クラウドソーシングのコンペ案件の契約

コンペやクラウドソーシングの案件は、報酬が出る前に作品を出し、規約に沿って進みます。権利が移る時点、報酬が確定する時点、手数料を引いた手取りを、応募の前に確かめます。

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このページの要点

  • 採用されなかった案の著作権は、募集要項や規約に別の定めがなければ、案を作った人に残る(著作権法17条)。「全応募作品の権利は主催者に」の一文の有無を、応募の前に確かめる。
  • 採用作品の権利の移転は、報酬の支払の完了を条件にする。27条・28条の特掲と、人格権の不行使の範囲も契約書で決める(61条2項)。
  • プラットフォームの規約と契約書の優先関係は、書面に書く。規約を参照するときは版を特定し、不利益な変更は承諾を要する形にする(民法548条の2・548条の4)。
  • 無償のコンペは採用率と手数料で時間あたりの収入が決まる。承認の基準・期間・みなし承認、修正の範囲を決め、手取りで採算を見る。
コンペやクラウドソーシングの案件で、最初に確かめるのは報酬の額ではなく、「誰の権利が、いつ、どこまで動くのか」です。採用されなかった案の著作権は、募集要項や規約に別の定めがなければ、案を作った応募者に残ります(著作権法17条)。採用された案も、報酬の支払と結び付けて移転や許諾の時期を決めておかなければ、代金を受け取る前に権利だけが先に渡ります。プラットフォームの規約と個別の契約書が食い違うときの優先関係は、書面に書かれていなければ、争いになってから解釈で決まります。手数料は、引かれた後の手取りで採算を見ます。このページは、応募・受注する側の立場から、この順に整理します。

クラウドソーシングの案件は、契約としてどう成り立っているのですか

クラウドソーシングとは、仕事を出す人と受ける人をインターネット上で結び付ける仲介サービスの総称です。このページでは、仲介するサービスを「プラットフォーム」、仕事を出す人を「発注者」、受ける人を「受注者」と呼びます。案件の決まり方は四つの型に分かれ、型によって、契約が成立する時点、先にする無償の作業の量、権利の動き方が違います。

案件の決まり方の四つの型

プロジェクト型

提案文と見積りを送り、選ばれた時点で契約が成立する型

  • 応募の段階で出すのは提案文と見積りが中心で、作品そのものは出さない場合がある
  • 発注者の採用の通知が、申込みに対する承諾に当たり、契約が成立することが多い(民法522条1項)

コンペ型

作品を先に出し、選ばれた作品にだけ報酬が出る型

  • 応募は無報酬が前提で、作品を作る手間を先に負担する
  • 募集は懸賞広告(民法529条)の枠組みで説明されることがあり、優等者だけに報酬を与える型には532条が関わる

タスク型

単価と件数が決まった作業を受ける型

  • アンケートや短い記事など、作業の内容が定型で、単価が先に決まっている
  • 発注者の承認で報酬が確定し、個別の契約書は結ばず、規約の条件だけで進む場合がある

スカウト・ダイレクト型

発注者に指名されて依頼される型

  • 受注の通知で契約が成立する点は、プロジェクト型と同じ
  • 条件を交渉できる余地が比較的大きく、個別の契約書を結ぶ場面もこの型にある

プロジェクト型とスカウト型の契約後の作業は、仕事の完成を約束する請負(632条)か、作業の提供を約束する準委任(643条・656条)かを、約束の中身で見ます。

コンペ型は、仕組みの理解が特に大切です。民法には、ある行為をした者に一定の報酬を与える旨を広告した人は、その行為をした者に報酬を与える義務を負う、という懸賞広告の規定があります(529条)。広告に定めた行為をした人が何人もいて、優等者だけに報酬を与える場合は、応募の期間を定めたときに限って効力を有し(532条1項)、どの応募が優等かは広告で定めた人が、定めがなければ広告をした人が判定し(同条2項)、応募者は判定に異議を述べられません(同条3項)。コンペがこの枠組みで説明されることがあるのは、「採否は主催者が決め、外れた応募者は報酬を求められない」という構造が重なるからです。ただし、サービスによっては、応募を契約の申込みとして扱い、採用を承諾として契約を成立させる組み立てにしています。どちらの型かは、募集要項と規約の中身で決まります。

撤回の可否にも差が出ます。応募の期間を定めた懸賞広告は、広告の中で撤回する権利を留保していない限り、撤回できません(民法529条の2第1項)。期間を定めない広告は、指定した行為を完了する者がない間は撤回できますが、「撤回しない」旨を表示していればできません(529条の3)。募集要項に「主催者の都合で中止できる」「該当作がない場合は採用しない」とあれば、案を出した後に募集が取り下げられても報酬が出ない可能性がある、という意味です。

採用が決まった後の作業は、通常の制作案件と同じ扱いです。何を、いつまでに、いくらで納めるのかの確定方法は、制作の見積書・発注書と仕様書のページと共通です。発注画面が見積書と発注書を兼ねる場合があるため、表示された仕様と金額は保存しておきます。

採用されなかった案の著作権は、誰のものですか

結論から言うと、採用されなかった案の著作権は、募集要項や規約に別の定めがなければ、案を作った応募者に残ります。著作者は、創作と同時に著作権などを享有し、登録などの方式は要りません(著作権法17条1項・2項)。応募したことや採用されなかったことは、権利を動かす事情ではありません。権利が動くのは、権利を譲渡する合意があるとき(61条1項)と、利用を許諾したとき(63条1項)です。

問題は、募集要項や規約に「すべての応募作品の著作権は主催者に帰属する」「応募作品は採否にかかわらず主催者が自由に利用できる」という趣旨の定めがあるときです。応募が同意として扱われる仕組みなら、案が採用されなくても権利を渡す合意になり得ます。報酬のない案の権利だけを渡すことになるため、応募の前に、その定めの有無を確かめます。

場面ごとの、案の権利の行き先(一般的な整理)

場面発注者への権利の移転発注者が使える範囲書面で確かめること
応募した直後(採否の前)× 移らない。応募者に残る(17条)△ 審査・検討のために見る範囲審査以外の利用(社内への展開、第三者への提示)を禁じる定めがあるか
採用されず、結果が通知された後× 募集要項に定めがなければ移らない× 使えない。許諾もない「全応募作品の権利を主催者に帰属」「採否にかかわらず利用できる」の一文がないか
採用の後、報酬の支払の前△ 要項や契約の定め次第。支払を条件にするのが受注者に有利△ 支払完了までは確認用の利用にとどめる形が考えられる移転や許諾の効力が、報酬の支払完了を条件にしているか
報酬の支払と検収が済んだ後○ 譲渡の契約があれば移る。27条・28条の特掲が要る(61条2項)○ 譲渡の範囲内。許諾にとどまるなら63条2項の範囲内27条・28条の特掲、人格権の不行使とその例外
採用作品に含めた第三者の素材(フォント、ストック画像など)× 受注者が持たない権利は移せない△ 素材ごとの利用条件による第三者素材の一覧と、ライセンスの範囲

著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものをいいます(2条1項1号)。ありふれた表現やアイデアにとどまる部分は、著作権では守られません。

27条は翻案権(作品を改変して別の作品にする権利)、28条は二次的著作物の原著作者の権利です。著作権を譲渡する契約でこの二つが「譲渡の目的として特掲されていない」ときは、譲渡した人に留保されたものと推定されます(61条2項)。採用作品を譲渡するときの書き方は、著作権の譲渡契約書と著作者人格権の不行使のページにあります。実務では、採用した案を「本制作物」と定義し、「譲渡の対象は本制作物に限り、提案段階の制作物と未採用案は含まれない」と書く方法があります。

不採用案が使われたと感じたときに言えるのは、表現が似ている場合です。アイデアや構図の考え方を取り入れられただけでは、権利の侵害を言うのは難しくなります。応募の時点で、提出したファイル、制作過程のファイルの更新日時、提出した画面の記録を保存しておきます。作者名を表示している作品なら、その人が著作者と推定されます(14条)。作者名を伏せるコンペでは、これらの記録が作者を示す材料になります。

(不採用となった案の取扱い)

1応募者が提出した案のうち、発注者が採用しなかったものに関する著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む。)その他一切の権利は、応募者に留保される。

2発注者は、採用しなかった案を、審査及び検討の目的に限って利用し、その目的を超えて、複製し、改変し、又は第三者に提示し、若しくは提供してはならない。

3発注者は、応募者の求めがあるときは、採用しなかった案及びその複製物を消去し、その旨を応募者に通知する。

4応募者は、採用されなかった案を、自己の実績として公表し、又は他の取引に利用することができる。ただし、発注者から開示を受けた非公開の情報を含む部分は、この限りでない。

募集要項に追記を求める、または個別の契約書に入れる条項の例です。第4項は、不採用案を実績として使えることを明記し、発注者の非公開情報が写り込んだ部分だけを例外にしています。

プラットフォームの規約と個別の契約書は、どちらが優先しますか

プラットフォームを通じた取引には、三つの書面が重なります。プラットフォームの利用規約、案件ごとの募集要項または発注内容の画面、発注者が別に用意する契約書です。食い違うときの決め方は、書面の側に書かれていなければ、揉めてから解釈で決まります。

利用規約のように、多数の人を相手に画一的に使うために準備された条項の総体は、民法でいう「定型約款」に当たると整理されることがあります。規約を契約の内容にすることに合意した場合などは、個別の条項にも合意したものとみなされますが(民法548条の2第1項)、相手方の利益を一方的に害する条項は、合意しなかったものとみなされます(同条2項)。規約を後から変更するには、変更が相手方の一般の利益に適合するか、合理的であることが求められ、効力発生時期と変更内容の周知も要ります(548条の4第1項・2項)。受注者が気をつけるのは、規約が「個別の合意が優先する」と書いているのか、「規約が優先する」と書いているのか、そして規約の変更で報酬の確定の時期や手数料が案件の途中で変わらないか、の二点です。

優先関係の書き方の四つの型
型書き方の内容受注者の注意点
個別の書面を優先する型契約の本体と個別の発注書が食い違うときは、個別の発注書を優先する個別の書面に不利な条件を書き込まれるおそれがある。契約の前に最後まで読む
本体を優先する型個別の条件と本体が抵触するときは、本体を優先する案件ごとに有利な条件を書いても、本体で押し戻される
個別優先、ただし例外を置く型個別を優先する。ただし、規約が明示的に定める場合は除く例外にされている項目(報酬の確定、権利、手数料など)を確認する
規約を参照して条件を決める型報酬の支払時期などを「サービスの規約に基づき」とだけ書く参照先が変更されると条件も変わる。規約の版や日付を書く

規約を参照する型には、落とし穴があります。発注者が用意した契約書に、「請求書の到達月の翌月に支払う」という通常の支払条件と、「プラットフォームを通じて業務が提供された場合は、規約に基づき、発注者が成果物の確認を完了した時点で速やかに支払う」という定めが並んでいる例です。どちらが適用されるのか読み取れず、後者は発注者の確認次第です。確認の期間と、期間内に通知がなければ承認とみなす定めを足して、支払の起点を発注者の動きから切り離します。

(プラットフォームの規約との関係)

1本契約に基づく業務が○○(プラットフォームの名称)を通じて委託された場合、報酬の支払の時期及び方法、手数料の取扱いその他の取引の手続は、同プラットフォームの利用規約(本契約の締結日時点のもの)に従う。

2前項の規約が変更され、その変更が受注者の報酬又は負担を不利益に変更するものであるときは、受注者が書面又は電磁的方法で承諾した場合に限り、変更後の規約を本契約に適用する。

3本契約の定めと規約が抵触する事項は、本契約の定めを優先する。ただし、規約がその事項を個別の合意によって変更できない旨を明示しているときは、この限りでない。

第1項で規約の版を締結日時点に固定し、第2項で、途中の変更が不利益に効くのを防いでいます。第3項のただし書は、規約が個別の変更を許さない場合に、契約書が空振りしないようにする工夫です。

確認リスト:プラットフォームの規約で見る項目

  1. 1報酬が確定する時点(納品、発注者の承認、みなし承認)と、確定から支払までの日数
  2. 2手数料の率と負担者。追加の報酬や返金のときの扱い
  3. 3応募作品、不採用案、納品物の権利について、規約自体に定めがあるか
  4. 4サービスの外で直接契約や支払をすることを制限する定めがあるか。個別の契約書を別に結んでよいか
  5. 5発注者との紛争について、プラットフォームの窓口や調整の手続があるか。申し出の期限

規約と定型の条件だけで進み、条項を直せない案件もあります。その場合は、直せない条件を前提に、報酬の額、期間、業務の量とのつり合いを見て、受けるかどうかを決めます。

コンペ形式の無償作業は、どこまで引き受けてよいですか

結論から言うと、無償の作業は「応募者が自分で選んで負う範囲」に収め、完成度、案の数、採用後の追加作業の三つを、応募の前に線引きします。採用されなかった案は報酬にならないため、時間あたりの収入に直して見ると負担が分かります。

コンペの時間あたりの収入の計算例(数字はすべて仮のもの)
項目計算結果
手取り(報酬30,000円、手数料20パーセントとして)30,000円 − 6,000円24,000円
応募1件の制作時間仮に5時間5時間
10件応募して1件採用5時間 × 10件 = 50時間。24,000円 ÷ 50時間1時間あたり480円
5件応募して1件採用5時間 × 5件 = 25時間。24,000円 ÷ 25時間1時間あたり960円
10件に1件の採用で、採用後の修正が5時間55時間。24,000円 ÷ 55時間1時間あたり約436円

手数料の率はサービスごとに違い、変更されることもあります。見るべきは、採用率が半分になれば時間あたりの収入も半分になること、採用後の修正でさらに下がることです。自分の制作時間と採用の割合で、応募の前に計算しておきます。

コンペと、その代わりになる受け方
受け方受注者の負担報酬権利の扱い
無償のコンペ完成度の高い案を先に無償で出す採用された1点だけ不採用案は受注者に残るのが原則。要項の定めを確認
提案料つきのコンペ案を出す手間に一定の対価が出る提案料+採用時の報酬提案料で買い取る範囲を要項で確認
段階提案(ラフ→方向性の確認→本制作)ラフ数案までを無償または少額にし、本制作は契約後方向性の確認後の契約で確定ラフ・不採用案は受注者に残る
指名の有償提案提案の作業そのものが有償提案の作業への報酬提案書の権利は受注者。使う範囲を許諾

段階提案は、自分の窓口で依頼を受ける場合に使える設計で、無償の修正を本制作の案に対する回数に絞ります。段階ごとの修正の線引きは、イラストレーターの契約書と依頼規約のページとロゴ制作の契約と著作権のページで扱っています。

発注者が従業員を使っている場合は、フリーランス法の規定が関わります

受注者が、従業員を使わない個人、または代表者のほかに役員も従業員もいない法人(特定受託事業者。フリーランス法2条1項)で、発注者が、従業員を使う個人、または役員が二人以上いるか従業員を使う法人(特定業務委託事業者。同条6項)に当たるときは、次の規定が関わります(明示義務は、従業員を使わない発注者にも及びます)。コンペの応募の段階が業務委託に当たるかは個別の事情によるため、採用が決まり、仕事を頼む合意ができた時点から、と考えるのが無理のない整理です。

  • 募集の情報を広告等で提供するときは、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはならず、正確かつ最新の内容に保たなければなりません(12条)。コンペの募集要項が、この「募集に関する情報」に当たり得ます。
  • 業務委託をしたときは、直ちに、給付の内容、報酬の額、支払期日などを、書面または電磁的方法で明示しなければなりません(3条1項。負うのは、特定受託事業者に業務委託をする事業者です。2条5項)。
  • 報酬の支払期日は、給付の内容を検査するかどうかを問わず、給付を受領した日から60日以内で、できる限り短い期間内に定めなければなりません(4条1項)。検査や承認に時間がかかっても、起点は受領した日です。
  • 1か月以上の業務委託では、責めに帰すべき事由のない報酬の減額や、受領後のやり直しの要求が禁止されます(5条1項2号・2項2号)。採用された案を、仕様にない方向へ全面的に作り直させる要求は、この規定との関係が問題になり得ます。

これらは発注者に課される義務ですが、募集要項、発注の画面、納品と承認の記録が残っていなければ、規定に沿った扱いだったかを示せません。発注する側から見た扱いは、フリーランスに発注する前の見積り・コンペ・お試し作業の解説(発注者向けのサイト)にあります。

手数料は手取りで見る。報酬の確定は承認の仕組みで決まる

手数料の仕組みは、プラットフォームごとに違います。契約の前に確かめるのは、率そのものより、次の五点です。

  • 契約金額として表示された額は、手数料を引く前の額か、引いた後の額か。
  • 手数料は、受注者の報酬から引かれるのか、発注者の支払に上乗せされるのか。
  • 追加の報酬や修正の費用にも手数料がかかるか。返金やキャンセルのとき、手数料はどう扱われるか。
  • 報酬が先にプラットフォームに預けられる仕組み(サービスによって有無や呼び方が異なる)があるか。
手取りから逆算する計算例(数字はすべて仮のもの)
見たいこと計算結果
手取り24,000円を確保したい(手数料20パーセント)24,000円 ÷ 0.8契約金額は30,000円
同じ契約金額で、手数料が25パーセントに変わったとき30,000円 × 0.75手取りは22,500円

(報酬の額と手数料)

1本契約の報酬は、金○円とする。この額は、プラットフォームの手数料を控除する前の額である。

2プラットフォームの手数料は、前項の報酬から控除され、受注者が負担する。発注者の都合による修正又は仕様の変更により報酬が追加される場合は、追加の報酬についても同様とする。

控除の前後どちらの額かを書くだけで、手取りの食い違いを防げます。

報酬の確定は、承認の仕組みで決まります。承認の基準も期間も書かれていないと、受注者の報酬を請求する権利が、発注者の意思次第になります。次の条項の例は、承認の基準、期間、みなし承認、修正の範囲を決めています。

(納品、承認及び報酬の確定)

1受注者は、採用された案を、発注内容に定める方法で納品する。

2発注者は、納品を受けた日の翌日から起算して○営業日以内に、発注内容との適合を確認し、修正を求めるときは、その具体的な内容と理由を受注者に通知する。

3発注者が前項の期間内に通知しないときは、納品物を承認したものとみなし、報酬が確定する。

4修正の求めは、募集要項又は発注内容に示された仕様に照らして、客観的かつ合理的な理由がある場合に限る。採用された案の基本的な構成、コンセプト又は表現の方向性を変更する修正は、追加の報酬及び納期について別に合意した場合に限り、行う。

5報酬は、承認又は第3項のみなし承認の日から○日以内に支払う。

第1項から第3項で承認の流れを、第4項で修正の範囲を、第5項で支払の起点を決めています。○には、案件に合わせた営業日・日数を入れます。

納品の後の揉め事や、条件の変更の整理は、ホームページ制作のトラブルとキャンセルのページの考え方と共通です。

よくある失敗と直し方:試作の権利、承認制、解除、不採用案の扱い

発注者が用意した契約書や、プラットフォームの定型の条件には、受注者に不利な書き方が混ざっていることがあります。署名や応募の前に気づけば、直す余地があります。

書き方の例(一般的な例) コンペ・クラウドソーシング案件の条項

契約前に作った試作の権利

よくある書き方契約の締結前に受注者が発注者の依頼又は提案に基づいて作成した試作品、ドラフト、デモ版その他一切の制作物の著作権は、納品の有無及び報酬の支払の有無にかかわらず、作成の時点で発注者に移転する。契約が成立しなかった場合も同様とする。
整えた書き方契約の成立前に受注者が作成した案、試作品その他の制作物の著作権は、受注者に帰属する。発注者は、審査及び検討の目的に限り利用できる。発注者が採用し、報酬の支払が完了したものに限り、本契約の定めに従って権利が移転する。

報酬が出ないまま、権利だけが移ります。契約が成立しなかった場合まで及ぶ書き方は、コンペに出した案が、採用されなくても取られる結果になります。

報酬の確定と承認

よくある書き方報酬は、発注者の承認を得たうえで確定する。承認の基準は定めない。
整えた書き方発注者は、納品物が仕様に適合しない場合に限り、その理由を示して修正を求めることができる。通知がないまま○営業日が経過したときは、承認したものとみなす。

承認の基準がないと、報酬を請求する権利が発注者の意思に依存します。「内容は認めるが、この部分は不要だった」という理由で減額される余地が残ります。

異議を述べる期間

よくある書き方支払の通知を受けた日の翌日から2営業日以内に異議を述べないときは、同意したものとみなし、その後は一切の請求をしない。
整えた書き方受注者は、支払の通知を受けた日から○営業日以内に異議を述べることができる。発注者は、異議に対して誠実に協議する。みなし同意は、明らかな計算の誤りの訂正を妨げない。

確認に要る日数を考えない短い期間で、請求の放棄に近い効果を付けるのは、受注者に過大です。複数の案件を並行していれば、見落としも起きます。

契約の解除

よくある書き方発注者が、目的を達成することができないと判断したとき、発注者は直ちに本契約を解除できる。
整えた書き方受注者が重要な義務に重大な違反をし、相当の期間を定めた是正の求めにも応じないときに限り、解除できる。発注者の都合による解除は、解除までに行った作業の段階に応じた報酬を支払う。

解除の判断を相手の主観に任せると、納品の直前でも、報酬を払わずに終わらせられます。請負では、注文者は完成前ならいつでも損害を賠償して解除でき(民法641条)、受注者は、既にした仕事の可分な部分で注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求できます(634条)。段階ごとの割合は、表にして契約書に書きます。

不採用案・中間成果物の秘密保持

よくある書き方受注者が作成し提出する企画書、ラフ、不採用案その他の中間成果物は、発注者の秘密情報とする。
整えた書き方秘密情報は、発注者から開示を受けた非公開の情報に限る。受注者が作成した不採用案、中間成果物、ノウハウ及び表現の手法は、秘密情報に含まない。これらの権利は受注者に留保される。

自分の不採用案が相手の秘密情報とされると、ポートフォリオにも、他の提案にも使えなくなります。

賠償の範囲

よくある書き方受注者は、本契約に関して発注者に生じた一切の損害(第三者に生じた損害を含む。)を賠償する。
整えた書き方受注者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失による場合を除き、受注者が賠償する損害は、通常かつ直接の損害に限り、報酬の額を上限とする。

一件の報酬が小さい案件で、無制限の賠償を負うのは釣り合いません。発注者が個人の場合に、責任の一部を免除する条項を置くときは、受注者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失による場合を除くことを、免除を定める同じ文の中に書きます(消費者契約法8条1項2号・3項)。

最初の直し方は、「契約前の作業の権利は受注者に残る」「採用されて報酬が支払われた範囲だけで権利が動く」という原則に基づいています。生成AIが絡む案件では、納品物に生成AIの出力を含めてよいか、発注者が提出された案を生成AIに入力しないか、も定めに入れます(制作での生成AIの使用と契約のページ)。

応募・受注の前のヒヤリングで確認すること

募集要項に書いてあれば読むだけで済み、書かれていなければ発注者に質問して確かめます。

応募・受注の前に確認する問い

  1. 問報酬は、どの時点で確定し、いつ支払われるのか。採用、納品、承認のどれが起点か。

    理由起点が発注者の動きに左右されるほど、支払が遅れます。承認の期間とみなし承認があるかを確認します。

  2. 問採用されなかった案の権利は誰にあるのか。「全応募作品の権利を主催者に帰属」の定めはないか。

    理由報酬のない案の権利を渡すことになるためです。定めがあれば、応募するかどうかの判断材料になります。

  3. 問採用される案は何点か。「該当作なし」で採用しない場合や、募集を中止する場合があるか。

    理由撤回する権利を留保しているかで、案を出した後の扱いが変わります(民法529条の2・529条の3)。

  4. 問結果の発表日はいつか。延びたとき、案を他で使ってよい時点はいつか。

    理由採否が出ないまま案が宙に浮き、他の提案にも使えなくなるのを避けるためです。

  5. 問採用後の修正の範囲、回数、期間はどうなっているか。

    理由採用後の追加作業が、無償の作業を膨らませる主な原因です。

  6. 問納品物に、第三者の素材(フォント、ストック画像)や生成AIの出力を使ってよいか。

    理由受注者が持たない権利は、発注者に移せません。使うなら、素材の一覧と利用条件を契約に添えます。

  7. 問発注者は個人か、事業者か。従業員を使っているか。

    理由個人の発注者かで消費者契約法の規定が、従業員を使う事業者かでフリーランス法の規定が、それぞれ関わるためです。

起きがちなこと:コンペ・クラウドソーシング案件でのつまずき

起きがちな場面と、書面での備え
起きがちなこと原因書面での備え
採用されなかった案と似た表現のものが、他で使われていた不採用案の権利と、審査以外の利用の禁止が書かれていない不採用案は受注者に留保、審査目的以外の利用を禁止する条項を求め、提出の記録を残す
採用の通知があったのに、権利の移転だけが先に求められた移転の時期が、報酬の支払と結び付いていない移転や許諾の効力を、報酬の支払完了にかける
納品しても承認されず、報酬が確定しない承認の基準と期間が決まっていない承認の基準、通知の期間、みなし承認を書く
募集が、採用なしで取り下げられた撤回や「該当なし」の定めを読んでいなかった要項で、撤回権の留保や該当なしの定めを確認してから応募する
規約が変わり、手取りが減った規約の変更の扱いが、契約にない締結日時点の規約に固定し、不利益な変更は承諾を要する形にする

条件を個別に交渉しにくいぶん、応募や受注の前に読む情報で結果が変わります。募集要項、規約、発注の画面を保存し、権利が移る時点、報酬が確定する時点、手取りの三つを言える状態で受けておけば、揉めたときも、何を約束したのかを示せます。

よくあるご質問

コンペで採用されなかった案を、他の案件に出したり、ポートフォリオに載せたりしてよいですか。

募集要項や規約に別の定めがなければ、案の著作権は案を作った人に残るため(著作権法17条)、他の用途に使えるのが原則です。ただし、「全応募作品の権利を主催者に帰属する」といった定めがあり、応募がそれへの同意として扱われる仕組みなら、その定めに従います。また、発注者から開示された非公開の情報が写り込んだ部分は、別に扱います。応募の前に、不採用案の扱いを要項で確認してください。

コンペの主催者が、採用しないまま募集を取り下げた場合、報酬は請求できますか。

コンペの型と募集要項の書き方によります。応募の期間を定めた懸賞広告は、広告の中で撤回する権利を留保していなければ撤回できません(民法529条の2第1項)。要項に「主催者の都合で中止できる」「該当作がない場合は採用しない」と書かれていれば、その定めに従うことになります。応募する前に、撤回や該当なしの定めの有無を確かめるのが現実的な備えです。

プラットフォームの規約と、発注者が出してきた契約書の内容が違うときは、どちらに従いますか。

書面にどう書かれているかで決まります。規約が「個別の合意が優先する」と書いているのか、「規約が優先する」と書いているのか、契約書に優先関係の定めがあるのかを確認します。規約を参照して報酬の支払時期を決める書き方では、参照する規約の版や日付を書き、規約の変更が不利益になるときは受注者の承諾を要する形にしておくと、途中の変更で条件が動くのを避けられます。

手数料は、報酬から引かれますか。契約金額は、引かれる前の額ですか。

プラットフォームごとに違います。契約金額が手数料を引く前の額か、引いた後の額か、手数料を誰が負担するか、追加の報酬や返金のときにもかかるか、を規約で確認します。契約書にも、「報酬の額は手数料を引く前の額とする」のように、どちらかを書いておくと、手取りの食い違いを防げます。手取りから逆算して契約金額を決める方法もあります。

コンペで採用された後、何度も修正を求められます。無償で応じる必要がありますか。

募集要項や契約書に、修正の範囲、回数、期間が書かれているかによります。書かれていなければ、採用された案の仕様の範囲内の修正にとどめ、構成やコンセプトを変える修正は別の合意とする、と書面で整理しておくのが安全です。発注者が特定業務委託事業者に当たり、1か月以上の業務委託であれば、責めに帰すべき事由のない給付の内容の変更ややり直しは、フリーランス法5条2項2号で禁止されています。

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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引に必要な条項は、制作物の種類、納品の形、報酬の決め方、相手方が事業者か個人かによって異なります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 文化庁 著作権 / 公正取引委員会 / 特許庁

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