めは、制作の契約と同じ考え方です。依頼者が消費者なら、遅延損害金の定めには上限があります(消費者契約法9条1項2号)。事業者が相手なら、この上限は適用されませんが、約定を置くときは常識的な利率を書きます。家具の購入手配に伴って仕入れ先に支払う代金は、依頼者の入金が先、購入先への発注が後、とするのが原則です。依頼者の入金がないまま先に発注し、購入先に支払いを済ませると、受注者が資金を立て替えることになります。特注の家具は、発注後のキャンセルが難しいため、発注の前に、委託者の承諾を書面または電子的な方法で得ておき、その後のキャンセルは、すでに発生した製作費用を負担してもらう旨を書きます。
ヒヤリングで確認する問いと、契約書に落とす場所
契約書を作る前のヒヤリングは、コーディネートの内容のためだけでなく、契約の性質を決めるためにも使います。次の問いを、案件の最初に確認します。
コーディネートの契約を作る前のヒヤリング
問依頼者は個人(自宅)か、事業者(店舗・オフィス)か。
理由消費者契約法や特定商取引法のクーリング・オフがかかるかが変わり、責任の条項や解約の条項の書き方が変わります。
問提案だけを頼みたいのか、家具の購入手配まで頼みたいのか。
理由提案のみなら準委任・請負の契約で足ります。購入手配まで含むなら、代理か、自己の名での購入か、自社商品の販売かを決める必要があります。
問中古家具・持ち込みの家具・既存の家具を使うか。
理由古物営業の該当、持ち込み家具の状態の責任、既存家具の移動中の破損の扱いに関わります。
問壁・床・建具の工事を伴うか。伴う場合は誰が施工するか。
理由請負の契約が必要か、建設業の許可の確認が必要か、工事を紹介にとどめるかを決めます。
問建物の搬入経路は確認できるか。階数、エレベーター、搬入できない大きさの家具はあるか。
理由搬入設置の別料金の範囲と、搬入できなかったときの再手配の費用の負担を決めます。
問提案した図面やイメージ図を、他の業者に渡すことはあるか。
理由利用の範囲、報酬の支払との関係、他の物件への流用の可否を決めます。
問制作過程や完成した空間を、実績として公開したいか。依頼者は了承するか。
理由個人の住居は、間取りや生活の様子が分かるため、公表の範囲と匿名化の方法を決めます。
ヒヤリングの記録は、契約書の別紙に添えるか、見積書の前提条件として引用します。「ヒヤリングシートの回答を前提とする」と書き、回答と実態が違った場合に、見積りと納期を見直せるようにします。
起きがちなこと:書き方で防げる場面
最後に、インテリアコーディネートの契約でよく起きる場面と、契約書で備えておくことを整理します。
| 起きがちなこと | 原因 | 契約書での備え |
|---|---|---|
| 届いたソファが寸法の問題で部屋に入らない | 搬入経路の確認が、依頼者とコーディネーターのどちらの責任か決まっていない | 搬入経路の資料を依頼者が提出し、受注者が回答する手順と、搬入できなかったときの費用の負担を書く |
| 家具が傷んで届き、メーカーと依頼者とコーディネーターが責任を押し付け合う | 代理か自己の名での購入かが不明で、窓口が決まっていない | 購入の立場を契約書に書き、不具合の窓口と、原因別の責任の分担を決める |
| 提案だけ受け取って、家具は別の店で買われた | 提案の対価と家具の販売利益が一体になっていて、提案料が決まっていない | 提案業務の報酬を独立の項目にし、提案の利用範囲を購入・施工の目的に限る |
| 図面が他の施工業者に渡り、無断で実現された | 図面の利用範囲と、支払との関係が決まっていない | 報酬の全額の支払を条件に利用を許諾し、目的外の利用や第三者提供に承諾を要するとする |
| 壁紙の張り替えを頼まれ、許可のない工事を請け負うことになりそうになった | 工事が契約に含まれるのか、紹介にとどまるのか決まっていない | 工事は契約に含まない旨を明記し、工事は施工業者と依頼者が直接契約する形にする |
| 自宅で契約したのに、後日クーリング・オフを求められた | 訪問販売の規定の確認と、書面の交付をしていない | 個人の依頼者との契約は、特定商取引法の書面の交付の要否を確認し、契約の場所と経緯を記録する |
| 中途解約を言い出され、提案料を請求したら拒まれた | 段階別の報酬と、解約の精算が決まっていない | 各段階の報酬の割合を書き、個人が相手のときは平均的な損害を超えない範囲にする |
どの場面も、契約書に書いてあれば、書いてあるとおりに動けます。書いていなければ、民法の一般的な規定と、当事者の記憶と、メールやメッセージの記録が頼りになります。制作の契約書全般の条項の考え方はホームページ制作の契約書のページにまとめてあります。インテリアの仕事でも、制作範囲、納期、検収、報酬、権利、秘密保持の骨組みは共通です。そのうえで、三つの仕事の区分と、家具の売買と、搬入設置と、図面の権利を、この仕事に合わせて書き足してください。
よくあるご質問
インテリアコーディネートの契約書は、業務委託契約書でよいですか。
題名は業務委託契約書でも構いませんが、中身は区分ごとに考えます。提案や図面の作成は準委任または請負、家具の購入手配は代理・取次・売買、工事は請負にそれぞれ近づきます。題名ではなく約束の中身で性質が判断されるため、目的条項で、提案業務、購入手配業務、搬入設置業務に区分し、区分ごとに報酬・責任・解約を書きます。
家具の不具合について「一切責任を負わない」と書いておけば安心ですか。
安心とはいえません。売主が知りながら告げなかった事実については、責任を負わない旨の特約があっても免れません(民法572条)。依頼者が消費者なら、事業者の債務不履行による損害賠償責任を全部免除する条項は無効です(消費者契約法8条1項1号)。製品そのものの不具合はメーカーや販売元の保証に従い、受注者は窓口として協力し、受注者の選定・確認・搬入の誤りは受注者の責任とする、と原因で分けて書くほうが実効的です。
提案した図面を、依頼者が他の施工業者に渡すのを防げますか。
契約で利用の範囲を決めておけば、範囲を超える利用に承諾を要する形にできます。図面は図形の著作物(著作権法10条1項6号)になり得ますが、創作性が低い図は保護されないこともあります。そのため、著作権だけに頼らず、「本件の購入・施工の目的に限る」「報酬の全額の支払まで許諾は効力を生じない」といった約束を、契約で定めます。
依頼者の自宅で契約すると、クーリング・オフの対象になりますか。
依頼者が消費者で、営業所等以外の場所で契約の申込みを受けたり締結したりする場合は、訪問販売に当たり得て、書面を受け取った日から8日間のクーリング・オフの規定がかかります(特定商取引法2条1項1号、9条1項)。ただし、消費者が自宅で契約することを自ら請求した場合は、4条から10条までが適用されません(同法26条6項1号)。事業者が営業のために結ぶ契約は適用除外です(同法26条1項1号)。当たるかどうかは個別の事情によるため、契約の場所と経緯を記録しておきます。
壁紙の張り替えを一緒に請け負う場合、許可は必要ですか。
内装仕上工事は、建設業法の建設工事の種類の一つです(同法2条1項、別表第一)。軽微な建設工事のみを請け負う場合は許可が不要で(同法3条1項ただし書)、軽微な工事の範囲は政令で定められています(同法施行令1条の2第1項)。工事を請け負わずに施工業者を紹介する形にするなら、契約書にその旨と、依頼者と施工業者が直接契約することを明記します。
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