このページの要点
- 元の契約で発注者に約束したこと(秘密保持・著作権の譲渡・納期・品質)を、外注先との契約にも同じ内容で入れる。
- 外注先が従業員を使用しない個人などの場合はフリーランス法の対象。業務の内容・報酬の額・支払期日などを書面や電子メールで明示する(3条)。
- 発注者が特定業務委託事業者(従業員を使用する事業者や、役員が2人以上の法人)なら、支払期日は給付を受領した日から60日以内のできる限り短い期間内で定める(同法4条)。
- 資本金又は従業員の数によっては、取適法(旧下請法)の情報成果物作成委託の規制もかかる。
元の契約と外注先との契約は、同じ内容でつながっていなければならない
元の発注者との契約で約束したことは、外注先が守ってくれなければ、自分が約束を破ったことになります。外注先との契約書を作るときは、元の契約書を横に置いて、次の項目を一つずつ照合します。
| 項目 | 元の契約での約束 | 外注先との契約に入れること |
|---|---|---|
| 秘密保持 | 発注者の情報を第三者に開示しない | 外注先にも同じ範囲・期間の秘密保持義務を課し、さらに先への再委託を制限する |
| 著作権 | 納品物の著作権を発注者に譲渡する | 外注先から自分へ、27条・28条の権利を含めて譲渡を受け、著作者人格権を行使しない旨を定める |
| 納期 | 発注者に◯月◯日までに納品する | 自分の確認と修正の時間を見込んだ、それより前の納期にする |
| 品質・仕様 | 仕様書に沿って制作する | 同じ仕様書を外注先にも示し、確認の基準をそろえる |
| 第三者の権利 | 第三者の権利を侵害しないことを保証する | 外注先にも同じ保証と、侵害があった場合の協力を求める |
| 実績公開 | 発注者の承諾なく実績として公開しない | 外注先にも同じ制限をかける |
特に注意したいのが著作権です。外注先が作った部分の著作権は、契約で何も決めていなければ、外注先に残ります。元の発注者に「著作権を譲渡する」と約束していても、自分が外注先から著作権を受け取っていなければ、その約束を果たすことができません。外注先との契約に、譲渡の対象、譲渡の時期(報酬の支払時など)、著作者人格権の不行使を、元の契約と同じかそれ以上の内容で入れます(著作権の条項の書き方は著作権の譲渡のページ)。
(成果物の権利)
1本件業務により生じた成果物に関する著作権(著作権法第27条及び第28条に規定する権利を含みます。)は、委託者が本件業務の報酬を支払った時に、受託者から委託者に移転します。
2受託者は、委託者及び委託者から権利を承継し、又は利用を許諾された者に対し、成果物について著作者人格権を行使しません。
3受託者は、委託者が成果物を委託者の顧客に納品し、当該顧客に前二項と同等の権利を移転し、又は利用を許諾することを、あらかじめ承諾します。
元の発注者(委託者の顧客)まで権利がつながるように、第3項を置いています。外注先の既存の素材を使う場合は、その素材を譲渡の対象から外し、利用の許諾の範囲を別に定めます。
外注先が個人なら、フリーランス法がかかる
フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、業務委託の相手方である事業者のうち、従業員を使用しない個人、又は一人の代表者以外に役員がなく従業員を使用しない法人を「特定受託事業者」とし、これに業務を委託する事業者に義務を課しています(同法2条1項)。Webサイトのデザインやコーディング、バナー、イラスト、原稿の作成は、情報成果物の作成の委託に当たります(同条3項1号・4項)。
発注する側の立場と、フリーランス法の主な義務
| 義務 | 発注者が従業員を使用しない個人・一人会社 | 従業員を使用する事業者・役員が2人以上の法人 | 条件 |
|---|---|---|---|
| 取引条件の明示(3条) | ○ 対象 | ○ 対象 | 業務委託をしたら直ちに |
| 支払期日の設定(4条) | × 対象外 | ○ 対象 | 受領した日から60日以内のできる限り短い期間内 |
| 禁止行為(5条) | × 対象外 | ○ 対象 | 1か月以上の業務委託(更新で1か月以上になる場合を含む) |
| 解除等の30日前の予告(16条) | × 対象外 | ○ 対象 | 6か月以上の継続的な業務委託 |
表は主な義務の概要です。従業員を使用する個人、又は役員が2人以上いるか従業員を使用する法人は、法律上「特定業務委託事業者」と呼ばれます(同法2条6項)。
取引条件の明示(3条)
業務を委託したときは、直ちに、給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面又は電子メールなどの電磁的方法で明示しなければなりません(フリーランス法3条1項)。内容が決められないことに正当な理由がある事項は、決まった後直ちに明示すれば足ります。チャットで「このバナーをお願いします、いつもの金額で」とだけ伝える発注は、この義務を果たしていない可能性があります。発注のたびに使える様式を用意しておくと、漏れが防げます。
| 委託する業務 | コーポレートサイトのトップページ・下層3ページのデザイン(PC・スマートフォン) |
|---|---|
| 給付の内容 | デザインデータ(指定の形式)一式。仕様は別紙のワイヤーフレームのとおり |
| 報酬の額 | ◯◯円(消費税別)。修正は2回まで含む。3回目以降は1回◯◯円 |
| 納期・納品方法 | ◯月◯日までに、共有フォルダへのアップロードにより納品 |
| 検査完了日 | 納品を受けた日から◯営業日以内 |
| 支払期日・方法 | 納品を受けた日から◯日以内に、指定口座へ振込(手数料は委託者負担) |
| 著作権 | 報酬の支払時に委託者へ移転(著作権法27条・28条の権利を含む)。著作者人格権は行使しない |
| 再委託 | 元委託者の名称:◯◯株式会社/元委託業務:Webサイト制作/元委託の支払期日:◯月◯日 |
最後の行は、元の発注者からの支払期日を基準に支払期日を定める特例を使う場合に記載します。
支払期日(4条)
特定業務委託事業者(従業員を使用する事業者や、役員が2人以上の法人)は、検査をするかどうかを問わず、給付を受領した日から起算して60日の期間内で、かつ、できる限り短い期間内で支払期日を定めなければなりません(同法4条1項)。支払期日を定めなかった場合は受領した日が、60日を超えて定めた場合は受領した日から60日を経過する日が、支払期日とみなされます(同条2項)。元の発注者から受けた仕事を再委託する場合は、再委託である旨や元の発注者の名称などを明示していれば、元の発注者からの支払期日から起算して30日以内で支払期日を定めることができます(同条3項)。
「検収が終わってから60日」ではなく「受領した日から60日」である点に注意が必要です。検収に時間がかかると、その分だけ支払までの余裕がなくなります。
禁止行為(5条)
1か月以上の業務委託では、外注先に責任がないのに、受領を拒むこと、報酬を減額すること、受領した後に引き取らせること、通常の対価より著しく低い報酬を不当に定めること、正当な理由なく指定する物の購入や役務の利用を強制することが禁止されます(同法5条1項)。さらに、経済上の利益を提供させること、外注先に責任がないのに給付の内容を変更させたりやり直させたりして外注先の利益を不当に害することも禁止されています(同条2項)。デザインの制作は情報成果物の作成の委託なので、受領の拒否と返品の禁止もかかります。
ご相談の場面から:元の発注者の都合で仕様が変わったとき
元の発注者の担当者が交代して、デザインの方向性が大きく変わりました。外注先にはすでにほぼ完成したデザインを出してもらっています。作り直しをお願いしてよいですか。
外注先に責任がない作り直しを、費用を負担せずに求めると、不当なやり直しに当たるおそれがあります。作り直しを依頼するなら、追加の作業として報酬を支払うことを前提に、内容と金額を改めて明示してください。元の発注者にも、仕様変更として追加の費用を求められるよう、元の契約の仕様変更の条項を確認しましょう(見積書と仕様書のページ)。
外注先との契約では、外注先が特定受託事業者に当たるかどうかを表明してもらい、従業員を雇うなどして変わった場合は通知してもらう条項を入れておくと、法律が適用されるかどうかの判断が安定します。事務所が作成した、制作会社がフリーランスに発注する基本契約では、個別の発注書を取引条件の明示の書面と兼ねる形にし、検査・完成の基準、無償の修正の回数、支払期日の欄を設けました。月末締め翌月末払いは運用上認められていますが、念のため、受領から60日を超える場合は支払日を繰り上げる条項も置いています。
秘密保持の契約で「第三者への開示は事前の承諾が必要」としながら、業務委託の契約では再委託を自由にしている、という食い違いも見かけます。これでは外注先に資料を渡せず、外注が使えなくなります。両方の契約の通り道をそろえておきます。
取適法(旧下請法)がかかる場合
令和8年1月1日から、下請代金支払遅延等防止法は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(取適法)になりました。Webサイトのデザインやイラストの作成を業として提供・請け負う事業者が、その作成を他の事業者に委託する場合は、「情報成果物作成委託」に当たります(取適法2条3項)。発注者と外注先の資本金又は常時使用する従業員の数によっては、この法律の規制がかかり、発注の内容の明示(4条)、受領した日から60日以内の支払期日(3条)、受領拒否・支払遅延・減額・返品・買いたたきなどの禁止(5条)が求められます。
フリーランス法と取適法の両方の対象になる取引もあります。外注先が個人か法人か、自社と外注先の規模はどうかを、取引を始めるときに確認しておきます。
ご相談の場面から:下請で受けるときの支払と働き方
制作会社の下請で受ける仕事の支払条件が、「月末締め翌々月払い」でした。問題はありますか。
発注者がフリーランス法や取適法の対象であれば、受領した日から60日を超える支払期日は問題になります。デザインやプログラムのような成果物の作成は、月ごとの締めを基準にできる特例の対象外とされるため、月末締め翌月末払いが基本です。条件の見直しを求める根拠になります。
発注者の事務所に常駐して作業するよう求められています。
常駐すること自体は禁止されていませんが、発注者があなたに日々の作業を直接指示し、勤務時間を管理するような働き方になると、契約の名前にかかわらず、実態として労働者(雇用)と判断される可能性があり、その場合はフリーランス法ではなく労働関係の法令の問題になります。指示は窓口となる担当者を通すこと、作業の時間や進め方は自分で決められることを、契約と運用で確認しておきます。
外注先のさらに先への再委託
外注先がさらに別の人に作業を頼む(再々委託)ことを認めるかどうかも、外注の契約で決めておきます。元の発注者との契約で再委託に承諾が必要とされているなら、外注先の再委託にも同じ承諾の手順を求めます。再委託を認める場合は、外注先が再委託先にも同じ秘密保持の義務を課し、再委託先の行為について外注先が責任を負うこと、著作権が自分まで確実に移るよう、再委託先からも権利を受け取ってもらうことを定めます。権利のバトンが途中で途切れると、元の発注者への約束を守れなくなります。
業務委託で仕事を受ける側として確認すること
反対に、制作会社から業務委託で仕事を受けるフリーランスのデザイナーは、フリーランス法で守られる側です。発注者には取引条件を明示する義務があるので、条件が口頭やチャットの一言だけなら、メールで明示してもらうよう求めることができます。受け取った明示の内容は、契約書と同じように保存しておきます。
確認リスト:業務委託で受けるとき
- 1業務の内容、報酬の額、支払期日が書面やメールで示されているか
- 2修正の回数と、回数を超えた場合の費用が決まっているか
- 3著作権を譲渡するのか、譲渡の時期はいつか、実績として公開できるか
- 4秘密保持の範囲と期間が、自分の仕事の仕方と合っているか(外注を使う予定があるなら再委託の可否)
- 5賠償の上限が定められているか(上限がないと、個人で無限の責任を負うことになる)
- 6継続的な取引で、契約を終了する場合の予告の期間が書かれているか
業務委託の契約に、日本国内で同じ種類の業務を行うこと自体を禁じる競業避止の条項が入っていることがあります。クリエイターの仕事を全面的に禁じる条項は、生業を奪うことになります。協議を踏まえた改訂で、「契約に関連して知り得た事業内容・取引先・顧客・ノウハウを利用して」行う場合に限定した例があります。発注者の顧客と直接取引することの禁止も、承認なく直接取引して損害を与えた場合に限る、と改めた例があります。
事務所の改訂例:外注先との契約(依頼者の下書きからの改訂)
支払期日
検収の完了を起点にすると、受領から60日を超えるおそれがあります。受領した日を起点にしました。
仕様の変更
外注先に責任のない変更を、報酬を変えずに一方的に求められる書き方は、禁止行為との関係で問題になります。
契約の終了
月によって「1か月前」は30日に満たないことがあります。6か月以上の継続的な業務委託なら、30日前の予告が必要です。
外注先に生成AIの使用を認めるかどうかも、外注先との契約で決めておく項目です(生成AIのページ)。元の発注者との契約の作り方はホームページ制作の契約書のページで扱っています。
よくあるご質問
フリーランスのデザイナーに外注するとき、契約書は必要ですか?
外注先が従業員を使用しない個人などであれば、フリーランス法により、業務の内容、報酬の額、支払期日などを書面又は電子メールなどで明示する義務があります。契約書を交わす形でも、発注書をメールで送る形でもかまいませんが、明示すべき事項が漏れないよう様式を用意しておきます。
外注先が作った部分の著作権は、誰のものですか?
契約で何も決めていなければ、作った外注先に残ります。元の発注者に著作権を譲渡すると約束しているなら、外注先からも27条・28条の権利を含めて譲渡を受け、著作者人格権を行使しない旨を定めておく必要があります。
外注先への支払は、元の発注者から入金されてからでもよいですか?
特定業務委託事業者(従業員を使用する事業者や、役員が2人以上の法人)は、原則として給付を受領した日から60日以内に支払期日を定める必要があります。再委託である旨や元の発注者の名称などを明示していれば、元の発注者からの支払期日から30日以内とする特例を使えます。「入金されたら支払う」という条件だけでは足りません。
デザインのやり直しを外注先に頼んでもよいですか?
外注先に責任がある不備の修正は求められます。外注先に責任がないのに、費用を負担せずに作り直させることは、1か月以上の業務委託では不当なやり直しとして禁止されるおそれがあります。追加の作業として、報酬と内容を改めて明示します。
取適法(旧下請法)は、Web制作の外注にもかかりますか?
Webサイトのデザインやイラストなどの作成を業として請け負う事業者が、その作成を他の事業者に委託する場合は、情報成果物作成委託に当たります。発注者と外注先の資本金又は常時使用する従業員の数によって、取適法の対象になるかが決まります。
外注先が、さらに別の人に作業を頼んでもよいですか?
外注の契約で認めるかどうかを決めます。元の発注者との契約で再委託に承諾が必要とされているなら、外注先の再委託にも同じ承諾を求め、再委託先からも著作権を受け取ってもらうことを定めます。
下請の仕事の支払が「月末締め翌々月払い」でした。
発注者がフリーランス法や取適法の対象であれば、受領した日から60日を超える支払期日は問題になります。デザインやプログラムのような成果物の作成では、月末締め翌月末払いが基本です。
業務委託の契約に、同業の仕事を一切してはいけないと書かれています。
クリエイターの仕事を全面的に禁じる条項は、生業を奪うことになります。「契約に関連して知り得た情報を利用して」行う場合に限るよう、範囲を限定する交渉ができます。
秘密保持契約で、外注先に資料を渡せないと言われました。
秘密保持契約で第三者への開示に事前の承諾を求めながら、業務委託の契約で再委託を自由にしていると、外注先に資料を渡せません。両方の契約で、外注先への開示ができる通り道をそろえておきます。
外注先が従業員を雇い始めたら、フリーランス法の扱いは変わりますか?
従業員を使用するようになると、特定受託事業者に当たらなくなり、フリーランス法の対象から外れることがあります。外注の契約で、特定受託事業者に当たるかどうかを表明してもらい、変わった場合は通知してもらう条項を入れておくと、扱いを判断しやすくなります。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引に必要な条項は、制作物の種類、納品の形、報酬の決め方、相手方が事業者か個人かによって異なります。事務所の改訂例・ご相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきたホームページ制作・保守の契約書、デザイン・ロゴ・イラストの制作契約、依頼規約、ライセンス契約、外注先との業務委託契約などを、個別の事業者が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月15日)。参考: e-Gov法令検索 / 文化庁 著作権 / 公正取引委員会 / 特許庁