ロゴ制作の契約と、著作権・商標の考え方

ロゴは、発注者が長く使い続け、商標として登録することもある制作物です。著作権だけでなく、商標とボツ案の扱いまで契約で決めます。

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文字を図案化しただけのロゴは、著作物と認められないことがあります。その場合、権利の譲渡を書いても、守られる範囲は商標登録に頼ることになります。

このページの要点

  • ロゴが著作物(思想又は感情を創作的に表現したもの)に当たるかは個別に判断され、文字のデザインなどは認められにくい(著作権法2条1項1号)。契約は著作物に当たらない場合も想定して書く。
  • 商標登録は発注者が自分の名前で出願するのが通常。制作者は、登録を妨げないこと、必要な協力をすることを約束する。
  • 採用されなかった案(ボツ案)の権利と、制作者が他の案件に使えるかを決める。
  • 他人の商標や著作物と似ていないことの調査の範囲を決め、保証の範囲を限定する。
ロゴは、発注者が名刺、看板、Webサイト、商品のパッケージに何年も使い続け、商標として登録することもある制作物です。それだけに、契約では著作権だけでなく、商標登録との関係、採用されなかった案の扱い、他人のロゴと似ていた場合の責任まで決めておきます。

ロゴは著作物になるか

著作権法が保護する著作物は、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」です(著作権法2条1項1号)。ロゴがこれに当たるかどうかは、ロゴごとに判断されます。絵やキャラクターを描いた図形のロゴは、美術の著作物として保護されやすい一方、社名やブランド名の文字をデザインしただけのロゴは、著作物と認められにくい傾向があります。

印刷用の書体について、最高裁判所は、従来の書体に比べて顕著な特徴を有するといった独創性を備え、かつ、それ自体が美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えていなければ、著作物に当たらないとしています(最高裁判所平成12年9月7日判決)。文字をもとにしたロゴは、この考え方の影響を受けるため、著作権で守られない可能性を前提に契約を考えておく必要があります。

ロゴの種類と、権利の守られ方の目安

ロゴの種類著作物になる可能性守る方法
絵・キャラクターを描いた図形○ 比較的高い著作権+商標登録
図形と文字の組合せ△ 図形の部分の創作性による著作権(図形部分)+商標登録
文字をデザインしただけのもの× 認められにくい主に商標登録

あくまで目安です。著作物に当たるかどうかは、個別のデザインごとに判断されます。

著作権と商標権は、別の権利

著作権は、創作した時点で自動的に生じ、他人がまねをして複製することを禁じる権利です。一方、商標権は、特許庁に出願して登録を受けることで生じ、指定した商品やサービスについて、同じか似た商標を他人が使うことを禁じる権利です。ロゴを事業の目印として守りたい発注者にとっては、商標登録が中心になります。

ここで制作者に関係するのが、商標法29条です。商標権者は、登録した商標の使用が、出願の日より前に生じた他人の著作権と抵触するときは、抵触する部分について、その使用をすることができません。つまり、制作者がロゴの著作権を持ったまま発注者が商標登録しても、発注者は制作者の著作権と抵触する範囲で使えなくなるおそれがあります。発注者が安心して商標登録して使えるよう、ロゴは著作権を譲渡するか、少なくとも商標としての使用を含めた広い利用を許諾し、制作者が登録に協力することを約束するのが一般的です。

(ロゴの権利と商標登録)

1本件ロゴに著作権が生じる場合、その著作権(著作権法第27条及び第28条に規定する権利を含みます。)は、発注者が本件の報酬の全額を支払った時に、受注者から発注者に移転します。受注者は、発注者に対し、本件ロゴについて著作者人格権を行使しません。

2本件ロゴに著作権が生じない場合であっても、受注者は、発注者が本件ロゴを使用し、商標登録出願をし、及び商標権を行使することについて、何らの権利を主張しません。

3受注者は、発注者が本件ロゴについて商標登録出願をする場合、発注者の求めに応じて、合理的な範囲で必要な協力をします。

第2項は、ロゴが著作物と認められなかった場合に備えた条項です。権利の有無にかかわらず、発注者の使用と商標登録を妨げないことを約束します。

許諾・商標・譲渡オプションの三層で設計する

事務所がレビューしたロゴ・名刺の制作委託契約書では、依頼者の原案は「著作権はデザイナーに帰属する」と明記していましたが、発注者がどの範囲で使えるのかが書かれておらず、黙示の許諾に頼る状態でした。修正版では、①事業の範囲内で、独占でなく譲渡もできない利用の許諾(複製・公衆送信・表示を含み、改変は明示がない限り含まない。許諾は報酬の支払の完了を条件に効力を生じる)、②禁止事項(商標登録、利用権の転売・再許諾、本質的な特徴を損なう改変。ただし通常の利用に伴う色やサイズの調整は可)、③追加の料金による著作権の譲渡オプション(27条・28条を含めて移転し、提案段階の案と不採用案は対象外)、④譲渡を受けた場合に限り発注者が自らの責任と費用で商標登録の出願ができる、という構成にしました。

許諾の範囲を「契約時に想定された事業活動の範囲」と限定すると、新しい店舗や商品の展開で許諾の範囲から外れることがあります。事業の拡大を見込むなら、範囲の書き方と、許諾が期間の定めなく続くのかどうかを明確にしておきます。

事業者からも個人からも依頼を受ける制作物は、免責や返金の条項の有効性が相手によって変わるため、事業者向けと個人向けの2本に分けて規約を作る方法もあります。

ロゴ制作の工程と、確認の区切りの例

  1. ヒアリング

    事業の内容、使う場面、好みの方向性を聞き取る

  2. ラフの提示

    複数の方向性のラフを示す

  3. 方向性の確認

    ラフをもとに、方向性の共通の認識を確認する(記録を残す)

  4. 本提案

    確認した方向性で、仕上げに近い案を示す

  5. 修正

    軽微な修正は回数の範囲内、方向性の変更は追加の費用

  6. 納品

    決めた形式のデータを渡し、権利の移転又は許諾の効力を生じさせる

採用されなかった案(ボツ案)の扱い

ロゴの制作では、複数の案を提案し、その中から一つを選んでもらうのが一般的です。採用されなかった案の権利がどうなるかを決めていないと、後で問題になります。

  • 採用されなかった案の著作権は、制作者に残すのが一般的です。譲渡の対象を「採用された案」に限定して書きます。
  • 制作者が、採用されなかった案を、ほかの案件で使ったり、作品として公開したりできるかを決めます。発注者の社名などを含む案は、そのままでは使えません。
  • 発注者が、採用しなかった案を参考に、ほかの制作者に作らせることを防ぎたいなら、その旨を定めます。
  • 採用された案の制作過程のデータ(ラフ・別バージョン)を納品するかどうかも決めておきます。

納品データの形式と範囲

ロゴは、Webサイト、印刷物、看板、刺繍など、さまざまな用途で使われます。どの形式のデータを、どの範囲で納品するのかを、契約で決めておきます。

ロゴの納品物の決め方の見本
基本のデータベクター形式(拡大しても劣化しない形式)のロゴデータ一式
バリエーションカラー・モノクロ・白抜き、横組み・縦組み
画像データWeb用の画像データ(背景透過)
使用規定余白、最小サイズ、色の指定をまとめた簡易な使用規定
含まないもの名刺・封筒などへの展開デザイン、使用フォントのライセンス

ロゴに市販のフォントを使った場合、そのフォントのライセンスの条件(ロゴへの使用や商標登録が認められているか)を確認しておきます。

手描きのロゴ・原画を渡す場合

手描きのロゴでは、データの納品に加えて、求めに応じて原画を渡すことがあります。原画という物を渡すなら、所有権がいつ移るか(代金の完済と引渡しの時など)、引渡しまでに破損した場合の危険をどちらが負うか、配送の費用、画面と実物の色の違いの扱いを決めておきます。標準の納品物を電子データとし、原画を渡すかどうか、渡す場合の費用を別に定めておくと、運用と条文がそろいます。

支払方法にカード決済を加えるときは、決済代行会社の名前やカードのブランドを条文に書かず、「制作者が指定する決済代行事業者」とすると、会社を変えても契約を直さずに済みます。

ネーミングとブランド開発

ネーミング、コンセプト、ロゴ、ブランドの使用ガイドラインまでまとめて受ける場合は、対象となる事業の定義を正確に書きます。定義がずれると、成果物を使える事業の範囲もずれます。ネーミングは、短い言葉なので著作物と認められることはまずなく、商標の問題になります。採用しなかった名前の案を、発注者が後で使った場合の扱いを決めておきます。

事務所の改訂例:ロゴ制作サービスの規約(依頼者との協議を踏まえた改訂)

本提案に進む条件

改訂前方向性の決定後、本提案を提示する。
改訂後ラフをもとに、方向性について双方の共通の認識が形成されたことを確認した後に、本提案を提示する。

「決定」したかどうかで争いにならないよう、確認する対象を明確にしました。

納品後のデータ

改訂前(定めなし)
改訂後最終データの引渡しをもって履行を完了し、受注者はその後のデータの継続的な保管の義務を負わない。データの管理は利用者の責任とする。

数年後の再送の依頼に応じる義務があるのかを明確にしました。

料金の表示

改訂前Webサイトに表示する金額(消費税を含む)とする。
改訂後Webサイトに表示する金額(消費税を含む総額)とし、税率が変更された場合は、支払時点の税率により計算した額とする。

税率が変わった場合の扱いを明確にしました。個人も依頼できるサービスでは、税込の総額で表示します。

展開デザインと、使用規定の追加の料金

ロゴが完成した後に、名刺、封筒、看板、Webサイトのヘッダーなどへの展開を頼まれることがよくあります。ロゴの制作の料金にどこまでの展開を含めるのかを、見積りの段階で決めておきます。

  • ロゴのバリエーション(カラー・モノクロ・横組み・縦組み)のうち、どこまでを基本の料金に含めるか
  • 名刺・封筒などの展開デザインは、1点ごとの料金とするか
  • 色の指定や余白、最小サイズを定める使用規定を作るか、作るならどの程度の分量か
  • 発注者が自分で展開した場合に、使用規定を守ってもらうか

使用規定を作っておくと、発注者が自分で展開する場合にもロゴの見え方がそろい、制作者の作品としての質も保てます。著作権を譲渡する場合でも、使用規定は発注者のブランドを守る資料として役立ちます。

他人のロゴと似ていた場合の責任

完成したロゴが、他人の登録商標や既存のロゴと似ていた場合、発注者が使用の差止めや損害賠償を求められるおそれがあります。制作者が「第三者の権利を一切侵害しないことを保証する」と約束していると、制作者の調査では見つけられなかった類似についてまで、全面的な責任を負うことになりかねません。

事務所の改訂例:類似と保証(相手方提示案からの改訂)

保証の範囲

改訂前受注者は、本件ロゴが第三者の知的財産権その他の権利を侵害しないことを保証する。
改訂後受注者は、本件ロゴを自ら創作したものであり、受注者の知る限り、第三者の著作権を侵害するものではないことを表明します。商標の類否の調査及び商標登録の可否の判断は、発注者が自らの責任で行うものとします。

商標の類否は、指定商品・役務の範囲などによって変わり、デザイナーが判断しきれるものではありません。保証の範囲を、自ら創作したことと、知る限りの著作権の非侵害に限りました。

責任の上限

改訂前(定めなし)
改訂後本件ロゴに関して受注者が負う損害賠償の額は、受注者の故意又は重大な過失による場合を除き、本件の報酬の額を上限とします。

ロゴの報酬に比べて、看板や印刷物の作り直しの費用は大きくなりがちです。上限を定めておきます。

ご相談の場面から:商標登録の相談

ご相談

お客様から、作ったロゴの商標登録も代わりにやってほしいと言われました。

事務所

他人の求めに応じ報酬を得て、商標登録出願の代理を業として行うことは、弁理士(弁理士法人)に限られています(弁理士法75条)。制作者としては、登録に必要なロゴのデータを提供し、出願に協力することを約束するにとどめ、出願そのものは発注者自身か専門家に依頼してもらいます。

著作権の譲渡の条項全体の書き方は著作権の譲渡のページ、見積書の作り方は見積書・仕様書のページ、生成AIを使ってロゴを作る場合の注意は生成AIのページで扱っています。

よくあるご質問

ロゴは著作権で守られますか?

ロゴごとに判断されます。絵やキャラクターを描いた図形のロゴは美術の著作物として保護されやすい一方、文字をデザインしただけのロゴは著作物と認められにくい傾向があります。著作権で守られない場合に備えて、商標登録で守ることも検討します。

ロゴの著作権を発注者に譲渡すべきですか?

発注者が長く使い、商標登録することも多いロゴは、著作権を譲渡するのが一般的です。制作者が著作権を持ったままだと、発注者が商標登録しても、制作者の著作権と抵触する範囲で使えなくなるおそれがあります(商標法29条)。

採用されなかったロゴ案は、ほかの案件で使えますか?

契約で、譲渡の対象を採用された案に限定していれば、採用されなかった案の著作権は制作者に残ります。ただし、発注者の社名などを含む案はそのままでは使えません。使えるかどうかを契約で決めておくと安心です。

作ったロゴが他社のロゴと似ていたら、制作者の責任ですか?

契約で第三者の権利を侵害しないことを全面的に保証していると、責任を問われる可能性が高くなります。保証の範囲を、自ら創作したことと知る限りの著作権の非侵害に限り、商標の調査は発注者が行うと定めておくのがおすすめです。

ロゴの商標登録を、デザイナーが代わりに行ってもよいですか?

他人の求めに応じ報酬を得て、商標登録出願の代理を業として行うことは、弁理士(弁理士法人)に限られています(弁理士法75条)。デザイナーは、登録に必要なデータの提供と出願への協力にとどめるのが安全です。

ロゴの著作権を渡さずに、商標登録だけ認めることはできますか?

できます。著作権を制作者に残したまま、商標としての使用・出願・権利行使を許諾し、制作者が将来にわたって権利を主張しない旨を定めます(商標法29条との関係で、許諾の範囲を明確にしておくことが大切です)。著作権を残す意味を重く見るなら、著作権の譲渡を受けた場合に限り出願できる、と整理する方法もあります。

ロゴの修正は、どこまで料金に含めればよいですか?

色味や線の太さ、余白、文字の間隔といった軽微な修正は料金に含め、コンセプトやモチーフの変更、新しい案の作成は追加の費用とする、と例を挙げて定めておくと、争いになりにくくなります。

納品したロゴのデータを、数年後に再送してほしいと言われました。

契約で、最終データの引渡しで履行を完了し、その後の保管の義務は負わないと定めておけば、再送に応じる義務はありません。保管している場合は、有償で対応すると定めておくこともできます。

名刺や看板への展開も、ロゴの料金に含まれますか?

契約や見積書で決めた範囲によります。ロゴのバリエーションと、名刺・封筒などの展開デザインのどこまでを基本の料金に含めるかを、見積りの段階で決めておきます。

ロゴに市販のフォントを使ってもよいですか?

使えますが、そのフォントのライセンスで、ロゴへの使用や商標登録が認められているかを確認します。認められていない場合は、文字の形を作り直すか、ロゴへの使用が認められたフォントを選びます。フォントのライセンスは譲渡の対象にならないことも、契約で示しておきます。

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