ホームページの保守契約と、月額制・制作費0円の制作契約

制作が終わった後も、更新・修正・サーバーの管理は続きます。保守契約は、何を月額に含め、何を含めないかを決める契約です。

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制作費を0円にして月額で回収する契約では、最低契約期間の前に解約されたときの精算と、解約後のサイトの扱いが、最も争いになります。

このページの要点

  • 保守の範囲(更新の回数・作業時間の上限・対応時間)と、範囲外の作業(新しいページ・機能の追加、デザインの変更など)を列挙する。
  • 制作費0円・月額制は、最低契約期間と、その前に解約した場合の精算の方法を書く。事業のためでなく個人として依頼した人との契約では、平均的な損害を超える違約金は無効になる(消費者契約法9条1項1号)。
  • 解約したときに、サイトのデータ、ドメイン、サーバーのアカウントを引き渡すのか、どの形で引き渡すのかを決める。
  • 第三者のリース会社が入るリース契約は、制作者との契約とは別の契約になる。制作者が月額で受け取る契約と仕組みを区別して説明する。
ホームページは、公開した日から古くなり始めます。文章や写真の更新、CMSやプラグインの更新、サーバーの管理、障害への対応。制作した後も続くこれらの作業を、月額で引き受けるのが保守契約です。最近は、制作費を0円や低額にして、月額の料金で回収する形も増えています。どちらの場合も、何を月額に含め、何を含めないかを決めるのが契約の中心です。

保守の範囲を決める

「保守一式」とだけ書いた契約では、発注者は何でも頼めると考え、制作者は最低限の作業しか想定していないということが起こります。保守に含める作業と含めない作業を、具体的に書き分けます。

保守の範囲の決め方の例
区分含める作業の例含めない作業の例(別料金)
更新月◯回までの文章・写真の差し替え(作業時間◯時間以内)新しいページの作成、デザインの変更
システムCMS・プラグインの更新、バックアップ新しい機能の追加、システムの移行
サーバー稼働の監視、障害時の初期対応サーバーやドメインの利用料、障害の原因が第三者にある場合の復旧
対応時間平日◯時〜◯時、連絡から◯営業日以内の着手休日・夜間の緊急対応
相談更新方法の質問への回答集客のコンサルティング、広告の運用

保守契約は、完成を約束するものではなく、決めた範囲の作業を注意深く行うことを約束する、準委任の性質を持つ契約です。障害が起きた場合も、制作者がすべての損害を負うわけではないことを明確にするため、「障害の原因が制作者の作業にない場合」の扱いと、賠償の上限を定めておきます。

「保守」「運用」は法律の言葉ではないので、定義がないと、発注者は「障害は起きない」「起きてもすぐに直る」と期待しがちです。作業ごとに水準を書き(バックアップの頻度と保存する世代、更新の頻度、障害時に初動を始める目安の時間)、目安は保証ではないこと、アップデートには不具合の危険が伴い結果を保証しないこと、復旧の成功は保証しないことを明記します。

サーバーやドメインの費用と管理の責任は発注者、と書いても、実際には制作者が管理画面を操作していると、責任の押し付け合いになります。カードの期限切れでサーバーが止まった、更新料の未払いでドメインが失効した、という事故はよく起こります。費用を負担する者と、実際に管理する者を分けて書き、支払の遅れで止まった場合の責任を決めておきます。

自動更新の契約では、更新を拒む予告の期間と契約の期間がかみ合っているかを確認します。1か月ごとに更新する契約で「2か月前までに通知」と書くと、運用できません。

制作費0円・月額制の契約

制作費を0円や低額にし、月額の料金に制作費の回収分を含める契約では、最低契約期間の前に解約された場合に、回収できなかった制作費をどう扱うかが最大の論点になります。

(最低利用期間と中途解約)

1本契約の最低利用期間は、公開日から◯か月とします。

2発注者は、最低利用期間の経過後は、解約を希望する月の◯日前までに受注者に通知することにより、本契約を解約できます。

3発注者が最低利用期間の経過前に本契約を解約する場合、発注者は、受注者に対し、制作費の未回収分として、別紙に定める計算方法により算出した額を支払います。

第3項の額は、残りの月額料金をすべて支払わせるのではなく、月額に含めていた制作費の回収分のうち未回収の部分を基準に算定すると、合理性を説明しやすくなります。

解約の際の違約金の額は、相手が誰かで考え方が変わります。発注者が事業のためではなく個人として依頼している場合は、解除に伴う違約金のうち平均的な損害の額を超える部分は無効です(消費者契約法9条1項1号)。事業者が自社のホームページを依頼する場合は消費者契約法は適用されず、違約金を定めることもできます(民法420条)が、制作費の回収という実態から大きく離れた額にすると、公序良俗に反するとして争われるおそれがあります。月額に含めた制作費の回収分を説明できる計算方法にしておきます。

月額制の契約で、事務所が依頼者と協議して改訂した例では、契約が終わるとサイトは制作者のサーバーから削除される仕組みを基本にしながら、終了後の保管期間内であれば、所定の費用で表示用のデータの複製を受け取れる(権利は移転せず、使用の許諾にとどめる)、一定の年数以上続けた場合はドメインとサーバーの契約の譲渡を無償にする、と定めました。長く使ってくれた顧客ほど、終了時の負担が軽くなる設計です。

料金を「当社のWebサイトに掲載する料金表のとおり」とだけ定めるのも注意が必要です。書き換えられるページに重要な条件を任せると、一方的に変更できるように見え、いつの料金で合意したのかを特定できません。版や日付で特定するか、契約書の側に金額を書いておきます。依頼者の原案で、締結の方法を特定の電子契約サービスの名前で固定していた条項も、サービスを乗り換えると使えなくなるため、「電子契約又は書面のいずれでも締結できる」と改めました。

解約したときの引渡し

保守契約や月額制の契約が終わったときに、サイトのデータ、ドメイン、サーバーのアカウントをどうするかは、必ず契約で決めておきます。何も決めていないと、「解約したらサイトが見られなくなった」「ドメインを渡してもらえない」というトラブルになります。

解約時の引渡しの決め方

対象引き渡す場合の決めること引き渡さない場合の決めること
サイトのデータ○ 引渡しの形(ファイル一式・リポジトリの移管)と費用× 引き渡さないこと、サイトの公開を終了する時期
ドメイン○ 移管の手続と費用、移管までの期間× 制作者の名義のまま失効させる場合の予告
サーバー△ 発注者の名義で契約していれば、権限の返還だけ- 制作者のサーバーから削除する時期
著作権△ 譲渡済みか、許諾の範囲が終了後も続くか- 終了後の利用を認めない場合の明示

月額制で制作費を回収している契約では、最低利用期間の前の解約の場合と後の解約の場合で、引渡しの条件を分けることもあります。

事務所の作成例では、保守を終えた後もサイトの公開は続けられるようにし、ソースコードはリポジトリで管理して、終了時にはリポジトリの移管かファイルの交付で無償で引き渡す、編集画面へのログインは終了後一定期間で停止する、という形にしたものがあります。更新の時期には案内を送り、返事がなければ保守だけを終了してサイトの公開は継続する、という定めも置きました。

契約の期間・更新・終了の予告

保守契約の期間は、1年ごとに更新する型と、1か月ごとに更新する型が多く見られます。どちらの場合も、更新しない場合の予告の期間、予告の方法(郵送かメールか、発信した時か届いた時か)、期間の途中で解約できるかを決めておきます。

  • 1年契約で「満了の2か月前までに申出がなければ自動更新」とし、別に「2か月前の予告で中途解約できる」とした依頼者の原案では、更新した後の中途解約との関係や、重大な違反があっても更新されてしまう点を整理し直しました。
  • 1か月ごとに更新する契約では、予告の期間が契約の期間より長くならないようにします。
  • 年額を一括で受け取る場合は、制作者の責めによって途中で終わったときに、提供していない期間の分を返すことを定めておきます。
  • 前もって分かっている休業期間がある場合は、事前に知らせて対応の方針を相談する、という一文を入れておくと、現実に合った契約になります。
  • 制作者が従業員を使用しない個人(又は一人会社)で、特定業務委託事業者から6か月以上の継続的な業務委託を受けている場合は、発注者が契約を解除し、又は更新しないときは、原則として30日前までの予告が必要です(フリーランス法16条)。

テンプレートを月額で貸し出す型

業種に合わせたサイトのテンプレートを、月額で貸し出すサービスもあります。この型では、納品物を引き渡すのではなく、利用する権利を貸していることを契約の冒頭で明確にし、テンプレートの権利は移転しないこと、契約が終わったら使用をやめてデータを削除することを定めます。

依頼者の原案では、店舗名や写真の差し替えは利用者の責任で行えるとしながら、禁止事項で「加工・改変・編集」を一律に禁じていて、同じ行為が一方で認められ他方で禁止される矛盾がありました。禁止事項の「編集」から差し替えの範囲を除き、デザインの構成など本質的な部分の改変だけを承諾制にしました。

事務所の改訂例:月額サポート契約(依頼者との協議を踏まえた改訂)

請求の方法

改訂前受注者は、毎月、支払日の前に請求書を発行する。
改訂後本契約は、いずれかから申出がない限り1か月ごとに自動で更新する。受注者は、入金を確認した後に領収書を発行する。

制作者の事務の負担を減らし、実際の運用に合わせました。

SEOの表現

改訂前受注者は、SEOの内部対策(metaタグの調整等)を実施する。
改訂後受注者は、アクセスデータ等にもとづく改善の提案と、コンテンツの配置等の調整を支援する。

成果を約束するように読める表現を避け、支援の範囲に限りました。

既存のサイト

改訂前(保守契約の前に制作したサイトの権利について定めなし)
改訂後本契約の締結前に納品したWebサイトは本契約の対象外とする。当該サイトの著作権は譲渡しておらず受注者に留保し、発注者は自らの業務の目的の範囲で非独占的に利用できる。第三者への譲渡・改変・再配布は受注者の承諾を要する。

制作の時に決めていなかった権利の扱いを、保守契約の特約で後から整理しました。

障害が起きたときの責任と、保守料の上限

保守の範囲内で障害が起きた場合でも、制作者が負う責任には上限を定めておきます。月額の保守料は制作費に比べて低いことが多く、障害による発注者の売上の損失まで賠償する前提では、保守を引き受けられません。賠償の上限を「直近の一定か月分の保守料の額」などと定め、故意又は重大な過失の場合は上限を適用しない、という書き方が一般的です。上限があまりに低いと、制限的に解釈される余地があるので、保守の内容と料金に見合った額にします。

対応時間外の緊急の対応、休日や夜間の作業は、保守料に含めない作業として別料金にしておきます。「障害時は即時対応」と書いてしまうと、深夜の連絡にも対応する義務を負うように読まれます。初動を始める目安の時間を書き、目安であって保証ではないことをあわせて書きます。

リース契約との違い

ホームページの制作を、リース会社との契約で月額払いにする仕組みもあります。この場合、発注者が月額を支払う相手はリース会社で、制作者との契約とは別の契約になります。リース契約は、原則として途中で解約できない形がとられることが多く、内容を十分に理解しないまま契約したとして、トラブルになることがあります。

制作者が自ら月額で受け取る契約と、リース会社が入る契約は、仕組みも解約の条件もまったく違います。どちらの形なのか、途中でやめたらどうなるのかを、契約の前に発注者に分かるように説明することが、後のトラブルを防ぎます。

ご相談の場面から:月額制の解約

ご相談

月額制でホームページを作ったお客様が、半年で解約したいと言っています。残りの期間の月額を全部請求してよいですか。

事務所

契約書の最低利用期間と中途解約の条項を確認しましょう。残りの期間の月額をすべて請求する定めは、月額に保守やサーバーの費用など、解約すれば発生しない費用まで含まれているため、実際の損害を超えていると争われやすくなります。月額に含めた制作費の回収分のうち未回収の部分を基準にした計算方法にしておくと、説明がつきやすくなります。

事務所の改訂例:保守契約(依頼者原案からの改訂)

保守の範囲

改訂前受注者は、本件Webサイトの保守業務を行う。
改訂後受注者は、別紙に定める範囲の保守業務(月◯回までの更新作業、CMS及びプラグインの更新、月1回のバックアップ)を行います。別紙に定めのない作業は、別途見積りのうえ有償で行います。

「保守業務」とだけでは範囲が決まりません。範囲を別紙で特定し、範囲外の作業を有償としました。

連絡がとれない場合

改訂前(定めなし)
改訂後発注者と◯か月以上連絡がとれない場合、受注者は、本契約を解約できます。この場合、受注者は、解約日以後の期間に対応する受領済みの保守料を返還し、サイトの公開の継続に必要な引継ぎに努めます。

連絡がとれないまま保守料だけが続く状態を解消するための定めです。受領済みの保守料の扱いも決めました。

制作の契約についてはホームページ制作の契約書のページ、キャンセルの精算の考え方はトラブル・キャンセルのページ、著作権の扱いは著作権の譲渡のページで扱っています。

よくあるご質問

ホームページの保守契約には、何を書けばよいですか?

保守に含める作業(更新の回数・作業時間、システムの更新、バックアップ、対応時間)と、含めない作業(新しいページや機能の追加など)を書き分けます。障害の原因が制作者の作業にない場合の扱いと、賠償の上限も定めておきます。

制作費0円・月額制のホームページは、途中解約されたらどうなりますか?

契約書に最低利用期間と中途解約の精算の方法を定めておきます。月額に含めた制作費の回収分のうち未回収の部分を基準にすると、合理的な精算として説明しやすくなります。個人として依頼した人との契約では、平均的な損害を超える違約金は無効になります。

解約したお客様に、サイトのデータを渡さなければなりませんか?

契約で決めた内容によります。何も決めていないと争いになるので、データ・ドメイン・サーバーのアカウントを引き渡すかどうか、引き渡す場合の形と費用を、契約の時点で決めておきます。

ホームページのリース契約とは何ですか?

ホームページの制作費などを、リース会社との契約で月額払いにする仕組みです。発注者が支払う相手はリース会社で、制作者との契約とは別の契約になります。原則として途中で解約できない形が多いため、契約の前に仕組みと解約の条件を分かりやすく説明することが大切です。

保守契約は、請負ですか準委任ですか?

保守は、完成を約束するものではなく、決めた範囲の作業を注意深く行うことを約束するものなので、準委任の性質を持つのが通常です。制作と保守を一つの契約書にまとめる場合は、それぞれの部分を書き分けます。

保守契約に「障害時は即時対応」と書いてもよいですか?

そう書くと、夜間や休日の連絡にも直ちに対応する義務を負うように読まれます。初動を始める目安の時間と対応時間を書き、目安であって保証ではないこと、復旧の成功は保証しないことをあわせて書きます。

サーバーの更新料の未払いでサイトが止まったら、制作者の責任ですか?

費用を負担するのが発注者で、支払が遅れたことが原因であれば、契約でその旨を定めておくことで制作者の責任を限定できます。費用を負担する者と、実際に管理画面を操作する者を分けて書いておきます。

月額制の料金を、Webサイトの料金表で定めてもよいですか?

書き換えられるページに料金を任せると、一方的に変更できるように見え、いつの料金で合意したのかを特定できません。料金表の版や日付で特定するか、契約書に金額を書いておきます。

保守の賠償の上限は、どのくらいにすればよいですか?

直近の一定か月分の保守料の額などを上限とし、故意又は重大な過失の場合は上限を適用しない、という書き方が一般的です。上限が低すぎると制限的に解釈される余地があるので、保守の内容と料金に見合った額にします。

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