このページの要点
- 写真の著作者は撮った人。依頼者にはデータと利用の許諾を渡し、媒体・期間・加工・委託先への提供を分けて書く(著作権法63条)。
- 商品撮影は、預かり品の保管と返却、撮影で傷む物の承諾、写り込むロゴや小道具の権利の分担を決める。
- 人物が写るなら、利用目的・媒体・期間を示した同意を、誰が取るかまで決める。18歳未満は親権者の同意を取る。
- 延期は荒天の基準と判断の時点を、キャンセル料は費目別・時期別に書き、責任の上限は消費者契約法8条3項・9条1項1号を意識する。
撮影の場面ごとに、重くなる論点が違う
商品撮影(物撮り・ネットショップ・カタログ)
写真を納める約束なら請負に近い
- 預かった商品の保管、撮影中の傷み、返却
- 商品に付いた他人のロゴ、背景の小道具の権利
- 実物との色や質感の違いの確認
出張撮影(人物・スタッフ・店舗)
撮影日の拘束が大きい
- 写る人の同意、同行者や子どもの扱い
- 屋外の天候と日没で決まる撮影時間
- 撮り直せる撮影か、一度きりの撮影か
撮影の契約が請負か準委任かは、題名でなく約束の中身で判断されます。撮った写真を納めるところまで約束していれば請負(民法632条)に近づき、撮影という作業をすること自体を約束していれば準委任(同法656条・643条)に近づきます。実務は「データの納品まで」が普通なので、請負として組み立てると、完成前の解除(同法641条)や、途中で終わったときの割合報酬(同法634条)の考え方が使えます。見積書と契約の成立は制作の見積書・発注書と仕様書のページにあります。
撮影データの著作権は誰のもので、依頼者は何に使えますか
結論から言うと、写真の著作者は撮った人です。写真は著作物の例の一つで(著作権法10条1項8号)、創作する者が著作者になり(同法2条1項2号)、権利は創作と同時に生じます(同法17条2項)。依頼者が「こう撮ってほしい」と指示しても、通常、指示だけでは著作者になりません。例外は、会社の従業員が仕事として撮り、会社の名義で公表する写真で、契約や勤務規則に別段の定めがなければ会社が著作者になります(同法15条1項)。個人で受けるフリーランスの撮影は、撮影者本人が著作者です。創作性は個別に判断されるので、権利が生じるかに頼らず、使い方は約束で書いておきます。
渡すのは「データ」と「利用の許諾」
著作権を撮影者に残したまま、依頼者に使い方を許す形が一般的です(同法63条1項)。許諾を受けた人は、許諾された方法と条件の範囲内でだけ利用でき(同条2項)、その利用する権利は、著作権者の承諾がなければ譲渡できません(同条3項)。依頼者が事業を他社に譲る、制作会社にサイトの管理を移す、といった場面は、許諾の範囲に入れておくか、承諾を要する形にします。利用の範囲は、媒体で分けると食い違いが減ります。
利用の範囲の例(○=含める/△=条件付き/×=含めない)
| 利用の場面 | 許諾 | 契約で決めること |
|---|---|---|
| 自社サイト・ネットショップ・モールの商品ページ | ○ 含める | 掲載できるサイトを特定する。グループ会社や別ブランドのサイトを含むか |
| 広告(バナー、チラシ、パンフレット、SNS広告) | △ 条件付き | 媒体と期間を特定し、広告用は料金を分ける |
| 制作会社・印刷会社・代理店への提供 | △ 条件付き | 制作や印刷の目的に限り、提供先にも同じ約束を守らせる |
| 加工(切り抜き、色調整、文字の重ね) | △ 条件付き | 軽微な加工は含め、被写体の形を変える加工と合成は承諾制にする |
| 他社への転売、素材サイト登録、生成AIの学習用データ | × 含めない | 禁止する目的と行為を具体的に書く |
加工の書き方は食い違いやすい部分です。Web制作では、背景の切り抜き、サイズの変更、色調の統一、文字の重ね合わせは日常の作業で、加工を一切禁止すると、こうした軽い作業だけで契約違反になります。他方、被写体の形を変える、複数の写真を合成する、イラストに起こす(同法27条の翻案)といった加工は、意に反する改変として同一性保持権(同法20条1項)の問題になり得ます。軽微な加工を列挙して許諾し、超えるものは承諾制にします。著作者人格権は譲渡できないので(同法59条)、「放棄」でなく「行使しない」約束にし、氏名の表示(同法19条)をするかどうかも決めます。
期間と主体の書き方にも癖があります。「利用は無期限」と同じ契約に「本契約の有効期間中」と書くと、契約終了後に使えるのかが読めません。利用の主体を「依頼者本人に限る」とだけ書くと、制作会社や印刷会社が写真に触れること自体が違反になります。「独占的に使わせる」と書くなら、撮影者が同じ写真を実績に載せられるかを別に決めます。著作権そのものを譲渡する場合は著作権の譲渡契約書のページ、利用範囲を料金と結び付ける考え方はイラストレーターの契約書のページと共通です。
(撮影データの権利と利用の許諾)
1本件撮影により作成された写真データ(以下「本件写真」という。)の著作権は、撮影者に帰属する。
2撮影者は、依頼者に対し、本件写真を、依頼者の自社サイト、ネットショップ及び依頼者が指定するモールの商品掲載並びに依頼者の事業の宣伝のための印刷物及びSNSの掲載に利用する非独占的な権利を、◯年◯月◯日から◯年間、日本国内に限り許諾する。
3依頼者は、前項の利用に必要な範囲で、サイズの変更、トリミング、色調の調整、背景の切り抜き及び文字の重ね合わせを行うことができる。被写体の形状を変える加工及び他の画像との合成は、撮影者の事前の承諾を要する。
4依頼者は、制作、印刷又は配信を委託する者に、第2項の利用に必要な範囲で本件写真を提供することができる。この場合、依頼者は、委託先に本契約と同じ約束を守らせる。
5依頼者は、本件写真を、第三者への販売、素材サイトへの登録又は人工知能の学習用データの提供のために利用してはならない。
6撮影者は、第2項から第4項までの利用に対し、著作者人格権を行使しない。撮影者は、本件写真を自己の実績として掲載することができる。ただし、人物が識別できる写真は、当該人物の同意がある場合に限る。
撮影を外部のカメラマンに頼む制作者の側で
元の発注者から受けた仕事の一部として撮影を外部に頼むときは、撮影者から受ける許諾が、元の発注者に約束した利用の範囲を満たしているかを確かめます。許諾が「制作会社のサイトのみ」で、元の発注者への再許諾を含まなければ、制作側は自分の権限を超えて認めたことになります。撮影者が従業員を使わない個人などであれば、フリーランス法の対象になり得ます。業務委託をした事業者は、給付の内容、報酬の額、支払期日などを直ちに書面又は電磁的方法で明示し(同法3条1項)、従業員を使う事業者などは、支払期日を受領日から60日以内で定めます(同法4条1項)。この明示と支払期日の規律は、単発の撮影でも問題になります。全体像はWeb制作の外注・再委託とフリーランス法のページにあります。
商品撮影では、預かる物と写り込む物をどう扱いますか
商品撮影の被写体は、依頼者の財産であり、しばしば他人の権利が付いた物です。契約書で足りなくなりやすいのは、写真の権利よりも物の扱いです。
商品を預かって保管することは、寄託(民法657条)に当たり得ます。撮影料を受け取って預かる以上、善良な管理者の注意で保存する義務(同法400条の考え方)を負うと考えるのが安全で、報酬のない預かりに適用される軽い注意義務(同法659条)を前提にしないほうが無難です。返す場所は原則として保管している場所なので(同法664条)、返却は郵送か引き取りか、送料はどちらが負担するかを決めます。
| 場面 | 決めること | 理由 |
|---|---|---|
| 預かる期間と保管 | 預かる日、返す日、保管場所、保険の有無 | どの期間の紛失や盗難に責任を負うのかが分かる |
| 撮影で開ける・使う・濡らす | 開封、試着、試食、水や食品を使う撮影を依頼者が承諾すること。元に戻せない物の扱い | 撮影のために傷む物を、後から「損害」と言われるのを防ぐ |
| 高額品・一点物 | 預かる時点の価額の申告と、補償の上限 | 価額が分からないまま、上限なく責任を負う形になるのを防ぐ |
| 返却と廃棄 | 返却の方法、引き取りが遅れるときの扱い、食品や化粧品の廃棄の担当 | 預かりが終わらず保管の負担が続くのを防ぐ |
依頼者が事業者か個人かも最初に確かめます。事業のために商品を撮る依頼者は事業者で、消費者契約法の対象外です。事業者でも、補償の範囲を決めずに「一切責任を負わない」と書くと、預かった意味が失われるので、上限と範囲で書きます。
写り込むロゴ・キャラクター・小道具
商品に付いている他人のロゴやキャラクターは、依頼者が正規に仕入れ、または製造して販売のために載せる限り、通常は商品の販売の延長にあります。ただ、広告の素材や別の商品の背景に使うなど目的が変わると、権利者の許諾が要る場合があります。事情を知っているのは依頼者なので、「商品に付された他人の権利の処理は依頼者の責任」と分けます。
背景の小道具やポスター、雑誌、絵画が写り込む場合、撮影の対象に付随して対象となった著作物が写真の中で軽微な構成部分になるときは、正当な範囲内で利用できる規定があります(著作権法30条の2第1項)。ただし、著作権者の利益を不当に害する場合は除かれます。主役に近い位置に置いた物は「付随」とは言いにくいため、小道具は権利の整理がついた物を撮影者が用意するか、依頼者の持ち込みは依頼者の責任とします。
色や質感が実物とかけ離れて見える加工は、依頼者の広告表示(実際よりも著しく優良と示す表示を禁じる景品表示法)の問題になり得ます。契約では、撮影者は指示の範囲を超える補正をしないこと、依頼者は納品物を実物と見比べて最終確認をすることを、対にして書きます。印刷物の色の差はパッケージ・チラシ・グッズのデザイン契約のページで扱っています。
人物が写るとき、モデル・スタッフ・お客様の同意はどう取りますか
人が写る撮影では、写真の著作権とは別に、写る人の権利を考えます。「肖像権」という名前の条文はありませんが、みだりに容貌を撮影されたり、その写真を公表されたりしない利益は、人格的な利益として保護され、侵害すれば不法行為として損害賠償の問題になり得ます(民法709条・710条)。
顔がはっきり写る写真は、特定の個人を識別できる情報として個人情報に当たり得ます(個人情報保護法2条1項1号)。事業として保管し管理するなら、利用目的をできる限り特定し(同法17条1項)、同意なく目的の範囲を超えて取り扱わず(同法18条1項)、書面で本人から直接取得するときは利用目的をあらかじめ明示します(同法21条2項)。安全管理(同法23条)、委託先の監督(同法25条)、同意なしの第三者提供の制限(同法27条1項)も関わります。制作や印刷のために渡す場合は、委託として扱われる場面と第三者提供になる場面があるので、相手と目的ごとに整理します。
誰が、誰の同意を、いつ取るか
実務で食い違うのは「同意を取ったのは誰か」です。店舗の撮影で、依頼者が「スタッフには話してある」と言い、撮影者が確認しないまま撮り、後から写った人が「聞いていない」と言うのが典型です。同意を取る役目は、モデルを撮影者が手配するなら撮影者、依頼者のスタッフやお客様が写るなら依頼者、と決め、取った側は記録して撮影の前に相手方へ示します。
| 写る人 | 氏名(呼び名で足りる場合はその呼び名)。18歳未満は親権者の署名欄を設ける |
|---|---|
| 利用の目的と媒体 | 依頼者の自社サイト、ネットショップ、SNS、チラシ。広告配信を含むかは選択式にする |
| 利用の期間 | ◯年◯月◯日から◯年間。延ばすときは改めて同意を得る |
| 加工 | サイズ変更、トリミング、色調補正は可。顔や体型を変える加工、合成は不可(または事前に確認) |
| 撮影者の実績掲載 | 可・不可を選ぶ |
| 掲載の中止の申出 | 窓口と対応できる範囲(公開中は停止する、印刷済みの物は回収しない、など) |
| 個人情報の取扱い | 利用目的、渡す委託先、保管の期間、削除の方法 |
利用目的の明示は、同意書に利用目的を書くことで満たします。
未成年が写るときは、親権者の同意を取ります。未成年者が法律行為をするには法定代理人の同意が要り(民法5条1項)、親権を行う者は子の財産に関する法律行為について子を代表します(同法824条)。成年は18歳です(同法4条)。
スタッフの写真は、会社が撮影を指示できても、顔写真の公開にまで当然に同意があるとは限らないため、雇用契約とは別に、利用の範囲と期間を示した同意を取り、退職時の扱い(掲載の停止の時期)も決めます。営業中の店では、来店客の顔が識別できるカットは納品しないか、加工します。掲載の中止を求められたときは、本人が利用停止等を請求できる場合があるため(個人情報保護法35条)、窓口、期限、対応できない範囲を先に書きます。
(被写体の同意)
1依頼者は、本件撮影で人物が写る場合、当該人物から、本件写真の利用目的、媒体及び期間について書面又は電磁的方法による同意を得て、撮影の前までに撮影者に提示する。
2撮影者は、前項の同意が得られていない人物を撮影の対象としない。同意のない人物が写り込んだ場合は、当該カットを納品しない、又は識別できないよう加工する。
318歳未満の者が写る場合の同意は、その親権者から得る。
4依頼者は、被写体から掲載の中止の申出を受けたときは、遅滞なく撮影者に通知し、依頼者が管理するサイト及びSNSの掲載を中止する。印刷済みの物及び既に第三者が転載した物については、回収の義務を負わない。
雨や体調で撮影日が動いたとき、延期とキャンセル料はどう決めますか
結論は、延期とキャンセルを分けて書くことです。そのうえで、誰の事情か、どこまで手配が進んでいるか、次の日があるか、の三つで精算を決めます。
民法は原因で分けます。撮影ができなくなり、その原因がどちらの責めにも帰すことができないとき(雨など)は、依頼者は撮影料の支払を拒めます(民法536条1項)。依頼者の責めに帰すべき事由で撮影できなくなったとき(被写体が来ない、商品が届かない)は、支払を拒めず、撮影者が免れた費用などの利益は償還します(同条2項)。撮影者の責めに帰すべき事由があれば債務不履行の問題になり(同法415条1項)、商品の発売日に間に合わなければ意味がない撮影のように、特定の日に撮らなければ目的を達成できない撮影で、その日に撮れなかったときは、催告なしの解除もあり得ます(同法542条1項4号)。ただ、天候で撮れない日は、日を変えれば撮れることが多いので、「延期を原則とし、延期できないときに限り中止」と書くのが現実的です。
「悪天候なら中止できる」とだけ書くと、撮影者に都合のよい判断に見えます。基準(降雨、風、日没までの時間、足元の状態)、判断する時点(前日の何時、当日の何時)、判断する人の三つを書きます。空撮など天候に左右されるオプションが実施できなかったときは、代わりのカットの追加、別日の撮影、減額のどれかを決めておきます。「実施できなくても減額しない」と固定すると、そのオプションが売りの中心だった場合に争われ得ます。
キャンセル料は、費目ごと・時期ごとに書く
撮影者の日程の拘束、スタジオやロケ地の使用料、モデルなど外部への謝礼、小道具のレンタルは、取り消せる時期も、実際に生じる損害も違います。「撮影料の50パーセント」と率だけを書くより、拘束への料金には時期別の率を、外部費用には実際に生じた費用を書くほうが、実態に合い、根拠を示せます。
| 場面 | 撮影料60,000円 | 外部費用(スタジオ15,000円・モデル20,000円・小道具5,000円) | 依頼者の負担 |
|---|---|---|---|
| 撮影日の10日前に依頼者の都合でキャンセル(8日前まで0%) | 0円 | スタジオ15,000円(取消不可の条件で予約) | 15,000円 |
| 前日に依頼者の都合でキャンセル(3日前〜前日50%) | 30,000円 | 15,000円+20,000円+5,000円=40,000円 | 70,000円 |
| 当日の朝、雨で撮影者が延期を判断(スタジオの変更料5,000円を折半と定めた場合) | 0円 | 5,000円の半分=2,500円 | 2,500円 |
| 当日に依頼者側の被写体が来ない(当日100%) | 60,000円 | 40,000円 | 100,000円 |
個人の依頼者(消費者)との契約では、解除に伴う違約金などが、同種の契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分は無効です(消費者契約法9条1項1号)。消費者から求められたときは算定の根拠の概要を説明するよう努めます(同条2項)。事業者どうしでも、実際の損害とかけ離れた賠償額の予定は、民法420条の予定でも公序良俗(同法90条)に反すると争われ得るため、時期別の率と実費で説明できる形にします。最も重要な条件を「別紙の規定による」とだけ書き、別紙の位置づけを決めていない書き方も見られます。本文か、契約と一体と明記した個別条件表に書きます。キャンセル全般の考え方はホームページ制作のトラブルとキャンセルのページと共通する部分があります。
撮影者の体調不良では、延期するか、依頼者の承諾を得て代わりの撮影者を立てるかを決め、代わりの撮影者にも権利と個人情報の約束を引き継がせます。被写体の体調不良は延期の扱いにします。公開日や発売日が決まっている撮影は、延期の損害を問われやすいため、責任を絞ります。消費者向けでは、上限を定める一文の中に「当社、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失による場合を除き」と入れます(消費者契約法8条3項)。
(天候等による延期とキャンセル)
1天候、体調、交通機関の運休その他、当事者のいずれの責めにも帰すことのできない事由により撮影を予定どおり実施できないときは、撮影者は、依頼者と協議して撮影日を延期する。延期の判断は、撮影日の前日の午後6時及び当日の午前7時を基準とし、直ちに電子メール又はメッセージで依頼者に通知する。
2前項の延期は、1回に限り撮影料を追加せずに行う。延期に伴い新たに生じる外部の費用は、実際に生じた額の半額を依頼者が負担する。
3依頼者の都合により撮影を取り消すときは、別表の費目別の取消料を支払う。取消の意思表示が撮影者に到達した時を基準に、取消料の割合を定める。
別表には前の表のような費目別・時期別の取消料を載せます。到達時を基準にする点は、意思表示は相手方に到達した時から効力を生じること(民法97条1項)に沿っています。
納品はどの形式で、データはいつまで預かりますか
納品のトラブルは、「何を渡すか」「いつ渡したことになるか」「いつまで預かるか」の食い違いから起こります。とくに現像前のデータ(RAW)を渡すかどうかは、後から揉めやすい点です。
| 種類 | 中身 | 渡し方の考え方 |
|---|---|---|
| Web用の画像 | 画面表示向けに大きさを抑えた現像済みの画像 | 基本の納品物。長辺の大きさ、色の設定、ファイル形式を仕様書に書く |
| 印刷用の高解像度の画像 | チラシやカタログ向けの大きなデータ | 印刷での利用がある場合に加え、利用の範囲の「印刷」と結び付ける |
| 切り抜きの画像 | 商品を背景から切り抜いたデータ | モールの規格は依頼者が確認する。切り抜きを料金に含めるか決める |
| RAWデータ | カメラが記録した現像前のデータ | 渡さない型か、別料金で渡す型にし、渡すなら現像・加工の範囲を書く |
RAWは撮影者にとって未完成品で、渡すと他の人が自由に現像・加工できる状態になります。「全データをお渡し」と案内して契約で渡さないとすると食い違うため、言葉をそろえます。
納品の完了は、撮影者がダウンロード用のリンクを送り、依頼者が受け取れる状態になった時とし、リンクの期限と、保管期間(納品の完了日から数える)、期限後の再送の料金も決めます。請負の不適合は、知った時から1年以内に通知しないと追完の請求などができなくなりますが(民法637条1項)、契約で検収の期間を短くすることもできます。期間内に連絡がなければ検収したとみなす条項は、点数の不足、データの破損、指定した商品の欠落といった客観的な不備を除く形にします。消費者が相手のときは、みなす前に再度の連絡をする手順を書きます(消費者契約法10条の点検)。再撮影の線引きは原因で決め、ピントや露出の失敗、撮り忘れ、商品の傷が写ったままの納品は無償で撮り直し、依頼者の指示の変更は有償にします。好みと違うという主観的な理由だけでは応じないと書いても、客観的な不備を除いてあれば無理がありません。
データが消えたとき
消失は、カードの不良、機材の故障、保存先の障害、誤操作などで起こります。二枚のカードへの同時記録や当日中のコピーなど、バックアップの運用を決めて契約書に書いておくと、軽い過失の主張を避けやすくなります。責任は、事業者どうしなら、通常生ずべき損害(民法416条1項)に限り、受け取った報酬を上限とし、故意又は重大な過失があるときは上限を適用しない、が一般的です。消費者が相手のときは、上限を定める一文そのものに、故意又は重大な過失による場合を除くことを入れます(消費者契約法8条3項)。商品撮影は撮り直せますが、一度きりの出張撮影は撮り直せないため、後者は説明を丁寧にし、人身の損害は上限の対象外と明記します。顔が写るデータは、共有リンクを限定公開にしてパスワードと期限を設け、保管期間が過ぎたら削除し、委託先にも同等の管理を求めます(個人情報保護法23条・25条)。生成AIへの入力の扱いは制作での生成AIの使用と契約のページにあります。
(納品・保管・消失)
1撮影者は、Web用の画像(長辺◯ピクセル、JPEG形式)を◯点から◯点の範囲で、撮影日から◯日以内に、ダウンロード用のリンクにより納品する。RAWデータ及び作業途中のデータは含まない。
2納品は、撮影者がリンクを送信し、依頼者が受け取れる状態になった時に完了する。撮影者は、完了日から◯日間保管し、この期間後の再送は有料とする。
3依頼者は、完了日の翌日から◯日以内に確認の結果を通知する。期間内に通知がないときは確認したものとみなす。ただし、点数の不足、データの破損その他の客観的な不備は除く。
4撮影者の責めに帰すべき事由により撮影データが消失したときは、撮影者は、再撮影の機会を提供し、再撮影ができないときは、撮影者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失による場合を除き、受け取った料金の総額を上限として、通常生ずべき損害を賠償する。故意又は重大な過失があるとき、及び人の生命又は身体に関する損害には、この上限を適用しない。
第3項は検収に客観的な不備の除外を入れた書き方、第4項は上限の一文の中に故意又は重大な過失を除く旨を入れた書き方です。
よくある失敗と直し方
書き方の例(一般的な例) 撮影の契約でよく見られる書き方
利用の期間と主体
「無期限」と「有効期間中」が並ぶと契約終了後の利用が読めず、主体を本人に限ると制作会社が触れること自体が違反になります。
加工
実際の制作の作業と合わない禁止は守られず、ほかの禁止まで形だけに見えます。
データ消失の責任
上限の一文に故意又は重大な過失を除く旨がないと、消費者契約法8条3項の要件を満たさず、無効になるおそれがあります。
責任の免除
「一切」と書くと撮影者の過失まで免れる全面免責に読まれます。範囲と上限で書き分けます。
ヒヤリングで確認すること
撮影を受けるときの問いと、その理由
問写真は何に使いますか。自社サイト、ネットショップ、モール、チラシ、広告のどれですか。制作会社や印刷会社に渡しますか。
理由利用の範囲が料金と許諾の範囲の土台です。提供先があれば、委託先を含む許諾と、同じ約束を守らせる定めが要ります。
問依頼者は事業者ですか、個人ですか。
理由個人なら消費者契約法の対象になり、キャンセル料や責任の上限の書き方が変わります。
問預かる商品は何で、高額品、一点物、食品・化粧品はありますか。商品に他社のロゴは付いていますか。
理由預かり中の注意、補償の上限、撮影後の廃棄の担当、権利の整理を依頼者に任せる範囲が変わります。
問人物は写りますか。誰が写り、同意は誰が取りますか。18歳未満は写りますか。
理由同意を取る人と、親権者の同意の要否を決めます。同意のない人が写ったときの扱いも決まります。
問撮影日は動かせますか。予備日はありますか。公開日や発売日はいつですか。
理由延期できる範囲と、遅れたときの責任の重さが決まります。
問ロケ地や施設の許可は誰が取りますか。営業中の店で撮りますか。
理由許可の取得と費用の負担を決められ、来店客の写り込みへの備えもできます。
問納品物の形式、点数、納期は。RAWデータは必要ですか。
理由RAWの扱いと納品物の範囲を、撮影の前に合意しておくためです。
起きがちなこと:場面ごとの備え
- 写真を、契約に書いていない広告に使われた。利用の範囲を媒体ごとに書き、広告用は別料金にします。
- 制作会社に渡したら、許諾の範囲を超えていると言われた。委託先を許諾の範囲に含めるか、承諾を要する形にします。
- スタッフの写真が、退職後もサイトに残っていた。利用の期間と退職時の掲載停止を、同意の内容に入れます。
- 雨で延期したら、スタジオの変更料の負担で揉めた。延期に伴う外部費用の負担の割合を、あらかじめ決めておきます。
- キャンセル料を請求したら、別紙を見ていないと言われた。費目別・時期別の条件を、契約と一体の書面にして示します。
よくあるご質問
依頼者が構図まで細かく指示して撮った写真は、依頼者の著作物になりますか?
通常は、指示だけでは依頼者は著作者になりません。写真の著作者は、写真を創作した撮影者です(著作権法2条1項2号・10条1項8号)。ただし、会社の従業員が仕事として撮り、会社の名義で公表する写真は、契約や勤務規則に別段の定めがなければ会社が著作者になります(同法15条1項)。依頼者に使わせる範囲は、利用の許諾として契約で書きます。
人物が写る撮影では、同意書は必要ですか?
法律が同意書の様式を決めているわけではありません。ただ、顔が識別できる写真は、容貌をみだりに撮影・公表されない利益の問題があり、個人情報にも当たり得ます。利用目的、媒体、期間を示した同意を書面や電子的な方法で記録しておくと、後で説明できます。18歳未満の人は、親権者の同意を取ります。
雨で撮影できなかったとき、撮影料は返しますか、請求できますか?
契約に書いた内容で決まります。撮影ができなくなり、その原因がどちらの責めにも帰すことができないときは、依頼者は撮影料の支払を拒めます(民法536条1項)。ただ、日を変えれば撮れる撮影は、延期を原則とし、延期できないときに中止とする書き方が現実的です。判断の基準、時点、判断する人、延期に伴う外部費用の負担を、撮影の前に書いておきます。
RAWデータは、依頼者に渡さなければなりませんか?
渡す義務が法律で決まっているわけではなく、契約で約束した納品物の範囲で決まります。渡さない型、別料金で渡す型のどちらかにして、案内の言葉と契約書の言葉をそろえます。渡すときは、現像や加工をしてよい範囲も書いておきます。
預かった商品が撮影中に壊れたら、撮影者が弁償しますか?
撮影者の過失で壊れたなら、責任を負うのが原則です(民法415条1項)。撮影のために依頼者が承諾して開封・使用した物の消耗は、損害に含めない扱いにします。高額品や一点物は、預かる時に価額を申告してもらい、補償の上限を決めます。「一切責任を負わない」とだけ書く方法は、撮影者の過失まで免れる書き方と読まれ、問題になり得ます。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引に必要な条項は、制作物の種類、納品の形、報酬の決め方、相手方が事業者か個人かによって異なります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 文化庁 著作権 / 公正取引委員会 / 特許庁