このページの要点
- 題名が業務委託契約書でも、完成させたサイトを納品して報酬を受け取る約束なら、中身は請負(民法632条)。報酬は、特約がなければ引渡しと同時に支払われる(同法633条)。
- 制作範囲(ページ数・機能・素材の用意・原稿の担当)、修正の回数、検収の期間と基準を、契約書か別紙の仕様書で決める。
- 著作権を発注者に移すのか、制作者に残して利用を許諾するのかを決める。移すなら27条・28条の権利を特に書き、移す時期を報酬の全額の支払時にする。
- サーバー・ドメインの契約者、ID・パスワードの管理、写真・フォントなど素材のライセンスを、誰が持ち誰が責任を負うか書く。
業務委託契約書でも、中身は請負になることが多い
ホームページ制作の契約書は、「業務委託契約書」という題名で作られることがほとんどです。しかし、法律上の性質は題名では決まりません。完成したサイトを納品し、その結果に対して報酬を受け取る約束であれば、仕事の完成を約束する請負の性質を持ちます(民法632条)。一方、公開後の更新作業や運用の代行のように、完成を約束せずに作業そのものを引き受けるものは、準委任の性質を持ちます(同法656条)。
請負と準委任で変わること
| 項目 | 請負(制作) | 準委任(保守・運用) |
|---|---|---|
| 約束の中心 | サイトを完成させること | 作業を注意深く行うこと |
| 報酬の時期 | △ 特約がなければ引渡しと同時(民法633条) | △ 特約がなければ作業の後 |
| 完成しなかった場合 | × 原則として報酬を請求できない(可分な部分は割合で請求できる場合あり) | ○ 作業した分の報酬を請求できる |
| 納品後の不具合 | ○ 契約の内容に適合しない場合の責任(修補・減額など) | - 作業の不備の責任 |
| 途中でやめる場合 | 注文者は完成前ならいつでも損害を賠償して解除できる(同法641条) | 各当事者がいつでも解除できる(不利な時期などは損害賠償) |
制作と保守を一つの契約書にまとめる場合は、それぞれの部分がどちらの性質なのかを書き分けます。
報酬を引渡しの時にまとめて受け取る形では、制作の途中で発注者の都合で止まったときの負担が大きくなります。着手時・デザイン確定時・納品時のように、工程ごとに分けて受け取る支払条件にしておくと、途中で止まった場合の精算も簡単になります。
ホームページ制作の契約書に入れる条項
| 条項 | 決めること | 作る側から見た注意点 |
|---|---|---|
| 業務の内容・制作範囲 | ページ数、機能、対応する端末、原稿・写真の担当 | 「一式」で済ませず、別紙の仕様書で特定する |
| 発注者の協力 | 原稿・素材・確認の提供時期 | 協力が遅れた場合の納期の延長と、追加の費用 |
| 修正 | 修正の回数、範囲 | 回数を超えた修正、仕様の変更は追加の費用 |
| 納品・検収 | 納品の方法、検収の期間と基準 | 期間内に通知がなければ合格とみなす |
| 報酬・支払 | 金額、支払の時期と方法 | 工程ごとの分割、遅延した場合の扱い |
| 著作権 | 譲渡か利用の許諾か、時期 | 譲渡なら報酬の全額の支払時に移転。制作者の既存の素材は留保 |
| 素材・第三者の権利 | 写真・フォント・プラグインのライセンス | 発注者が提供した素材の権利は発注者が保証 |
| サーバー・ドメイン | 契約者、管理者、費用の負担 | 制作者の名義で取得するなら、引渡しの方法 |
| 実績公開 | 制作実績として公開できるか | 公開の範囲と時期を決めておく |
| 契約不適合責任 | 不具合の通知期間と対応 | 期間と、責任を負わない場合(発注者の改変など) |
| 解除・中途解約 | 途中でやめる場合の精算 | 作業済みの分と、発生した費用の請求 |
| 損害賠償 | 賠償の範囲と上限 | 上限を受け取った報酬の額などに |
呼び方を一つにそろえ、見積書を契約の一部にする
事務所がレビューした契約書の中には、制作するものが「ホームページ」「Webサイト」「ウェブコンテンツ」「制作物」「納品物」「納入物」の6通りで呼ばれ、どれも定義されていないものがありました。代金の対象は「納入物」、作り直しの対象は「納品物」、権利の対象は「制作物」と条ごとに違うため、何に対して代金を払うのかが一つに決まりません。契約書では、「本件サイト」「制作物(制作途中のものを含む)」「納品物(見積書等で納品の対象としたもの)」「素材」「仕様」のように言葉を定義し、全文でその言葉だけを使います。
また、制作範囲や支払条件を見積書に任せる契約書は多いのですが、見積書が契約の一部になると書いていなければ、見積書は参考資料にとどまります。見積書に書く事項を契約書に列挙し、見積書を発注者が記録の残る方法で承認したときに契約の一部になる、と定めておきます。「見積書に記載のない業務は、本業務に含まれない」という一文は、範囲の膨張を防ぐ、契約書の中で最も価値のある条項の一つです。支払条件を見積書に任せる場合も、見積書に書き漏らしたときのための「定めがないときは着手時に半額」のような原則を、契約書の側に残しておきます。
契約書、見積書、仕様書、メールやチャットでの合意のどれが優先するかも決めます。チャットでの確認を正式な連絡と位置づけると、何気ない一言が契約の変更として扱われかねません。契約の変更や解除は記録が残る方法に限り、細かな仕様の確認はチャットでもよい、と分けるのが実務的です。
サーバー・ドメイン・管理者権限の扱い
ホームページ制作の契約で見落とされやすいのが、サーバーとドメインの扱いです。制作者が自分の名義でサーバーやドメインを契約し、発注者に使わせている場合、契約が終わったときに、ドメインを発注者に移せるのか、費用は誰が負担するのかで争いになります。
- サーバー・ドメインは、原則として発注者の名義で契約してもらい、制作者は作業に必要な権限だけを受け取る形にすると、終了時の引渡しが簡単になります。
- 制作者の名義で取得する場合は、契約が終わったときに発注者へ移管すること、移管の費用、移管までの期間を決めます。
- ID・パスワードを預かる場合は、管理の方法、作業後の変更、漏えいした場合の責任を決めます。事務所の作成例では、IDやパスワードは預からず、発注者が発行した作業用の管理者権限で作業する形にしたものがあります。
- 問い合わせフォームを設置する場合、送信された内容を制作者のサーバーに保存するのか、発注者に転送するだけなのかを決め、保存しない設計なら、その旨を書いておきます。
契約書の型は、取引の続き方で選ぶ
| 取引の形 | 契約書の型 | 注意点 |
|---|---|---|
| 単発の制作だけ | 制作委託契約書+見積書 | 見積書を契約の一部にする条件を書く |
| 同じ相手から何度も受ける | 基本契約書+個別の発注書(見積書) | 基本契約と個別の発注書のどちらが優先するかを決める |
| 制作の後に保守も続ける | 制作と保守を別の契約にするか、同じ契約書の中で章を分ける | 制作は請負、保守は準委任として、解約・精算・責任をそれぞれ書く |
| 月額で制作と運用をまとめて提供する | 月額サービスの規約又は契約書 | 最低利用期間、中途解約の精算、終了時の引渡しを書く |
制作と保守を一つの契約書に入れながら、どちらの性質かを書き分けていない契約書もよく見かけます。書き分けがないと、制作の途中で解約されたときに請負のルール(注文者はいつでも損害を賠償して解除できる)と準委任のルール(各当事者がいつでも解除できる)のどちらが働くのかが争いになり、保守の作業にまで完成品の不具合の責任が及ぶように読まれることもあります。「制作業務」と「保守業務」を定義で分け、それぞれに解約・精算・責任の条文を置きます。
問い合わせフォームとアクセス解析の設定
問い合わせフォームの設置や、アクセス解析・タグの設定は、発注者のサイトの利用者の個人情報や、外部への情報の送信に関わる作業です。制作者が送信された内容を扱う場合は、発注者から個人データの取扱いを委託される立場になるため、安全管理の方法と、漏えいが起きた場合の報告の分担を契約で決めておきます。フォームの内容を制作者のサーバーに保存しない設計にするなら、その旨を書いておくと、責任の範囲がはっきりします。
著作権は、譲渡するか、許諾にとどめるかを選ぶ
完成したサイトのデザインや、制作者が書いたソースコード、作った画像の著作権は、契約で何も決めていなければ、作った制作者に残ります。発注者は通常、自由に修正・改変できることを期待しているので、譲渡するのか、利用を許諾するのかを、契約書で明確にします。
事務所の改訂例:著作権の条項(依頼者原案・相手方提示案からの改訂)
譲渡の範囲
27条・28条の権利を特に書かないと、譲渡した側に残っていると推定されます。移転の時期を全額の支払時にすると、代金の回収の担保にもなります。
制作者の立場での許諾
著作権を手元に残したい制作者の立場に合わせて、権利の移転ではなく、利用の許諾の形にしました。許諾の範囲を、サイトとしての利用に必要な範囲に絞っています。
Web制作会社が、エンドの顧客に納品するために外部のデザイナーに制作を頼む場合、デザイナーの既存の素材について、制作会社だけでなく、その顧客にも利用を認める(再許諾の)条項が必要になることがあります。著作権の条項の考え方は著作権の譲渡のページ、外注するときの条項は外注・フリーランス法のページで詳しく扱っています。
「納品」と「公開」と「公開後」を分けて書く
ホームページの制作では、制作したデータを渡すこと(納品)と、本番のサーバーに設置して誰でも見られる状態にすること(公開)が、別の作業になることがあります。公開の作業を制作者が行うのか、発注者が行うのか、公開の日程を誰が決めるのかを書いておかないと、「公開できていないから完成していない」として、報酬の支払が止まることがあります。
- 納品の方法(本番環境への設置まで含むか、データの引渡しだけか)
- 公開の作業の担当と、公開の日を決める者
- 発注者の都合で公開が遅れた場合でも、検収が完了していれば報酬を支払うこと
- 公開後に発注者が自分で更新・改変した部分は、制作者の責任の対象外とすること
- 公開後の一定期間の無償の対応(不具合の修補)と、それを超える保守は別の契約であること
公開後に発注者が自分で文章を差し替え、そのせいで表示が崩れた場合まで、無償で直す義務を負う契約は、作る側にとって重すぎます。責任の範囲を、制作者が納品した状態のものに限っておきます。
素材とプラグインのライセンス
ホームページには、有料・無料の写真素材、Webフォント、アイコン、テーマやプラグインなど、第三者が権利を持つものが多く含まれます。これらの多くは、制作者が「譲渡」できるものではなく、それぞれのライセンスの条件に従って使えるものです。契約書では、第三者の素材は譲渡の対象に含まれず、各ライセンスの条件に従うこと、ライセンスの更新が必要なもの(有料のプラグインなど)の費用を誰が負担するかを書いておきます。発注者が提供した写真やロゴについては、発注者が使う権利を持っていることを保証してもらいます。
成果を保証しない条項と、それを壊す一文
検索順位、問い合わせの数、売上といった成果は、制作者が約束できるものではありません。契約書には、成果を保証しない旨を必ず書きます。「基本的なSEOの設定」を業務に入れながら成果を保証しない旨がないと、営業の場面での「すぐ上位に表示されます」といった説明が、約束として扱われる方向に働きます。
事務所のレビューで重大と指摘したのが、成果を保証しない条項の直前に「問い合わせにつながることを目的とした提案と制作を行う」と、制作者の義務として書いた一文です。目的を約束にしてしまうと、成果が出なかったときに「注意を尽くさなかった」という主張の入口になります。目的の説明にとどめるか、削ります。
掲載する文章の内容にも注意が必要です。制作者が文章の作成を手伝う場合でも、商品の効果や料金、実績が景品表示法・医薬品医療機器等法・特定商取引法に適合しているかは、発注者が最終的に確認して承認する、と定めておきます。ただし、行政の処分を受ける者を契約で変えることはできないので、この条項の意味は、制作者が巻き込まれたときに発注者に負担を求める根拠にあります。対応するブラウザ・OS・画面幅を見積書に書き、すべての環境での表示は保証しないことも明記しておきます。公開前の確認用のサイトが検索エンジンに登録されないよう設定することも、作業の範囲に入れておきます。
ご相談の場面から:制作の契約書でよく受ける質問
見積書と契約書、どちらの内容が優先しますか。
決めていなければ争いになります。見積書が契約の一部になる条件(記録の残る方法での承認)と、契約書・見積書・仕様書・チャットでの合意の優先順位を契約書に書いておきます。見積書に書き漏らした項目の扱いも、契約書の側に定めておきます。
サーバーやドメインは、制作者の名義で取ってあげたほうが親切ですか。
どちらでもかまいませんが、終了したときに誰が何を引き取るのか(移管の手順と費用)を必ず書きます。制作者の名義で持つなら、発注者が使い続けたい場合の譲渡の条件(続けた年数に応じて無償にするなど)も決めておきます。
テンプレートを流用した契約書で、よく見つかる不備
- 制作範囲が「一式」:ページ数も機能も決まっておらず、追加の作業を求められても断る根拠がありません。
- 検収の期間がない:発注者が確認を先延ばしにすると、いつまでも完成とならず、報酬も受け取れません。
- 中途解約の精算が「出来高と実費」だけ:注文者が完成前に解除した場合、制作者は損害の賠償を受けられる立場にあります(民法641条)。精算の範囲を自ら狭めていないか確認します。
- 賠償の上限がない:サイトの不具合で発注者の売上が落ちたと主張されると、報酬の何倍もの請求を受けかねません。
- 物販やシステム開発の雛形の消し残り:「商品」「出荷」「プログラムの検証環境」など、ホームページ制作に関係のない言葉が残っています。
ご相談の場面から:短い契約書のほうが安全ですか
初めて取引する相手なので、契約書は短く簡単にしたいと思っています。
契約書は、締結のときではなく、トラブルが起きた日に使う書類です。その日の相手方は、法律の専門家に相談しているかもしれません。事務所の作成例では、制作者を守る条項は残したまま、言い回しを整理して条数を半分程度にまとめた例があります。短くするなら、削るのは条項ではなく言葉にします。
確認リスト:契約書に署名する前に
- 1制作範囲が、ページ数・機能・担当(原稿・写真)まで特定されているか
- 2修正の回数と、回数を超えた場合の費用が決まっているか
- 3検収の期間と、期間内に連絡がない場合の扱いが書かれているか
- 4報酬の支払が、工程ごとに分かれているか
- 5著作権を譲渡するなら、移転の時期が報酬の支払時になっているか
- 6サーバー・ドメインの名義と、終了時の扱いが決まっているか
- 7賠償に上限があるか
見積書と仕様書の作り方は見積書・仕様書のページ、制作中のトラブルへの備えはトラブル・キャンセルのページで扱っています。
よくあるご質問
ホームページ制作の契約書は、業務委託契約書でよいですか?
題名は業務委託契約書でかまいません。大切なのは中身で、完成したサイトを納品して報酬を受け取るなら請負の性質、更新や運用のように作業そのものを引き受けるなら準委任の性質を持ちます。制作と保守を一つにまとめる場合は、それぞれの部分を書き分けます。
ホームページ制作の報酬は、いつ受け取れますか?
請負の性質を持つ契約では、特約がなければ、報酬は引渡しと同時に支払われます(民法633条)。途中で止まった場合の負担を軽くするため、着手時・デザイン確定時・納品時のように分割して受け取る条件にしておくのがおすすめです。
ホームページの著作権は、制作者と発注者のどちらのものですか?
契約で決めていなければ、デザインやソースコードを作った制作者に残ります。発注者に譲渡するなら、著作権法27条・28条の権利を含めて譲渡する旨と、著作者人格権を行使しない旨を定めます。制作者に残す場合は、発注者が使える範囲を決めて利用を許諾します。
発注者から渡された写真を使ってトラブルになったら、制作者の責任ですか?
契約で、発注者が提供した素材については発注者が権利を持っていることを保証し、第三者から請求があった場合は発注者が対応すると定めておけば、制作者の責任を限定できます。何も決めていないと、制作者も責任を問われるおそれがあります。
ホームページ制作の契約書のテンプレートを使ってもよいですか?
使うこと自体はできますが、制作範囲が「一式」のまま、検収の期間や賠償の上限がないなど、作る側を守る条項が足りないことがよくあります。制作の流れと報酬の受け取り方に合わせて見直してから使います。
制作と保守を一つの契約書にまとめてもよいですか?
まとめることもできますが、制作(請負の性質)と保守(準委任の性質)を定義で分け、解約・精算・責任の条文をそれぞれに置きます。書き分けないと、途中の解約でどちらのルールが働くのか、保守の作業にまで完成品の不具合の責任が及ぶのかが争いになります。
SEOの成果を求められたら、どう書けばよいですか?
検索順位、アクセス数、問い合わせの数、売上は保証しないことを明記し、検索エンジンの仕様の変更による影響も責任の対象外とします。「成果につながる提案を行う」のように目的を制作者の義務として書く一文は、成果が出なかったときの主張の入口になるので避けます。
掲載する文章の法律違反は、制作者の責任になりますか?
商品の効果や料金などの表示が法律に適合しているかは、発注者が最終的に確認して承認する、と契約で定めておきます。ただし、行政の処分を受ける者を契約で変えることはできないので、この条項の意味は、制作者が巻き込まれたときに発注者に負担を求める根拠にあります。
公開後に発注者が自分で更新して表示が崩れたら、無償で直す義務はありますか?
契約で、責任を負うのは制作者が納品した状態のものに限り、発注者や第三者が改変した部分は対象外と定めておけば、無償で直す義務は負いません。公開後の対応は、保守の契約として別に料金を定めます。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引に必要な条項は、制作物の種類、納品の形、報酬の決め方、相手方が事業者か個人かによって異なります。事務所の改訂例・ご相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきたホームページ制作・保守の契約書、デザイン・ロゴ・イラストの制作契約、依頼規約、ライセンス契約、外注先との業務委託契約などを、個別の事業者が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月15日)。参考: e-Gov法令検索 / 文化庁 著作権 / 公正取引委員会 / 特許庁