ライター・コピーライター・ゴーストライターの執筆委託契約書

文章の仕事は、数え方、ボツ、直し、出所、名前を決めておかないと、書いた分より報酬が目減りします。書き手の側から、契約書で決めることを整理します。

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このページの要点

  • 原稿料の単位を一つに決め、ボツや中止は構成案、初稿、校了などの段階別の割合で精算する。
  • 修正は、書き手の誤り、表現の調整、構成の変更、新情報の追加に分け、方針の変更は有償の書き直しとする。
  • 書き手の保証は自分で作った部分に絞り、発注者が渡した素材と指示の責任は発注者が負う。コピペチェックの数値だけで合否を決めない。
  • 署名の有無、人格権の不行使の範囲、引き受けない原稿、実績の公開を、一つずつ契約書に書いておく。
ライター・コピーライター・ゴーストライターの執筆委託契約は、「何を一つと数えるか」「採用されなかった原稿に報酬が出るか」「どこから先を有償の直しにするか」「他人の文章が混ざったときの責任」「名前を出すか出さないか」の五点を書けば、争いの大半を先に防げます。これに「書いた原稿を実績として見せられるか」を加えた六点が、文章を書く仕事の契約書の骨格です。

結論:執筆委託の契約は「単位・ボツ・直し・出所・名前」の五点で決まる

文章の仕事は、出来の良し悪しが読む人の感じ方に左右されます。そのため、書き手が一所懸命に書いた原稿ほど、「思っていたものと違う」の一言で報酬が消えたり、直しが終わらなくなったりします。ここでは、記事を書くライター、広告や商品の言葉を考えるコピーライター、依頼者の名前で世に出る文章を書くゴーストライターを、仕事を受ける側の立場から整理します。仕事を受ける前に書面にしておく六点は、次のとおりです。

  • 単位:原稿料の基準を、文字数・本数・案の数・月額のどれにするか。文字数なら何を一文字と数えるか。
  • ボツ:採用されなかった原稿や案に報酬が出るのか。無償の試し書きの扱いも含みます。
  • 直し:修正を何回まで無償とし、どこからを有償の書き直しとするか。
  • 出所:他人の文章が混ざったときの責任の分け方。コピペチェックの手順を含みます。
  • 名前:署名を入れるのか、無記名か、依頼者の名前で出すのか。
  • 実績:書いた原稿を、自分の実績として見せてよいか。

著作権を依頼者に移す条項の一般論は著作権の譲渡契約書と著作者人格権の不行使のページ、修正・検収・途中解約の精算の一般論は制作のトラブルとキャンセルのページ、見積書と仕様書は制作の見積書・発注書と仕様書のページ、生成AIの取り決めは制作での生成AIの使用と契約のページで扱っています。このページは、文章を書く仕事に固有の論点に絞ります。

ライター・コピーライター・ゴーストライターで、契約の組み立てはどう違うか

三つの仕事は、報酬の発生する単位と、トラブルの出る場所が違います。同じ雛形で三つを引き受けると、合わない条項が残ります。

仕事の種類ごとに、契約書で決めること

記事ライター

記事の納品は請負に近く、取材・投稿は準委任に近い

  • 文字数の数え方と、指定字数に対する許容の幅
  • 構成案・取材・校了のどこまでが報酬に含まれるか
  • 掲載されなかった原稿の報酬

コピーライター

案を出す作業と、採用された言葉の権利

  • 一度に出す案の数と、追加の案の料金
  • 採用の判断者と、採用されたときの料金
  • 不採用案を依頼者が使ってよいか

ゴーストライター

依頼者の名前で出る文章

  • 氏名を表示しない約束と、加筆・改変の範囲
  • 聞き書きで得た内容と、文章の権利の整理
  • 引き受けない原稿の類型

記事を書いて納めるのは、仕事の完成を約束する請負(民法632条)に近い性質を持ち、報酬は引渡しと同時に支払うのが原則です(同法633条)。取材への同行や編集の進行管理のように、完成ではなく作業そのものを引き受けるものは、準委任(同法656条)に近くなります。準委任では、特約がなければ報酬を請求できないため(同法648条1項)、有償で引き受けるなら報酬の定めが欠かせません。この区別はボツの場面で効きます。請負では、完成前に注文者が解除でき(同法641条)、すでにした仕事の可分な部分で注文者が利益を受けるときは、その割合に応じて報酬を請求できます(同法634条2号)。準委任では、履行の中途で終了したとき、すでにした履行の割合に応じて請求できます(同法648条3項2号)。

文章の作成が含まれるのかどうかが書かれていない契約書も、実務ではよく見られます。ランディングページの制作では、構成案、文案(ヘッドコピー、本文、訴求文)、簡易なデザイン、初稿、修正、納品までを工程として並べておく例があります。反対に、デザインや運用の契約書が「文章の作成は含まない」「投稿記事の代筆は含まない」と明記する例もあります。自分の契約が文章をどこまで引き受けるのかを、まず一文で書きます。相手が従業員を使う事業者などで書き手が個人の場合は、フリーランス法の対象になり得ます。原稿は情報成果物にあたり(同法2条3項1号・4項3号)、業務委託事業者には、給付の内容、報酬の額、支払期日などを書面又は電磁的方法で明示する義務があります(同法3条)。詳しくは外注・再委託とフリーランス法のページにあります。

原稿料はどう算定し、ボツ原稿・不採用の案には報酬を払うのか

結論として、報酬の単位を一つに決め、その単位が「どの段階で確定するか」まで書いておけば、ボツの争いはほとんど防げます。報酬を「採用されたときだけ」にすると、採用するかどうかが発注者の判断だけで決まり、書き手の負担が大きくなります。成果に連動する報酬にするなら、数字の出所が発注者の管理画面にある以上、確認できる権限と取得時点の記録、最低保証を契約書に書いておきます。

計算例1:文字数の数え方で、同じ原稿の報酬が変わる

指定が4,000字、許容の幅が前後1割(3,600字から4,400字)、単価が1文字2円という仮の条件で比べます。

納品した字数と報酬の計算例
納品した字数固定方式(指定字数×単価)実数方式(納品字数×単価)
3,700字(範囲内)4,000字×2円=8,000円3,700字×2円=7,400円
4,300字(範囲内)4,000字×2円=8,000円4,300字×2円=8,600円
4,700字(範囲外)8,000円(事前の承諾がなければ超過分は対象外)承諾があれば4,700字×2円=9,400円

見出しや引用を数えるか、範囲外をどう扱うかで、金額は動きます。数える範囲、許容の幅、超過分の扱いを書いておきます。

ボツ原稿は、四つのパターンに分けて考える

ボツになる理由と、報酬の考え方
パターン起きること報酬の考え方
発注者の方針変更・企画中止書き手に落ち度はないが、原稿が使われない中止時点までの作業の割合で支払う。民法634条2号・648条3項2号が根拠になるが、割合は契約書で定めておく
品質不足による不合格仕様書に適合せず、直しても改善しない合格基準を事前に書く。基準を満たせなかった分は、書き手の負担になり得る
複数案の提出(コンペ型)複数の書き手が案を出し、一つだけが選ばれる案出しに基本料があるのか、採用時だけ払うのかを明記する
無償の試し書き本契約の前にサンプル原稿を求められる有償にするか、無償なら権利は書き手に残し、不採用なら使えないと書く

最も見落とされやすいのが試し書きです。契約を結ぶ前に作った試作品や下書きの著作権が、報酬の有無や契約の成否にかかわらず、作った時点で発注者に移り、書き手は実績としても使えない、という趣旨の条項が置かれることがあります。無償で書いた原稿が、そのまま発注者の資産になります。

計算例2:企画の中止を、段階に応じて精算する

1本の報酬を20,000円(仮)とし、「構成案の提出で30%、初稿の提出で70%、校了で100%」と決めておく場合です。構成案を出した後の中止は6,000円(20,000円×30%)、初稿を出した後の中止は14,000円(同×70%)、校了後に掲載を取りやめても20,000円です。割合を決めておけば、民法634条の「注文者が受ける利益の割合」をめぐる話し合いを避けられます。依頼者が事業のためでなく個人として依頼する場合(自分史など)は、解除に伴う違約金のうち、同種の契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分が無効になります(消費者契約法9条1項1号)。

コピーライターは、案出しの基本料と採用料の二段にします。10案までの基本料30,000円、追加5案ごとに10,000円、採用料1本15,000円(仮)なら、15案を出して2案が採用されたときは、30,000円+10,000円+15,000円×2=70,000円です。

原稿料・不採用・試し書きの定め(例)

1乙の報酬は、別表の単価に、別表の段階の割合を乗じた額とする。「校了」とは、乙が最終稿を提出し、甲が書面又は電子メールで公開に進むことを通知した時をいう。

2甲の都合で校了の前に執筆を中止するときは、甲は、中止の時点で到達している段階の割合により算定した報酬を支払う。

3甲が契約の締結前の試し書きを求めるときは、別に定める料金を支払う。支払がないときは、試し書きに関する権利は乙に帰属し、甲は利用しない。

4甲が採用した原稿の著作権は、報酬の全額の支払時に甲に移転する。採用しなかった原稿及び案の権利は乙に留保し、甲が利用するときは、乙の承諾と別に定める利用料を要する。

不採用の原稿に手を加えて使うことは、書き手の複製権・翻案権(著作権法21条・27条)に関わり得ます。移転を採用原稿に限り、時期を支払時にしています。

修正は何回まで無償か:文章の仕事で「修正」と「書き直し」を分ける

結論として、文章の仕事では、直しの依頼を内容で四つに分け、扱いを書いておきます。回数だけを書いても、「この指示は1回に数えるのか」「方針の変更は修正なのか」という争いが残るからです。

文章の直しを四つに分ける
区分具体例扱い
書き手の誤り誤字脱字、書き手が調べた事実の誤り、表記ルールの違反無償。回数に数えない
表現の調整言い回し、語順、トーンの微調整回数に数える。上限までは無償
構成・方針の変更読者の想定の変更、結論の差し替え、章立ての変更追加の依頼として見積りを出す
新しい情報の追加後から届いた資料や、監修者の意見の反映追加の依頼とし、納期も見直す

判断が分かれるのは、表現の調整と構成・方針の変更の境目です。初稿の後に読者の想定そのものが変わり、実質的に別の原稿を書き直す場面では、書き手が「修正の範囲」と受け止めて対応し続けると、報酬が変わらないまま作業だけが増えます。数え方は、発注者がまとめて示した指示を1回とし、小分けの指示はそれぞれ1回と数えます。窓口は発注者の担当者一名とし、取引先や上司から直接届いた意見は、担当者が整理したものだけを指示として扱います。第三者の意向による変更は追加の作業とし、納品後の修正は一定の日数以内に限ります。

計算例:単価1文字2円(仮)、4,000字の原稿で、初稿の後に読者の想定が変わり、2,400字を書き直すことになったとします。「構成・方針の変更は追加の依頼」と書いてあれば、2,400字×2円=4,800円を追加で請求できます。書いていなければ、無償の修正の1回と受け止められるおそれがあり、ほぼ新しい原稿を無報酬で書くことになりかねません。1か月以上の取引で発注者が特定業務委託事業者に当たる場合、書き手の責めに帰すべき事由がないのに給付の内容を変更させ、又は受領後にやり直させることは禁止されています(フリーランス法5条2項2号)。ただ、回数の上限と追加の費用は契約書で決めておく必要があります。

修正に関する定めの例

1甲は、乙が初稿を提出した後、別表の回数(初稿後2回、納品後1回)を限度として、乙に無償で修正を求めることができる。甲の担当者がまとめて一度に示した指示を1回と数える。誤字、脱字その他乙の責めに帰すべき誤りの訂正は、回数に数えない。

2読者の想定、構成、結論その他の当初の方向性の変更、甲が提供しなかった資料の追加に伴う書き直し、甲の取引先その他の第三者の意向による変更は、修正に含まれない。乙は、甲の事前の承諾を得て、乙の見積りに従い有償で対応する。

3納品後の修正の依頼は、納品の日から○日以内に限る。

コピペチェックと引用:書き手が保証する範囲をどこまでにするか

結論として、「第三者の権利を侵害しないことを保証し、紛争は乙の責任と負担で解決する」という全面的な保証は避け、書き手が自分で作った部分と、発注者が渡した素材や指示とを分けて責任を分担します。他人の文章を無断で写した原稿を納めないのは書き手の基本の義務ですが、発注者が指定した資料や画像に起因する紛争まで、全額を負う必要はありません。

他人の文章を自分の原稿の中で使うときの基本は引用です。公表された著作物は、公正な慣行に合致し、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内であれば、引用して利用できます(著作権法32条1項)。本文と引用部分を区別し、出典を示し、自分の文章が主になる形が実務の基本です。範囲を超えると、複製(同法21条)や公衆送信(同法23条)の侵害になり得ます。事実やデータそのものは、思想又は感情を創作的に表現したものではなく、著作物ではありません(同法2条1項1号)。事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道も、言語の著作物に当たりません(同法10条2項)。保護されるのは、事実をどう文章にしたかという表現の部分で、どこまでが事実かは原稿ごとに判断が分かれます。契約では、書き手が自分の言葉で書くことを前提にします。

「この記事を元に書き直して」という指示の落とし穴

発注者が既存の記事を渡し、「これを元に書き直して」と指示する場面があります。文章を維持したまま言い換えれば、元の記事の翻案(著作権法27条)にあたる可能性があります。元の記事の権利を発注者が持っていないとき、公開後に権利者から書き手と発注者の双方に請求が届くおそれがあります。民法には、注文者の供した材料や指図によって生じた品質上の不適合は、請負人が不適当だと知りながら告げなかった場合を除き、請負人の責任にならないとする定めがあります(民法636条)。権利侵害の分担を直接定めた規定ではありませんが、同じ考え方で、素材と指示に起因する侵害は発注者が責任を負い、書き手が不適当だと気づいたときは知らせる、と書いておきます。

コピペチェックのツールを、契約の中でどう扱うか

他の文章との一致を調べるツールは、一致する箇所を示すだけで、侵害かどうかを判断しません。引用の範囲内の一致や、法令の条文、定型的な挨拶、固有名詞も数値に含まれることがあります。「数値が何%以下」を合格基準にすると、基準を満たすための不自然な言い換えを重ねる本末転倒になりかねません。ツールを使うなら、次の手順を決めておきます。

コピペチェックの手順を決める

  1. 納品前の自己チェック

    書き手が、使ったツールとチェックした日を記録する

  2. 発注者のチェック

    ツール、設定、除外する箇所(引用、定型文、法令の条文、固有名詞)を、先に書面で示す

  3. 指摘と確認

    一致の箇所と出典を添えてまとめて指摘する。書き手は、引用として扱うか書き直すかを期限内に回答する

  4. 再チェックと費用

    再チェックの回数と費用の負担を決める。指摘が誤りだったときの費用は発注者が負う

生成AIの下書きや調査への使用も、出所の問題です。契約書には、生成AIを使った成果物の品質、正確性、第三者の権利侵害の有無を、すべて書き手の責任で保証させる定めが置かれることがあります。書き手の側では、保証を「知る限り」とし、使用の有無と範囲を知らせることを義務の限度とします(詳細は生成AIの使用と契約のページ)。コピーライターには、短い言葉が既存の広告や商品名と似るという固有の問題もあります。書き手が行うのは、一般の検索で同一の言葉が見つからないかの確認までとし、商標の調査と広告表現の法令上の審査は業務に含まれない、と明記します。

権利侵害に関する保証と分担の定め(例)

1乙は、乙が自ら作成した原稿が、乙の知る限り、第三者の著作権その他の権利を侵害しないことを保証する。

2甲が提供し、又は指定した資料、画像、元となる記事その他の素材及び指示に起因する権利の侵害は、甲が責任を負い、自己の責任と費用で対応する。乙は、それらが第三者の権利を侵害するおそれがあることに気づいたときは、甲に知らせる。

3一致を調べるツールの数値は、納品の合格基準としない。乙の業務には、商標その他の権利の登録の調査及び広告表現の法令上の審査を含まない。

署名・ゴーストライティング・実績公開:名前の扱いを先に決める

結論として、署名の有無は書き手の権利である一方、無記名にして依頼者の名前で出すことも契約で決められます。問題は、無記名にした後に残る三つ、つまり、依頼者がどこまで加筆や改変をしてよいか、書き手が実績として何を示せるか、内容に問題があったときの責任を誰が負うか、が決まっていないことです。

著作者は、著作物を公衆に提供するときに、実名若しくは変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表示しないこととする権利を持ちます(著作権法19条1項)。意に反する改変を受けない同一性保持権(同法20条1項)とあわせて、著作者人格権と呼ばれ、譲渡できません(同法59条)。そのため、依頼者の名前で出すゴーストライティングでは、権利を譲るのではなく、書き手が権利を「行使しない」と約束します。ただし、範囲を限定せずに「一切行使しない」と書くと、書き手の名誉を傷つける改変まで受け入れることになります。「本件の目的の範囲内」に限り、依頼者が大きく書き換えるときは事前に知らせる、と書く形が考えられます。

聞き書きでは、依頼者の語った内容と、書き手が整えた文章の両方が関わります。二人以上が共同して創作し、各人の寄与を分離して利用できないものは共同著作物にあたり(同法2条1項12号)、共有著作権は全員の合意がなければ行使できません(同法65条2項)。文章の権利の帰属と、依頼者の語りや資料の扱いは、分けて書きます。

支援型か代筆型か、引き受けない原稿は何か

出版や文章の指導を支援するサービスでは、「執筆の支援」と書かれていても、書き手が文章を書くのか、依頼者が自分で書くのを助けるだけなのか、読み取れないことがあります。「本契約は代筆を含む(含まない)」と一文で明記します。あわせて、ゴーストライターが後から巻き込まれないよう、引き受けない類型も列挙します。

  • 依頼者の実際の経歴・資格・実績と異なる内容の文章(根拠を示せない数字や、ない肩書きを含む文章)
  • 他の消費者の名義で投稿する口コミ、体験談、レビューの代筆。事業者の依頼で書かれたことを隠した投稿は、広告であることを隠した表示として、景品表示法に基づくステルスマーケティングの規制や、投稿先の規約に触れるおそれがあります
  • 効能・効果・安全性を、根拠資料なしに述べる文章
  • 本人が自分で書いたことが条件の提出物や応募作品

実績として公開できるか

無記名の原稿は、実績として示しにくくなります。選択肢は三つです。依頼者の同意を得て、業種、媒体の種類、字数、本数などの匿名化した形で示す。原稿が一般に公開された後に限って示す。実績の公開を禁止する代わりに、報酬を上乗せする。実績の条項は、書き方で矛盾が生じます。「匿名化した形で掲載でき、依頼者はあらかじめ同意する」と書きながら、別の項で「掲載には依頼者の事前の同意を得る」と書くと、同意済みなのか都度の同意が要るのか分かりません。包括的に認めるのか、都度にするのかを一つに決めます。成果物への言及を禁じる条項や秘密保持の条項があるときは、実績の公開を、その例外として明記します。

名前と実績に関する定めの例

1乙は、本件の原稿を甲の名義で公表することに同意し、本件の目的の範囲内で、著作者名の表示を求めず、甲による加筆、削除その他の改変(内容を大きく変更するときは、事前に乙に通知する)について、著作者人格権を行使しない。

2本契約には、乙が文章を作成する業務を含む。乙は、甲の経歴等について甲が資料で示せない内容を含む文章、甲以外の者の名義で投稿する口コミ、体験談、レビューの作成を引き受けない。

3乙は、本件の原稿が一般に公開された後は、甲及び甲の取引先が特定されない形で、業種、媒体の種類、字数、本数を、自己の制作実績として示すことができる。この場合、甲の都度の同意を要せず、秘密保持の条項の例外とする。

よくある失敗と直し方、ヒヤリングで確認すること

よくある失敗と直し方

書き方の例(一般的な例) 執筆委託の契約書

無償の試し書き

よくある書き方契約の締結前に乙が作成した試作品、ドラフトの著作権は、報酬の支払の有無にかかわらず、作成の時点で甲に移転する。乙は、これを実績として使用しない。
整えた書き方試し書きは有償とする。有償としない場合は、権利を乙に留保し、甲は、採用しないときは利用しない。

契約が成立しなかった場合まで、無償の作業が発注者の資産になる書き方だからです。

修正の対応

よくある書き方乙は、甲の修正の指示に従い、速やかに対応する。これらの対応は原則として無償とする。
整えた書き方初稿後に○回、納品後に○回までを無償とし、方針の変更や追加資料の反映は追加の依頼として見積りを出す。

回数と範囲がなければ、修正が際限なく続くからです。

権利侵害の保証

よくある書き方乙は、成果物が第三者の権利を侵害しないことを保証し、紛争は乙の責任と負担で解決する。
整えた書き方乙が自ら作成した部分について、知る限り侵害しないことを保証する。甲が提供し、指定した素材と指示に起因する侵害は、甲が責任を負う。

発注者が指定した資料や画像に起因する紛争まで、書き手が負わないためです。

実績の公開

よくある書き方乙は、匿名又は概要のみで実績に掲載できる。ただし、甲の事前の同意を得る。(別の項で)甲は、掲載にあらかじめ同意する。
整えた書き方乙は、原稿が公開された後は、甲が特定されない形で実績として示すことができ、都度の同意は要しない。

包括的な同意と都度の同意が併存すると、どちらが有効か分からなくなるからです。

ヒヤリングで確認すること

執筆委託を受ける前のヒヤリング

  1. 問原稿は、記事、広告の言葉、依頼者の名前で出す文章のどれか。載せる媒体と、広告かどうか。

    理由仕事の種類で、報酬の単位、権利の行き先、広告表示の責任の分担が変わるからです。

  2. 問納品の単位は、文字数、本数、案の数のどれか。数え方に含めるものは何か。

    理由見出しや引用を含めるかで、同じ原稿でも報酬が変わるからです。

  3. 問参考にする資料は誰が用意し、権利関係を誰が確認するか。元となる記事を渡されるか。

    理由元の記事を元にした書き直しは翻案に近づき、権利侵害の責任の分担に関わるからです。

  4. 問名義は署名、ペンネーム、無記名のどれか。依頼者が加筆や改変をする予定はあるか。

    理由氏名表示と同一性保持の約束の範囲を決めるために、先に聞く必要があるからです。

  5. 問修正の窓口は誰か。依頼者の上司や取引先、監修者が後から意見を出すことはあるか。

    理由第三者の意見が後から入ると、修正が終わらなくなるからです。

  6. 問実績として示したいか。依頼者は公開を望まないか。公開後に訂正の依頼が来たときの窓口と期間はどうか。

    理由実績の公開は報酬の設計と秘密保持に影響し、公開後の対応期間が決まっていないと書き手の責任が終わらないからです。

執筆委託で起きがちなこと

起きがちな場面と、契約書での備え
起きがちなこと原因契約書での備え
書いた原稿が掲載されないまま、報酬が出なかった採用時だけ払う設計で、ボツの扱いがなかった段階別の割合を決め、校了前の中止は割合で精算する
無償のサンプル原稿が、そのまま使われた試し書きの権利と不採用の扱いがなかった有償にするか、権利を書き手に残して不採用なら使わせない
構成を変更され、ほぼ書き直しになったが無償だった方針の変更が修正に含まれると読めた修正と書き直しを分け、追加の依頼とする
元の記事を渡され、公開後に権利者から指摘された素材と指示の責任が、書き手の全面保証だった保証を自ら作成した部分に絞り、素材の責任は発注者が負う
依頼者名義の文章に、事実と異なる経歴が載った引き受けない類型と根拠資料の定めがなかった根拠資料は依頼者が用意し、引き受けない原稿を列挙する

よくあるご質問

ボツになった原稿の報酬は、請求できますか。

契約書の定めによります。請負に近い記事の執筆では、完成前に注文者が契約を解除でき(民法641条)、すでにした仕事の可分な部分で注文者が利益を受けるときは、その割合に応じて報酬を請求できます(同法634条2号)。ただし、どこまでが可分でいくらになるかは争いになりやすいため、構成案、初稿、校了などの段階と割合を契約書に書いておきます。

文字単価の契約では、何を文字数に含めますか。

決まりはなく、契約で決めます。本文だけか、見出し、リード文、引用、図表のキャプションまで含めるかで、同じ原稿でも報酬が変わります。数える方法、指定字数に対する許容の幅、超過分を無償にするか追加の報酬にするかも、あわせて書きます。

他人の記事を引用するときは、許諾が必要ですか。

公表された著作物は、公正な慣行に合致し、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内であれば、引用して利用できます(著作権法32条1項)。分量や使い方が引用の範囲を超えると、許諾が必要になります。事実やデータそのものは著作物ではありませんが(同法2条1項1号)、他人の文章の構成や言い回しを写すことは別の問題です。

ゴーストライターの仕事は、違法ですか。

書き手が了承したうえで、氏名を表示せず依頼者の名前で公表すること自体は、著作者の権利の行使として可能です(著作権法19条1項)。ただし、本人が自分で書いたことが条件の提出物や応募作品、実際と異なる経歴の記載、他人名義の口コミの代筆などは別の問題が生じ得るため、引き受けない類型として契約書に書いておきます。

納品した原稿を、自分の実績として載せてもよいですか。

著作権を発注者に移した後は、契約で認められていない限り、自由には載せられません。原稿が一般に公開された後に、発注者や取引先が特定されない形で、業種、媒体、字数、本数を示してよいと、契約書で認めてもらいます。秘密保持の条項の例外にしておくことも大切です。

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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引に必要な条項は、制作物の種類、納品の形、報酬の決め方、相手方が事業者か個人かによって異なります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 文化庁 著作権 / 公正取引委員会 / 特許庁

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