このページの要点
- 共同著作物の著作権(共有著作権)は、共有者全員の合意によらなければ行使できない(著作権法65条2項)。共同制作の時点で、権利の持ち方と行使の方法を決める。
- ライセンス契約では、許諾する商品・地域・期間・独占か非独占か・再許諾の可否を決める。
- ロイヤリティは、計算の基礎(売上・出荷数・小売価格)、料率、最低保証、報告と監査の方法を決める。
- 監修の手順と、契約終了後に残った在庫を売れる期間(セルオフ期間)を決める。
キャラクターの権利は、絵に宿る
最高裁判所は、キャラクターそのもの(漫画の具体的な表現から昇華した登場人物の人格)は、思想又は感情を創作的に表現したものではなく、著作物に当たらないとしています(最高裁判所平成9年7月17日判決)。キャラクターの権利として守られるのは、描かれた個々のイラストの著作権です。ライセンス契約では、許諾の対象を「キャラクター」と抽象的に書くのではなく、対象となるイラストやデザインを別紙で特定しておくと、範囲が明確になります。
共同で作ったキャラクターは、共有の著作権になる
二人以上が共同で創作し、それぞれの寄与を分離して個別に利用できない著作物は、共同著作物になります(著作権法2条1項12号)。企画者とイラストレーターが、ともにキャラクターの絵の表現そのものに創作的に関わった場合は、共同著作物になり得ます。企画者が設定やアイデアを出し、絵はイラストレーターが描いたという場合は、絵の著作権はイラストレーターだけに生じるのが原則です。
共有の著作権のルール
| 行為 | 単独でできるか | 根拠 |
|---|---|---|
| 自分の持分を他人に譲渡する | × 他の共有者の同意が必要 | 著作権法65条1項 |
| グッズ化の許諾など、著作権を行使する | × 共有者全員の合意が必要 | 同条2項 |
| 正当な理由なく同意を拒む | × 拒めない | 同条3項 |
| 著作者人格権を行使する | × 著作者全員の合意が必要(信義に反して妨げられない) | 同法64条 |
共有のままだと、一人が反対するだけで商品化が進まなくなります。共同制作を始める時点で、権利をどちらが持つのか(一方に集約するのか、共有にするのか)、共有にするなら誰が窓口になって許諾を出すのか、収益をどう分けるのかを、契約で決めておきます。共有者のうち、著作権を代表して行使する者を定めることもできます(同法65条4項、64条3項)。
(共同制作キャラクターの権利)
1本件キャラクターのイラスト(別紙に定めるもの)の著作権は、甲及び乙の共有とし、持分は各2分の1とします。
2甲及び乙は、本件キャラクターの商品化その他第三者への利用の許諾について、甲を代表者と定めます。ただし、甲は、許諾の条件について、事前に乙と協議し、乙の同意を得るものとします。
3本件キャラクターの利用により生じた収益は、別紙に定める方法により計算し、甲及び乙に各2分の1ずつ分配します。
4乙は、正当な理由なく、第2項ただし書の同意を拒まないものとします。
持分や分配の割合は一例です。どちらがどの部分を作ったか、費用をどちらが負担したかを踏まえて決めます。
キャラクターの共同制作の契約で見落とされやすい点を挙げます。
- 収益の分配だけで、権利の帰属が書かれていない:「共同で保有する」と話していても、契約書が収益の分け方しか定めていなければ、絵を描いた人に著作権が生じたままです。譲渡か共有の一文が必要です。
- 権利は層ごとに別々に生じる:一つのキャラクターでも、元のイラスト、グッズ用に新しく描いたデザイン、商品の写真、音楽などの権利はそれぞれ別に生じます。「本キャラクターの権利」の一語で束ねるとあいまいになります。
- 商標の出願の名義:一方の名義にすれば相手は権利の外に置かれ、共同の名義にすれば、またすべての共有者の合意が必要になります。出願の代理は弁理士の業務なので、権利の持ち方を契約で決め、出願は専門家に依頼します。
- 決め方のルール:新しいライセンスを出すか、ブランドを傷つける使い方をどう防ぐか、意見が割れたときにどう決めるか。失敗したときより、当たったときにもめます。
- 解消したときの帰属と「利益」の定義:共同事業をやめるとき、キャラクターを誰が引き取るのか、相手は使い続けられるのか。分配の基礎となる利益に、どの費用を差し引くのかも決めておきます。
ライセンス契約で決めること
| 項目 | 決めること |
|---|---|
| 許諾の対象 | 対象となるイラスト・デザインの特定(別紙) |
| 許諾の範囲 | 商品の種類(文具・衣類・食品のパッケージなど)、地域、販売の方法(店舗・通販) |
| 独占か非独占か | 同じ種類の商品について、ほかの会社にも許諾できるか |
| 期間 | 契約期間と更新の方法 |
| 再許諾 | ライセンスを受けた会社が、製造を別の会社に委託できるか |
| 監修 | 商品の企画・試作品の段階で、権利者の承認を受ける手順 |
| ロイヤリティ | 計算の基礎、料率、最低保証、支払の時期 |
| 報告と監査 | 販売数・売上の報告の頻度、帳簿を確認する権利 |
| 権利表示 | 商品に表示する著作権の表記 |
| 契約終了後 | 在庫を売れる期間(セルオフ期間)、金型・データの扱い |
ロイヤリティの決め方
ロイヤリティは、何に料率を掛けるかで金額が大きく変わります。「売上の◯%」の売上が、小売価格なのか、ライセンスを受けた会社の卸売価格なのか、出荷数なのか、返品を差し引いた後なのかを定義しておきます。
| 計算の基礎 | ライセンシーの卸売価格(消費税別)×出荷数(返品分を除く) |
|---|---|
| 料率 | ◯% |
| 最低保証 | 契約期間中、年◯◯円。ロイヤリティが最低保証に満たない場合も最低保証額を支払う |
| 前払金 | 契約時に◯◯円を支払い、ロイヤリティに充当する |
| 報告 | 四半期ごとに、商品別の出荷数・卸売価格・返品数を報告 |
| 支払 | 報告の締めから◯日以内 |
| 監査 | 権利者は、年1回、帳簿の閲覧を求めることができる |
最低保証を置くと、ライセンシーが商品化を進めないまま契約期間が過ぎることを防げます。
出版物を原作とするグッズの契約を、依頼者と協議して改訂した例では、表題を「グッズ販売権の設定」から「商品化権の設定」に改めて許諾の性質をはっきりさせ、ロイヤリティを「販売価格×料率×販売数」とし、見本・寄贈・販促での配布・流通の過程での破損品を数量から除くこと、明細書の発行と月ごとの締めと支払、期間満了後も対価の支払を条件に在庫に限って販売できること、原作者側の事情で途中で終わった場合の在庫の買取りを定めました。
反対に、イラストレーターやデザイナーが、大きな権利者からライセンスを受けた会社の下で商品のデザインを描く立場に入ることもあります。その場合、ライセンスを受けた会社は、外注先の著作者人格権の不行使まで権利者に保証させられることがあるので、外注先として契約する際は、不行使を約束する範囲と、名誉・信用を害する利用の例外を確認します。ライセンスを受ける側の交渉では、製造や販売の代行といった通常の業務の委託を再許諾と区別すること、企画の承認に期限を設け、期限内に返事がなければ承認とみなすこと、が主な論点になりました。
監修と、イメージを守る条項
キャラクターのイメージは、権利者にとって最も大切な財産です。品質の低い商品や、キャラクターの性格に合わない使い方をされると、価値が下がります。商品の企画、デザイン、試作品の各段階で権利者の承認を受ける監修の手順と、承認の期限(期限内に返事がなければ承認とみなすかどうか)を決めておきます。公序良俗に反する商品や、政治・宗教の宣伝への使用を禁じる条項も入れておきます。
自分のデザインの商品を、お店に卸す場合
イラストレーターやデザイナーが、自分のデザインのステッカーや雑貨を販売店に供給する場合は、ライセンスではなく、商品の売買(買取り)か委託販売の契約になります。買取りか委託販売かで、売れ残りのリスクを誰が負うかが変わります。事務所の改訂例では、デザインの著作権は制作者に帰属することを確認しつつ、販売店から提供された企業のロゴを使った商品については、そのロゴ自体の権利は提供者に残る旨のただし書を加え、販売店が特定のデザインの再発注を望まない場合の取扱いの終了の手続を定めました。
買取りの場合に、販売店に販売価格を指定して守らせることは、再販売価格の拘束として、独占禁止法上、原則として違法となります。売れ残りなどのリスクを制作者が負う委託販売であれば、価格を指示しても通常は問題になりませんが、名目ではなく実態で判断されます。希望小売価格を示すことと、価格を強制することは区別しておきます。販売店がデザインを無断で複製して別の商品を作ることの禁止も入れておきます。
監修の期限と、ライセンシーの事情による解除
権利者の側から見ると、監修は品質を守る手段ですが、ライセンスを受けた会社から見ると、監修の返事が遅れると商品の発売が遅れます。監修の期限(受け取ってから◯営業日以内)と、期限内に返事がない場合の扱いを決めておくと、双方の予定が立てやすくなります。権利者の立場では、期限内に返事がなければ承認とみなす条項は慎重に検討し、少なくとも催促の手順を挟む形にしておきます。
ライセンスを受けた会社が、ロイヤリティを支払わない、報告をしない、監修を受けずに商品を出した、支払を停止した、といった場合に、権利者が契約を解除できる事由も定めておきます。解除した場合の在庫の扱いは、期間の満了による終了の場合と分けて書きます。
キャラクターの使用ガイドラインを用意する
キャラクターを複数の会社に使わせるようになると、使い方がばらばらになり、イメージが崩れていきます。キャラクターの性格や設定、してはいけない表現(暴力的な場面、特定の政治・宗教との結び付き、他のキャラクターとの組合せなど)、色や形の指定をまとめた使用ガイドラインを作り、ライセンス契約で守ることを義務づけます。ガイドラインを契約の別紙にしておけば、違反した場合に契約違反として是正を求めることができます。ガイドラインを改訂した場合に、すでに製造した商品をどう扱うかも決めておきます。
契約が終わった後の在庫
契約が終わったときに、ライセンスを受けた会社に在庫が残っていることがあります。在庫を一定の期間だけ売れる期間(セルオフ期間)を設けるのか、すぐに販売を止めて廃棄するのかを決めておきます。セルオフ期間を設ける場合も、その期間の販売分のロイヤリティを支払う義務は残すと定めます。違反による解除の場合は、セルオフを認めないと書き分けておくと、違反の抑止になります。
事務所の改訂例:ライセンス契約(依頼者原案からの改訂)
許諾の範囲
「商品化を許諾する」だけでは、商品の種類も地域も独占かどうかも決まりません。範囲を特定しました。
期間満了後
満了と違反による解除を書き分け、満了の場合だけ在庫の販売を認めました。
ご相談の場面から:一時金から売上分配への変更
これまでは一回の使用料をもらう契約でしたが、売上に応じて分配を受ける形に変えたいと相手から提案されました。何に気をつければよいですか。
分配の基礎となる売上の定義、報告と根拠資料の確認の権利、分配の期間、期間が終わった後の販売の扱いを決めることが大切です。違約金の定めが「使用料の3倍」のように一時金を前提にしていると、分配型では金額が計算できなくなるので、計算の方法も見直します。
イラストの制作の依頼規約はイラストレーターの契約書のページ、著作権の譲渡と許諾の違いは著作権の譲渡のページ、共同制作の相手が外注先になる場合は外注・フリーランス法のページで扱っています。
よくあるご質問
キャラクターそのものに著作権はありますか?
最高裁判所は、キャラクターそのものは著作物に当たらないとしています(平成9年7月17日判決)。守られるのは、描かれた個々のイラストの著作権です。ライセンス契約では、許諾の対象となるイラストやデザインを別紙で特定しておきます。
共同で作ったキャラクターを、一人の判断でグッズにできますか?
共同著作物の著作権は共有になり、共有者全員の合意がなければ行使できません(著作権法65条2項)。ただし、各共有者は、正当な理由なく合意の成立を妨げることはできません(同条3項)。共同制作の時点で、窓口になる代表者と収益の分け方を契約で決めておきます。
ライセンス契約と著作権の譲渡は、どう違いますか?
譲渡は著作権そのものを相手に移すもので、ライセンス(利用の許諾)は、著作権を手元に残したまま、商品・地域・期間などを限定して使い方を許すものです。キャラクターの商品化には、権利を手元に残せるライセンスが向いています。
ロイヤリティは、どう決めればよいですか?
計算の基礎(小売価格・卸売価格・出荷数など)、料率、返品の扱い、最低保証、報告の頻度、帳簿を確認する権利を決めます。計算の基礎の定義があいまいだと、金額をめぐって争いになります。
契約が終わった後、相手の在庫はどうなりますか?
契約で決めた内容によります。一定の期間だけ在庫を販売できるセルオフ期間を設けるか、販売を止めるかを決め、セルオフ期間の販売分のロイヤリティも支払う義務があると定めておきます。違反による解除の場合はセルオフを認めないと書き分けるのがおすすめです。
共同で作ったキャラクターの収益は、どう分ければよいですか?
分配の基礎となる利益に、どの費用を差し引くのかを定義したうえで、誰がどの部分を作ったか、費用をどちらが負担したかを踏まえて割合を決めます。収益の分け方だけでなく、権利の帰属も契約に書いておきます。
キャラクターの商標は、誰の名義で出願すればよいですか?
一方の名義にすれば相手は権利の外に置かれ、共同の名義にすれば、共有者全員の合意が必要になります。権利の持ち方を契約で決めたうえで、出願は弁理士に依頼します。
自分のデザインの商品をお店に卸すとき、販売価格を指定できますか?
買取りの場合に販売店に販売価格を守らせることは、再販売価格の拘束として独占禁止法上、原則として違法となります。売れ残りのリスクを制作者が負う委託販売であれば、価格の指示は通常問題になりませんが、実態で判断されます。
監修の返事が遅れて、商品の発売が遅れると言われました。
監修の期限と、期限内に返事がない場合の扱いを契約で決めておきます。権利者の立場では、期限内に返事がなければ承認とみなす条項は慎重に検討し、催促の手順を挟む形にしておくのが安全です。
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